エフナン流株式投資術 奥山月仁 日経BP社

著者紹介 奥山月仁(おくやま・つきと)さん 会社員投資家、高校2年から株式投資を開始。投資歴は約30年。故蝉山昌一大阪大学教授のゼミで証券理論を学ぶ。ピーター・リンチに倣い、わかりやすい成長株に中長期で投資し、数億円の資産を築く。

 本書は2017年1月号から18年6月号に掲載された連載の「エフナンさんの株で勝つ!」を加筆・再修正して発行された書籍です。

「つ・な・げ・よ・う」が奥山さんの株式研究の重要なポイントです

はじめに 奥山さんが資産を築くきっかけになった書籍は米国の伝説的ファンドマネジャー、ピーター・リンチ氏の「ピーター・リンチの株で勝つ」「ピーター・リンチの株式投資の法則」(ダイヤモンド社)を読んだことがきっかけだそうで、そこから成長株投資に大きくシフトしたそうです。

つなげようの「つ」強みを知れ ピーター・リンチ氏は短期的な株価の変動は完全に無視して長期保有し、企業の成長や業績回復に伴う長期的な株価の上昇を狙うことに徹している。通常は5銘柄前後に集中投資している。 これに倣い、忙しい会社員でもある奥山さんは「割安成長株」を探し、長期投資するスタイルに変えたそうです。 株式を探すポイントが書かれていますが、その中で特に「気づき」があったのが、大化け候補の一つが「成長著しい嫌なライバル企業」です。 ライバル企業は例えば私は証券会社所属ですから、フィンテック企業なんかは調べれば調べるほど手強さを感じますが、そちらの株価の伸びと既存金融機関の株価の伸びは明らかに違います。嫌なライバルを買うことが成功の一つの方法だとは考えてきませんでした。

つなげようの「な」流れを知れ ここでは成長株投資の注意点が書かれています。 成長株投資で必要なのが「忍耐」 時には20%や30%下落することも良くある中で我慢して保有を継続しないといけないからで、簡単に降りてしまうとせっかくの大相場に乗れない可能性も高いと書かれています。

これは今株式投資を行っている人の大半が頭が痛いところではないでしょうか。 また、「業績と株価が乖離したら買いの好機」とし、4つのパターンに分けて分析していますが、 追加で避けるべきとして「業績悪化以上に株価が下落する」パターンが紹介されてます。 が、投資家の参加人数は「これが一番人数多そう」と思ってしまいました。 勧める側、買う側、それぞれ避けなければいけないパターンです。

つなげようの「げ」原理を知れ 「株価は未来を反映させるが、数か月から3年程度の未来と言われており、このアバウトさを受け入れる必要がある。」 参考例として台風の進路予想図が本の中に出てきますが、心理的に大きく重要です。 このアバウトさを受け入れられないとパニックになるのが株式投資だと思います。 でないと、悩みこんでしまうと思います。

株式を動かす原理は3つ 「近未来の業績」「リスク」「金利」、これらが相互作用する。このほか、企業業績が著しく悪化した場合は市場平均PBRが0.7~0.8倍程度で下落が止まり、下支えするとのことです。

また、投資手法として活用できる考え方がPERの考え方の紹介でした。 実績PERが割高でも、2~3年後の予想EPSで求めた予想PERで見れば割安なケースもあるし、今後3年のEPS成長率でPERを割るPEGレシオも紹介されてます。 1株益(EPS)成長率が今後3年程度で年率20%成長ならば、実績PERが20倍なら1倍となるが、この指標が1倍なら妥当、0.5以下なら割安、2倍以上なら割高と判定する。

ここで感じたのが、PEGレシオはピーター・リンチ氏が好んで使っている指標ですが、今後3年間の成長率を使うんだと思いました。 私が参加している勉強会では、昨年実績と今年予想の平均を使ってますし、営業利益の伸びで計算を行ってます。 また、別の書籍ではEPS成長率の1年分の予想を使っているものもありました。 ここも厳密というよりかはある程度アバウトでいいのかもしれません。

会社がPERを正当化できる株価なのかをみて、明らかに倍率がどのケースでも3倍、4倍なら見送り、1倍を割れているようなら買いの候補として残すようなやり方で良いかと思います。

また、非常に参考になったのが、ROEで、ニッセイ基礎研究所が2005年から1月~2017年7月までの各月の日経平均株価のPBRと予想ROEの関係を示したデータが紹介されていて、ROE8%以下はPBRで判断したほうが良いと状況によってどの指標が有効かを示してます。ROEが8%を超えると株価とROE上昇に関連性があり、切るとPBRを見に行く傾向があるようです。

つなげようの「よ」弱みを知れ 「個人投資家や人間ならではの弱みを理解する」 として、著者の弱みの一つに「すぐ利確したくなる」

を挙げられてますががブログを執筆し、「読者に対して示しがつかない」思い、結果短期売却したい誘惑を克服したそうです。

弱みには2種類あり、克服できる弱みは工夫しながら克服し、克服困難であれば戦略でカバーする。困難な弱みに立ち向かわず、回避することも戦略の一つと書かれてます。 このPARTで自分にも当てはまる大きなものが 「穴にはまっていると気づいたとき、一番大切なのは、掘るのをやめることだ」 というウォーレン・バフェットの格言でした。 損した後にもう一度と勝負をかけると大体大失敗する。それならば一旦離れて冷静になってから再度慎重に入りなおす重要性で、私も過去に何度も経験しています。

余談ですが、証券会社と付き合う中で損をかけた後に「これで取り戻しましょう」と乗り換え案内を勧めてくる時はこれに該当するかもしれませんので注意しましょう

つなげようの「う」うらをとる 企業をイメージで短絡的に捉えるのではなく、事業の概観を俯瞰することの大切さが書かれてます。 ここで私が感動したのが企業の概観を俯瞰する5つのポイントを理解するための「梨の木」の絵というのが紹介されていて、ものすごくわかりやすいし、イメージしやすかったです。 木の幹が①成長性②健全性  梨の実が③商品・サービス(収益性) 風当りや土壌が④外部要因 栽培者が⑤経営者 に例えてそれぞれの内容について解説しています。 また、ウラを取ることについても詳細に書かれており、 手順として「四季報」→「企業ホームページ」→「表計算ソフトを活用した長期業績動向分析」→「今後も成長が続くか検討」となっています。 とても共感できたのが最後の成長が続くかのところで、コインパーキングの会社と自動車販売店の違いが書かれていて、努力を重ねて顧客を拡大すればそのまま企業の売り上げ拡大につながるビジネスと、次々と販売を重ねてゆかないと立ち行かないビジネスモデルの違いをあげてます。 これ、今話題のストックビジネスということになりますね。

最後に ここでは「株式投資は副業の有力候補」として皆さんにも勧めています。

感想

ここで紹介したのはほんの一部です。私が印象に残った個所のみ取り上げてます。 この本を読んで感じたのが、奥山さんの丁寧な株式投資に対する姿勢が伝わってくることです。 四季報を丁寧に読み、企業の事業内容、健全性、成長性をチェックし、PER、PBR、ROEを出し、気になる銘柄は四半期決算をエクセルに落として収益性が下がってないかなど詳細にチェック、買う候補の企業はホームページを見て、製品やサービスが受けられるなら実際に行ってチェックする。

どれも誰もできることなのに徹底してやっている人は少ないのではないでしょうか。 だからこそ、数億円の資産を築くに至ったのだと思います。 また、自分の中でいろいろな角度から検討して推敲を重ねたうえで投資した企業は多少下がっても自信があるので保有を継続できます。 真摯に株式や企業と向き合う姿勢が好感を持てる本でした。 四季報をよく読んで、じっくり長期投資を行う方の株式を見る目を養う上で教科書的な存在になる書籍だと感じました。

※このブログでは全体の一部しか紹介出来てません。私の感想もかなり入ってます。 もし、テーマや内容に興味を持たれたら本書を購入の上ご確認ください。