金利と株価とコモディティ

金融資産同時高 2019年7月3日 日経新聞

記事のポイント

  1. 本来逆相関が起こり得る資産価格が過去の動きを無視する動きが今年は出ている
  2. 年初からこの1日までの上昇率は世界株16%、同期間では1998年以来21年ぶりの上昇率。世界の不動産投資信託(REIT)は13%と7年ぶりの水準。原油は30%と3年ぶりの上昇率。
  3. 債券も米国金利が昨年10月に10年国債利回りが3.2%を超えていたのが2%割れ、金価格も年初1282ドルが1日に1390ドルと上昇
  4. 米国の利下げ期待からあらゆる資産が買われている

感想

かなりややこしい状態です。

整理すると、米国の利下げ期待からまず反応するのは国債などの債券で、米国の金利が下がる予想が高まれば固定利付の債券は先回りして高いうちに金利を固定しておきたい需要により買われて価格が上昇し、利回りは低下します。

同時に今回は米国の利下げ期待なので米ドルに対する利回り商品としての需要が薄れて金が買われてます

世界で最も利便性が高い通貨は現在米ドルです。トルコやロシア、中国といったアメリカと不仲な国も貿易では米ドルが無いと取引ができません。基軸通貨とはそういう存在です。これと対になっているのが、昔から人間が価値ある金属と認めている「金」です。

金は金利がつかず、価格が動くだけなので米国金利が高く、ドル需要が高い時期は売られて、ドル需要が弱まると買われる傾向があります。今回は米国の利下げ期待から米ドルが売られており、一部の資金が金に流れ込んでいます。

また、金だけでは受け皿としては小さいので、原油などのコモディティにも資金が入り、原油価格が上昇しています。

更に、米ドルを売却した場合、通貨はどこかの通貨を買わないといけないため、先進国の通貨よりも金利が高いと言う理由で新興国の通貨が買われています

また、米国の金利低下のため、国債などの安全資産が利回りが低くなってしまったため、他の分野の利回り商品で代替する動きがあり、これが不動産REITを買う要因になっています。

また、金利が下がるということは景気を刺激する効果を生むため、期待から株式市場にも資金が入り、世界的な株価上昇の原因になっています。

さて、今年はそうなると景気が悪くなるとか米中貿易戦争だとか騒いでいるうちにドンドンリスクを取ったもの勝ちになっていたのがこの半年ということになります。

ただ、注意しないといけないのが、この状況は長続きしないと思われることです。投資家は好みがあります。株が好きな人は株を中心に考え、債券が好きな人は債券を中心に考え、これは他商品でも同様です。いきなり債券を全て売却して株に全額突っ込むようなことはしませんし、動かしても一部でそれぞれの考えや方針に沿って投資を決めています。

今は米国の利下げ期待から金利が低下し、皆がそれぞれの相場観で一様に各資産を購入していますが、いずれどれかの投資家が間違っていることに結果はなります。

個人的には、金と債券の投資家が勝って、その他の投資家は痛手を受けるリスクが大きいと考えています

と、いうのは米国をはじめとする世界の景気は減速傾向で企業決算にも現れ始めています。今はまだここ10年の余韻で株も売る理由が少ないため、成功体験から利回り低下が株高につながっていますが、そもそもFRBが利下げを言い出したのは米国の景気が懸念される分析結果が出ているからです。今まで利上げをしてきたのは景気が良い分析結果があったからで、企業業績の拡大期待で株式が買われており、この逆の状況なのに利下げ期待のみで株式が上がると考えるのはいささか虫が良すぎます。これが正当化されるならいつでも株式は上昇することになりますが、それはあり得ません。

また、利下げを仮に実施しても効果が出てくるには1年程度かかると言われているのでその間は企業決算や景気指標の悪化が続くと見られ、それはこれから顕在化してくると思われます。

そうなると、景気が良い時に買われる株式や、不動産REIT、原油などは不利で、米国や中国の景気が悪化すれば新興国の景気も悪化して新興国通貨も売られる懸念があります

と、なると、金利が低くても安全性の高い債券や、金に資金が流れると思われます。

また、債券も格付けの低いハイイールド債と呼ばれる分野は景気悪化時に企業業績懸念から金利が下がっても企業の信用リスク懸念が勝り、価格が逆に下がります。なのでこの場合の債券とは格付けの高い社債や国債となり、こちらに集中すると思われます。

月末に果たして本当に利下げを行うかはまだわかりませんが、流れとしては下げる流れなので、今のうちに株式を一部処分して下がった時に買える体制を整えておいた方がいいと思います

特に記事には無いですが、株式を基とした仕組み債などはここからは買わない方が賢明です