現役金融マンMです
書籍3冊目は「お金は寝かせて増やしなさい」です。
著者は水瀨ケンイチさんで1973年生まれ、都内のIT企業に勤めるかたわらインデックス投資に励み、2005年から「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」というブログを執筆されてる方です。
1973年に書かれた「ウォール街のランダムウォーカー」がこの本のベースになります。
全体はプロローグから始まって6章構成です。
時々漫画を入れてわかりやすく解説しています。
プロローグ 「私がたどり着いた寝かせてお金を増やす方法」
第1章 金融のど素人でもプロと互角以上に戦える「インデックス投資」
第2章 寝かせて増やすインデックス投資の実践法
第3章 おすすめの金融機関&口座開設の手順と気になるNISAとiDeCo
第4章 始めるのはカンタンだけど続けるのは意外と難しい
第5章 涙と苦労のインデックス投資家15年実践記
第6章 貴重情報!インデックス投資の終わらせ方
エピローグ
となってます。
20代の後半の時期に毎日株価を気にしながら投資をなさっていたところに
1973年に発行され現在も改訂を続けながら発行され続けている「ウォール街のランダムウォーカー」に出会い、
「個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネージャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただ、インデックスファンドを買ってじっと待っているほうがはるかによい結果を生む」
という一文に感銘を受け、インデックス投資を始めたそうです。
「世界中に分散したインデックスファンドを積み立て投資して長期保有すること」
がもっとも良い投資法と信じて、2005年からは
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
を執筆されてます。
インデックス投資をお勧めする理由としては
①手間がかからない
②実は世界標準のスタンダードな投資法だから
③お金の基礎知識として日常生活に役に立つから
をあげてます。
銀行や証券会社は利益相反の関係にあり、彼らを信用してはいけないとかいてます。
投資信託のメリット、デメリットについては
メリット
①少額から購入できる②たくさんの銘柄の株式や債券に分散投資できる
③運用する金融機関が破たんしても資金が守られる
デメリット
①持っているだけで手数料がかかる(購入時、信託報酬、売却時の信託財産留保額)
②すぐに大儲けはできない
日本には6000本を超える投資信託があるが、金融機関の乗り換え売買を行わせるために次々と粗製乱造されたもので、インデックスにも大半が負けているためインデックスファンド以外買う必要はないとしています。
アクティブファンドは購入時手数料が平均3.2%(米国0.59%)信託報酬は1.53%(米国0.28%)であり、これがパフォーマンス低下の大きな要因です。
購入方法は生活資金(生活費の2年分)を残すか、貯めながら、積み立て投資(ドルコスト平均法)によって行うことが良いとしています。
全体の順序は以下の通りです。
①家計の状態を把握する
②生活防衛資金をためる
③自分の「リスク許容度」を把握する
④資産配分を決める(パフォーマンスの90%以上は資産配分で決まる)
⑤ネット証券に口座を開く(SBIや楽天がお勧め、対面型は販売のプロであり、運用のプロではない、ロボアドバイザーは信託報酬が高すぎる)
⑥決めた投資商品は毎月1回積み立てて寝かせるだけ(リバランス必要)
また、4章では始めるのは良いが、インデックスファンドを買ってじっと待っていることの難しさも書いてあります。
リーマンショック時には大幅に目減りし、ブログでもさんざんに叩かれたそうです。
しかし、資本主義経済が拡大再生産し続ける仕組みであることを信じて持ち続け、2012年に元本回復、2017年には投資金額に対して50%以上増えてます。
15年間の実践記を通じての教訓として
①最悪の事態は厳しく見積もること
②相場は永遠に下がり続けることはない
③インデックス投資家の仕事は売りたくなったときに我慢すること
と書いてます。
第6章に出口戦略に触れてます。
①「100から年齢を引いた割合で株式をもて」という米国の教えを引き合いに出して、運用資産の比率を調整する
②定額ではなく、定率で取り崩す、目安は4%
③必要になったら必要な分だけ取り崩す
エピローグでは、持ち続けることの難しさを「大暴落をくらっても市場に踏みとどまり、生き残ったのは、人の明るい未来を信じている楽天家だったように思える。」
と書いてます。
感想
実は私も現在ウォール街のランダムウォーカーを読んでおり、まとめを書いている最中です。内容が近そうだからと読んだら見事にそれで、しかもわかりやすくまとまってます。私も素直にそうだなぁと思うところが非常に多かったです。
金融機関に関するくだりは私も同意です。売り込みたい商品を売り込んでくるだけなら手数料を払う必要はありません。
ただ、私も証券業界にいる人間なのでこの本の運用の中身については少し付け加えたいと思います。
①この運用のやり方はこれから資産形成を行う人向けであり、時間がかかります。
30歳や40歳ならこのやり方でいいと思います。
しかし、50歳以上の方や相続などで大きな資金を一気に受け取ってしまい、どのような運用をするか迷っている方にはやり方を変える必要があると感じました。
②外国債券を運用内容から省いてますが、外貨建て社債(先進国中心、特に米ドル)を持つことは運用途中の利息収入を得る観点からも必要だと思います。
③現場で感じるのはリスク許容度は考えよといわれてもなかなか考えられなかったり、支出の状況や市場環境によって同じ人でも変わります。
世界中に分散投資ができるETFやインデックス型ファンドは非常に優れていると私も思います。
長期で積み立てることが一番楽ですが、時間をもう少し短くするならば、TOPIXやS&P500などを見て、直近高値より20%程度下がったところから10%刻みで追加投資を行うなど状況に合わせたアレンジが必要かなとも感じました。
最後に、金融機関のアドバイザーの役割は金融商品を売り込むことではなく、担当顧客に対して当初決めた運用方針を続けるために常に対話を通じて不安や不満の解消に努め、当初の運用の目的を達成させることでフィーを受け取るのが本来だなと改めて感じました
早く日本でも売買手数料で収益を上げるのではなくなってほしいと思うところです。
耳が痛い話ですが、インデックスとアクティブファンドの違いを取り上げた話は多いですが、一方で現実に証券会社や銀行で運用している資金のパフォーマンスを運用開始以降の世界株インデックスや世界債券インデックスなど比較してみると良いと思います。
また、累積手数料や支払い済みの税金も考慮すると、インデックス投資と現実の比較がよりわかりやすく出るのではないかと思います。
ご参考
本の中で13本インデックスファンドが取り上げられてました
著者は
三井住友アセットマネジメント
三井住友・DC積み立てNISA・日本株インデックスファンド 信託報酬0.16%
三菱UFJ国際投信 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 0.19%
ニッセイアセットマネジメント ニッセイ新興国株式インデックスファンド 0.339%
の3本を取り上げてました。
そのほか純資産が大きなものとしては
ニッセイTOPIXインデックスファンド 信託報酬0.18%
ニッセイ外国株式インデックスファンド 0.20%
たわらノーロード先進国株式 0.225%
などがあげられてました。
日本株、世界株、米国株、外国債券、個人向け国債などを組み合わせると良いと思われます。これ以外にもETFをはじめインデックス投資はたくさんあります。
ただ、過去の運用実績が必ずしも連動できていない場合があるのと、純資産がやはり100億円以上は最低でもほしいところと、ETFの場合は日々の売買代金にも注意したほうがいいです。