金融商品の手数料について

株売買手数料ゼロ 2019年7月20日日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47528000Z10C19A7EA4000/

金融商品の手数料ですが、業界が伝統的に顧客に見えにくくしてきたので、投資経験が少ない人から見ると理解しにくいのですが、

世の中で良く指摘されている手数料は明示されている手数料の分野が殆どで、実は見えない手数料や見えにくくしている手数料が金融機関の収益源になっており、手数料が取れる分野の金融商品が流行る仕組みになっています。

まず、株式手数料ですが、この分野は一番わかりやすく、明細にもダイレクトに載るので金融自由化以降どんどん下がり、ネット証券では無料の所も多いです。ネット証券では株式手数料を取らない代わりに積極的に信用取引を使いやすい様にして、信用取引の貸金を自社で融資して金利を取るビジネスモデルに変えているのでこれが可能になってます。ネット証券は私から見ると貸金業に見えます。

対面型証券会社やIFAは株式売買手数料はレッドオーシャン状態なので株式営業を事実上放棄して、発行体から手数料を受け取れるIPOや公募株販売のみを行い、通常の株式案内は行わなくなってきていますし、株式の勉強をしている営業担当者は周囲から奇異な目で見られています。

次に投資信託の手数料ですが、ここも入口の売買手数料は目に見えるので低下傾向です。

対策として証券会社は次々とテーマ型ファンドを投信会社に組成させ、目新しいファンドで手数料を維持したり、一見売買手数料の無いノーロード型投信を組成するものの、中身を良く見ると信託報酬が高かったりします。

信託報酬も運用会社、資産を預かる信託会社の分があるのはわかりますが、実は最も取り分が大きいのは販売会社で全体の約半分を占めていて、目論見書を良く読むと内訳が書いてありますがわかりにくいです。対面型もIFAも同様の仕組みになっています。

投資信託を複数組み合わせたファンドラップですがこれは中身は投資信託の組み合わせで、組み合わせると全く違う商品に一見見えますが、内情はバランスファンドに近い運用です。

にも関わらず投資信託の信託報酬と別途管理報酬を徴収しており、合計すると2~3%位の管理報酬が徴収されています。これもファンドラップの説明書きや実際に購入した人の提案書には書かれてますが小さい表示で分かりにくいです。

債券関連の手数料が今最も証券会社に取ってブルーオーシャンかもしれません。

と、言うのは、一般的な外国債券は仕入れと販売の価格が違います。スーパーで売られている野菜と同じで差額が存在し、商品毎や販売会社によって違いますが、2~5%くらいかかっているケースが多いです。

債券の世界では手数料という概念がないためこの仕入れと販売にかかるコストはスプレッドと呼ばれており、説明義務はないです、ただ、購入直後に価格は買付価格から債券時価に下がるため購入直後は必ず価格が下がります。新築マンション程ではないですが仕組みは同じです。

この点をきちんと購入時に説明するかどうかも担当者が誠実かどうかのポイントになります。

また、債券で大流行りな株式型EB等の仕組債ですが、これは組成にあたり複数の業者が絡むので費用がかかり、大体5〜7%程度かかっているのが一般的です。

ただし、この費用は購入時の条件に反映されており、本来ならばもっと高いクーポン収入を受け取れるはずが実際には少なかったりするなどしてステルス的にかけているので見えません。複数に業者に同じ条件を出させると良く見えますが中々そこまではやれない人が多いと思います。そもそも商品組成の仕組みも複雑なので今のところ業者側有利です。

また、証券の分野ではありませんが、金融機関で流行りの外貨建て貯蓄型保険も中々の手数料の塊です。

入口で5%程度控除するケースや、解約手数料が高かったり、運用途中で保険関係費用が2〜3%毎年かかったり、中身が投資信託で運用する場合は投資信託の信託報酬がかかったりもします。ただ、これは目に見えにくい手数料なので顧客から指摘を受けにくい分野で金融機関は積極的に販売したがります。

消費者目線で考えると、目に見える手数料を積極的に叩きたくなると思いますが、各商品の信託報酬や保険関係費用、解約控除など、実質的な手数料も購入前にチェックした方が良いと思います。

ただ、将来はすべての開示義務が行われる流れだと思いますので業界の手数料は下がると思われます。運用は私は基本的にシンプルな商品が良いと思っており、個別株式、個別債券、ETF、ノーロードで信託報酬の安い投信の組み合わせで十分だと思います。高コスト投信の分野では、一部の株マニア的ファンドマネジャーの運用商品を除くとそれほど魅力的なモノは少ないです。ただ、追求しすぎると自分が生活できなくなるのでバランスの取り方にいつも注意してます。

いずれ全ての手数料が開示され、投資顧問料のみを受け取る形態に証券業が変わって行くと思われます。