ATM世界で減少 2019年7月21日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46251450Y9A610C1EA3000/
- 英調査会社のリテール・バンキング・リサーチ(RBR)によると、2018年末の世界のATM台数は前年末に比べ1%減の約324万台で、初めて減少
- 世界でもっとも設置台数が多い中国は69万台で前年に比べ6.8%減った。2番目に多い米国も43万3500台で、0.9%減、3位のインドは増加したが増加率は大幅に鈍化、世界4位の日本は20万2300台で0.2%減
- ATMや支店網などの銀行インフラ縮小の要因はキャッシュレス決済やフィンテックの普及だ。世界銀行によると、銀行口座を持たない人はなお17億人いるものの、うち3分の2は金融サービスへのアクセスに使える携帯電話を持っている、今後FBのリブラの普及などがあるとより加速する可能性が高い
感想
キャッシュレス社会の浸透はとてつもないスピードで進んでいて、あと5年くらいすると世界のお金をめぐる環境は激変している可能性が有ります。
現在の銀行を中心とした国際送金、決済の仕組みは様々な規制や膨大なシステム投資に支えられた安全性の高さからすぐに新興企業の決済システムやリブラ等の暗号資産に取って代わられることはないと思いますが、これから拡大することは無いでしょう。銀行をこれから始めるには資本力が膨大にかかるのと、利用者からすると送金手数料と時間がかかりすぎるので、やるならフィンテックとなると思います。
リブラについて
リブラについての記事を日経新聞で検索すると6月19日にフェイスブックが6月18日にリブラの構想を発表したのを紹介したのが最初でその後、40近くの記事にリブラの話が載っています。まだ1か月しかたってないのでほぼ毎日どこかにリブラが載っているとなります。
フェイスブックが仮想通貨 2019年6月19日 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46264260Y9A610C1MM8000/
個人的には構想の2020年スタートは厳しいと思われますが、数年内にやや形を変えて承認が下りて、米FBや参加企業に大いに恩恵をもたらすし、世界の金融の形を変えると思います。なので参加企業の株式には今後も注目です。
記事の種類としては
- リブラについて解説をする記事
- リブラへの各国当局の反応の記事
- 評論家の記事
です。
1のリブラの解説記事としてわかりやすいのが以下の記事でした
- 値動き抑え決済に特化 6月29日 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46702750Y9A620C1EA4000/
- 解読リブラ②ビットコインと何が違う ドルや国債が担保https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46901080T00C19A7EE9000/
などで仕組みを解説しています。これによると大まかにはリブラは
- 決済に特化した仕組みをとる
- 価格の動きを米ドル・ユーロ・日本円等の世界の通貨バスケットに連動させる投資信託を裏付け資産にする予定
2のリブラへの各国当局の反応記事としては
- リブラ世界の中銀が警戒 7月3日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46854360S9A700C1EE9000/
- リブラ最高水準の規制を 7月19日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47484660Y9A710C1EA2000/
- デジタル通貨「反リブラ」で包囲網 7月15日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47359040V10C19A7FF8000/
で、基本的には各国規制当局は批判的な反応からスタートしており、実際に許可が下りるかはいまだ不透明です。
3の評論家の解説記事で分かりやすかったのが
- 通貨リブラ新興国にリスク 7月13日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47296980S9A710C1TCR000/
- リブラの本質 7月18日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47457350X10C19A7EN2000/
でした、また、これらと別に実際にリブラのシュミュレーションの記事が出てました
リブラ、通貨秩序問う 革新か、パンドラの箱か 7月19日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47516930Z10C19A7EA2000/
リブラが実際にスタートする上での課題は米国をはじめとする世界の中央銀行や政府の許可が下りるかどうかです。記事からしか読み取れませんが、今のところ先進国は認めない方向ではありますが、理由をマネロンなどの不正資金対策が信用できない所が大きく、将来も全く認めないという流れではなさそうです。ただ、国家の力の源であるお金の規制と衝突することにはとても警戒しています。
金融政策 デジタル通貨で機能失う恐れ 7月17日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47411030W9A710C1EA2000/
まとめ
最終的に認められた場合にどこが得をしてどこが損をするかですが、
得をする所は「参加企業」「先進国」、損をするところは「銀行」「通貨信用力の低い国家」と思われます。では、通貨信用力の低い国の国民はというと大きく得をする可能性が高いです。逆に先進国ではそれほど大きな変化はないと思われます。
参加企業は主にフィンテック絡みで銀行以外が多く入っており、主要な会社は以下の通りです。
- MasterCard
- PayPal
- Visa
- eBay
- Coinbase
実現すると上記の会社は恩恵を受けるとみられ、安価とはいえ預金を持たない27億人の決済の手数料が入るので影響は大きいとみられます。特にビザやマスターは今でも世界の決済で巨人です。
また、先進国は通貨の信用力の高さから資金流入が見込まれます。
損をするのは世界中の銀行です。決済分野の手数料収入が激減するリスクがあり、今まで維持してきた国際送金システムが脅かされるリスクが出てきます。
また、新興国も自国通貨よりもリブラのバスケット通貨の方が信用力が高いため自国の国民が自国通貨を手放してリブラを購入に走れば自国の中央銀行のコントロールが効かなくなり、お金という権力の源が消えてしまうリスクがあります。
いまでも高インフレ国の資産家は国外へ資産を逃がすことを考え、米ドルやユーロに資産を逃がしています。これがスマホ一つで動かせるようになるなら恐ろしい勢いで流出します。
世界のバスケットといってもピンと来ないかもしれませんが、2016年のBIS(国際決済銀行)のデータによると以下の通りです。
これに従うと新興国はその他15%でしかありません。金融の地殻変動が起きる可能性が有ります。
各国の当局が承認するかはまだ全く不明ですが、このような構想が出てきて技術的に可能になったことが大きいです。ちなみに、資産運用分野でも将来大きな影響が出ます。金融機関は世界分散投資を行うために顧客の資産を預かって為替交換手数料、管理費用などを受け取っています。信用力が高まればリブラ一つで分散投資ができてしまうので今は決済分野だけと言ってますが、資産運用でも使われるようになると、銀行だけでなく、証券分野も大きな影響が出そうです。
今後も注目です。