CLOとサブプライムローン問題 投資家が注意するべき点

記事①米企業は借りすぎか 金融の過熱リーマン越え 2019年6月16日;日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45993580S9A610C1MM8000/

  • 膨張した企業信用が近く収縮に向かう可能性に当局や市場が警戒をしている
  • 国際通貨基金(IMF)は今年、米企業の資金調達や投資家の行動を示すデータを作成、それによると米信用サイクルは18年末にかけてITバブル期やリーマン・ショック前の住宅バブル時のピークを超えた
  • CLO(ローン担保証券)と呼ぶ証券化商品が急増し、投信や年金を通じて個人マネーも高リスク企業に向かう。

記事②リーマン・ショック 信用収縮、世界経済揺らす 2019年6月16日;日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46165720V10C19A6EA2000/

「サブプライムローン」と呼ぶ返済能力の低い個人への住宅融資が急増し、ローンを証券化した金融商品が世界の金融機関や投資家に出回った。返済に窮する借り手が増えてローンの貸し倒れが急増すると、関連の金融商品の価値が一斉に下落し、大量に保有・運用する金融機関の信用不安に発展した

金融当局も議会による公的資金投入の承認が遅れるなど後手に回り、金融危機を招いた

記事③ローン担保証券で突出 2019年5月23日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45126250S9A520C1EE9000/

018年末時点で約8千億ドル(約88兆円)のCLO全体のうち、約1割を国内勢が保有。なかでも農林中金は保有額は約7兆4千億円と2年前の約2.5倍と突出。

農林中金はリーマン危機で、サブプライムローンを組み入れた証券化商品などで巨額損失を計上した反省からリスク管理を高度化し、CLOは裏付け資産の大きな毀損にも耐えられるトリプルA格だけを満期保有する

記事④農林中金 海外運用に難路 2019年5月23日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45126180S9A520C1EE9000/

  • 総資産が105兆円あり、運用先の5割超が米ドル建て資産、運用資産の4割が外国債券
  • 農林中金は全国のJAから預金を預かり(約68兆円)、運用益を預金金利で還元している
  • ただ、資金の調達が国内のため全て円でしか調達できず、低金利下で運用難、運用成績に業績が振り回され続けている

4本の記事から見える現在の運用の世界

日経新聞の記事4本で見てみると世界的な低金利の長引きが企業の行動や運用における行動で大きな影響を及ぼしているのが見えてきます。

規模的に今すぐ危機が来るわけではなさそうですが、運用においても注意が必要だと思います。

まず記事①の背景には低金利と量的緩和政策において運用に困っている資金があふれている一方で十分に投資家を満足させる利回りの金融商品が少なくなってきていることが背景にあります。

よって信用力の低い企業の債務をまとめて1つの企業ではなく大量の企業の債務をパッケージにして分散させたパッケージ商品を組成し、その中で上位、中位、下位のランク付けをしてそれぞれの格に応じた利回りを投資家のリスク許容度に応じて販売しています。これがCLOです。

CLOの全体額は推計によって違いはあって、記事でも2018年末で①では6000億ドル程度ですが、③では8000億ドルとかなり開きがありますが、大きい金額に違いはありません。かつてのサブプライムローンが1.3兆ドルで住宅ローン市場の1割を占めたことに比べるとまだ金額は小さいといえます。

問題は好景気が続いているうちは問題は表面化しませんが、次の不景気が来た時に一気に問題が出てくること不景気が見えてくるとFRBは低金利政策をとりますが、その結果CLOのような商品が更に増えるジレンマがあることです。

理想は企業や投資家は損をしたくないわけで、できれば安全性の高い資産で利回りを確保できれば良く、CLOを好んで購入しているわけではないのが大半だと思われます。ただ、金利が低い環境下で利回りを上げないといけないのが運用の世界で止める訳にもいかないので少しずつリスクをとる方向に動いており、その要望に応えるために商品開発側も本当はリスクが大きくてもなんとかその中で格付けが高いものを作って利回りと安全性のバランスをとった商品を開発しようとしています。

しかし、やはり元々リスクが高い商品はどんな区分けをしようが元が元なので優良企業や国債並みの安全性が有る訳ではないですし、不景気が来た時に一番先に押し流されるリスクの高い商品であることに変わりはないです。

農林中金の記事の③や④から透けて見えるのは、日本全国の預金が集中する中で十分な貸出先が国内に無いため、仕方なく海外運用に活路を求めたものの、海外も低金利になってきており、仕方なくCLO商品に手を出していると思われます。

ただ、いきなり格付けの低い分野に手を出して大きく損失を出してしまっては説明がつかないので格付けの高い分野に今は絞って投資を行っている状況です。

でも、注意しないといけないのはサブプライムローン問題でも格付けがAAA商品でも一気に破綻したり、思わぬ事態で数日でジャンク債の扱いに格下げが行われた事もあったように利回りがほかに比べて高いということはやはりリスクが高いということです。

投資家から見た運用における注意点

では、個人投資家や一般企業の投資家は本来はどう考えるかですが、以下の様に考えます。

利回りを求め過ぎないことと、わからない仕組みの商品には手を出さないこと

だと考えます。

今の低金利下で調達できる金融商品の利回りが低下していることは遠い存在ではなく、世の中全てにおいていえることです。

金融機関側にとって販売手数料は売上を上げるためにはどうしても必要な為に、金融機関と取引をしていると様々な金融商品を持ってこられますが、商品の細かいところは販売している人も理解できていない場合が多く、単純に格付けと利回りだけで判断しないといけない時が多いです。

そうなると、単純に利回り高いところの商品を採用することが多くなるのですが、落とし穴は結果として気が付いたときには高いリスクが隠れた商品ばかり手元に残ってしまい、危機が起きた時に一緒に押し流されてしまう事になります。

大きな損失を出した後で販売側に訴訟を起こしたところで大した金額が戻る訳でもないですし、商品をどこまで詳細に説明を聞いたところで本当のリスクを理解できるわけでもありません

やはり、わからないものには手を出さない姿勢を第一にし、利回りを追い求め過ぎないことと、もし、利回り高い分野を資産運用に取り入れるとしても全体に対する金額の比率を調整することが大切で、主要な部分は国債や優良企業の社債を中心において低金利下は低金利下並みの利回りである程度我慢することが危機を乗り切り、次のチャンスで安くなった資産を仕込める結果になると考えます。

ここからの米国の利下げ局面が始まるといよいよ裏に大きなリスクを抱えた表面利回りだけ高い金融商品が出回りまくります。

いずれ危機ですべてを押し流しますが、一緒に流されないようリスク管理が重要になってきます。