アメリカ株長期投資入門 中丸友一郎 ダイヤモンド社

この本は2010年6月17日にダイヤモンド社より発行された「アメリカ株 長期投資入門」第一刷を一部加筆、修正して電子化したものです。

今は2019年で、9年前に書かれた書籍です。なのでここで書いている本の内容はすべて答えが出ています。しかし、株の見方や考え方が参考になること、また、当時アップルを本の中では取り上げていますが、時価総額が22兆円、今や100兆円近くです。当時に出会っていたらどれだけ株式のパフォーマンスや考えが変わっていたかと思います。

でも、もしかしたら当時に手を取っても「いや、22兆円の時価総額なんて高い」と思っていたかもしれません。

しかし、今、中丸さんの考えが正しかったことが証明されているのでブログで改めて取り上げようとして書きました。

著者紹介

中丸友一郎さん マクロ・インベストメントリサーチ代表、1978年一橋大学経済学部卒業、米ジョージワシントン大学院博士課程修了。日本輸出入銀行、世界銀行エコノミスト、JPモルガン主席日本エコノミスト、ロイタージャパン投資調査部長などを歴任。

目次

  • はじめに
  • 第1章 長期投資をするならアメリカ株しかない
  • 第2章 アメリカ株取引を始めるには
  • 第3章 インデックス・ファンドでかしこい資産運用
  • 第4章 アメリカ版会社四季報「バリューライン」の活用法
  • 第5章 ダウ30銘柄徹底研究
  • 第6章 アメリカ株長期投資ではドル・円レートを忘れよ!
  • 第7章 アメリカのマーケットを理解せよ!
  • 第8章 アメリカの重要経済指標を理解せよ!
  • 第9章 機関投資家に学ぶアメリカ株投資戦略
  • 第10章 アメリカ株式投資のゴールデンルール

本書の印象に残った個所の紹介、参考になる投資法

はじめにでは、少し懐かしい感じがしますが、2009年のオバマ政権の経済政策に触れ、主要金融機関への公的資金投入、積極的な財政、金融政策により、間もなく米国は回復する、一方で日本は(当時は民主党政権)政策が頼りなく、難しいとしています。

新興国株投資も非常に変動が激しいため、やはり、米国株が一番というスタンスです。

第1章ではアメリカの基礎データが紹介され、ここ100年間でインフレを考慮しても7%弱、考慮しない場合は10%を超えるパフォーマンスを米国株は上げてきている。今後も日本より10歳以上若い平均年齢と3億人を超える人口があるので、今後も企業利益が伸び、配当が成長し期待できることが書かれています。

その中で、ウォーレン・バフェット氏の投資法が紹介されています。

  1. 株式市場から離れること
  2. 買うのは企業であって、株ではないこと
  3. わかりやすい企業を組み入れたポートフォリオを運用すること
  4. 投資尺度として、企業の真の価値を確定すること
  5. 企業の価値に対して大幅に割安で変えるか否か

つまり、日々の株価に一喜一憂しない大切さが書かれています。

第3章は9年前なので今と比べると商品が限られている時代ですが、この時でもインデックスファンドがよい、ジョン・ボーグル氏によるバンガード・グループのインデックスで投資をするメリットが書かれています。

  1. シンプルでわかりやすい
  2. コストが安い
  3. 分散投資ができる

このETFを活用したり、インデックスファンドを活用してできればドル・コスト平均法を活用すべく、積立投資を行うことが勝つための戦略の一つであるとしており、現在と全く同じです。

第4章はアメリカ版会社四季報「バリューライン」の紹介です。

ただ、これはアメリカのもので英語なので中々理解するのは大変だと思います。そして、今は東洋経済から米国株四季報が年2回発行されています。こちらの方が日本人にはなじめると思います。

ただ、考え方はシンプルで、1株利益のトレンドラインを引いて成長しているのか、配当は伸びているのかをチェック、原資となる業績を見るなど基本的な考え方です。

第6章ではドル円レートは予想をすることをやめた方がいいと書かれています。

第8章は現在でも役に立つ米国の重要指標が中丸さんの考える重要度が5段階で付与され、解説されています。

例えば5だけを取り上げると、

  1. 非農業部門別雇用者増減数(雇用統計) 毎月第1金曜日発表
  2. CPI (インフレ率) 毎月15日前後発表
  3. GDP 毎月の21-30日発表、1.4.7.10月は速報、2.5.8.11月は暫定、3.6.9.12月は確定値
  4. FOMC(連邦公開市場委員会) 年8回、約6週間毎開催

この他にも16の指標が解説付きで並んでいます。新聞を読む際の参考にとてもなります.

第9章では米国株の予想をする上での基本は何を参考にするかが詳しく書かれています。

最重要指標はEPS(1株利益)とPER(株価収益率)と書いてあります。

短期間では様々な要因があるものの、長期では、配当、利益、株価は全て同率で成長すると期待できるとし、これを中丸さんは株式の三位一体と呼んでいるとのことです。

第10章では過去のアメリカ株について触れ、例え1929年の当時のバブル最高値、その後の大恐慌時も毎月投資を継続していれば、高いリターンを結果として得られており、米国株に対する高い信頼を持っていることが伺えます。

PERで全体の割安、割高を判断しているようですが、ここでは少しひねって「根拠なき熱狂」の著者、イエール大学教授のシラー教授のシラーPERを利用して開設を行っています。

シラーPERとはインフレ調整後の1株利益の10年移動平均線を用いて、PERを計算して割安、割高を判断する指標です。これを1880年あたりから遡ってみると、大恐慌前は割高で、直近だとネットバブルの2000年が極端に割高になっていることが見られます。

そして、アメリカ株投資のゴールデンルール(黄金の5つの法則)が紹介されています。

  1. アメリカ経済の成長とグローバル化の波に乗ること
  2. 短期的には景気循環する、循環はなくならない
  3. 景気回復の初期段階では小さくない不確実性が残る、1株利益と1株配当の成長が見込める株式に投資をすること
  4. PER、シラーPER、PEGレシオ、PBR、配当利回りなどを活用して常によいと思われる銘柄を割安で仕込める努力を怠らないこと
  5. 株式の変動はなくならない、上手につきあうこと

ここから中丸流7つのスマートルールが結びに書いてあります。

  1. 投資目的、目標の明確化
  2. リスク許容度の確認
  3. 長期投資
  4. 戦略的資産配分の決定
  5. 1株利益の持続的成長が期待できる銘柄を割安に買う
  6. 分散投資
  7. 戦術的資産配分で景気変動を先取りする

結び

色々な考え方が紹介されていますが、本書の基本のところはやはり、「株式の三位一体」ではないだろうかと感じます。「長期では、配当、利益、株価は全て同率で成長する」。この考え方は古くて新しい考え方です。

その上で、中丸流スマートルールを見ると、これは私が考える資産運用の考え方そのものの手順です。株式だけでなく、資産運用全体にもこの考え方を取り入れると良いと思います。

とかくデイトレードで儲けた、損したと言っていても結果的に99勝1敗ですべてを失う人も多いです。

ならば長期でじっくり先を見据えた投資を行う方が資産を長期で成長させるには良いと感じます。

今は米国がグローバル化に背を向けて、新冷戦といわれています。しかし、世界の中心的な存在であることに変わりはないですし、日本人である我々は日経平均もドルコスト平均法で積み立てることも資産形成には良いことですし、執筆された2009年に比べると格段に投資商品は増えており、選択肢は多くなっています。また、インデックスファンドのコストも非常に安くなっています。

時代が変わってもやはり、持続的な成長が見込める分野に基本をしっかりもって臨めば道は開けると改めて感じさせる本でした。

※ブログでは本書の一部しか紹介しておりません、ご興味を持たれましたら、ぜひ本書を購入の上お読みください。