金銀比価27年ぶり高値から考えられること

銀1年ぶり高値 金と価格差拡大投機買い 2019年7月23日https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47622620S9A720C1QM8000/

  1. 金価格が上昇し、金銀比価が拡大、金銀比価は5月には93倍と27年ぶりの水準となった
  2. ただ、割安感から銀投資も盛り上がりを見せており、銀価格に連動する上場投資信託(ETF)の残高も約2年ぶりの高水準まで積み上がっている
  3. ニューヨーク先物は18日の終値が1トロイオンス16.19ドルと2月下旬以来となる16ドル台に乗せた
  4. 米商品先物取引委員会(CFTC)によると、5月末時点に2万2千枚(枚は最小取引単位)売り越していた投機筋は、直近の16日時点で3万7千枚の買い越しとなっている

感想及び解説

まず、金や銀の価格は日本では1グラム当たりの日本円の価格で表されますが、世界的にはトロイオンスという単位当たりのドル建て価格で取引がされており、日本ではこれを1グラム当たりの価格に直して為替をかけて毎日表示しています(1トロイオンスは約31.1グラム)。

現在金価格は1トロイオンス1426.9ドル、銀価格は16.34ドルですから価格差は金は銀の87.3倍の価値を持っています。

金と銀の価格差はその時代で各国の経済や貿易を揺さぶってきました。まだ金や銀を通貨として使用していた江戸時代では日本国内の金銀交換比率は1:5でした。

これが開国した時に当時のヨーロッパでは1:15で交換していたため、外国の承認が一生懸命銀を日本に持ち込み、金と交換し、それをまた海外に出して取引に使用しました。外国人から見ると、自国で銀を15枚持っていても金貨1枚としか交換できませんが、日本に持ち込むと15枚で金貨3枚を手に入れられるので一気に3倍になります。

現在でいうところの裁定取引(アービトラージ)です。これをやりすぎたため幕府の金が海外に流出し、財政問題に発展しました。一説にはこれでお金がなかった幕府が新政府軍に負ける原因の一つになったとも言われています。

現在は金や銀を通貨として使用はしませんが、「有事の金」と言われ、基軸通貨の米ドルに対をなす資産運用の商品として活用されています。

現在では金は資産として、銀は産業用のコモディティとして扱われることが一般的とされているため金と銀の価格差が開くということは金が買われているわけで、何か世の中が不安定になっている状態を表すといわれており、この倍率を金銀比価(GSR=Gold Silver Ratio)と呼んでいます

これが本日の日経新聞によると5月には27年ぶりの高値になったと言う訳です。

ちょうど米中の関税問題が盛り上がっていて、米国が中国からの輸入品すべてに25%の関税を課すかどうかでもめていた時期と重なります。

有事に備えて金を購入する一方で産業停滞を嫌気して銀価格は低迷していたため倍率が一気に拡大しました。

過去の何らかのイベントの時の倍率を調べてみると、1991年には湾岸戦争の時期で100倍、その次にリーマンショックの2008年に84倍まで拡大しています。

今がリーマンショックというにはかけ離れている気がしますが、倍率的には本日で87倍なので本当に何か危機が進行しているのか、金か、銀のどちらかが間違えているのか、それとも根本的な状況が変化してしまったのかです。

最近では〇〇ショックと呼ばれるものが起こるとすぐに80倍近くまで上昇するので80倍を超えている時期は何かが起こっている時期で株式も警戒する時期といえます。

金そのものに変化が起こっている可能性も否定はできません、原因はETFの存在です。金価格に連動する代表的なETFはSPDR®ゴールド・シェア(GLD)日本では連動するETFが1326のコードで上場されていますが、これによって今まで流動性が低かった金を株式と同様に売買できるようになったために資金の流入と流出が起こりやすくなっています。

なので、昔との比較がしにくくなっている可能性も考えられます。

ただ、現在金を買う理由は多いです、列挙すると

  1. 新冷戦の影響でロシア、中国、トルコ等新興国が積極的に金を購入
  2. MMT議論の盛り上がりで紙幣価値の下落への警戒感が高まる
  3. 米国が利下げ、緩和路線に転じたため米ドルの価値が下落することが予想される
  4. 米国が景況感ピークを過ぎつつあることが予想され、株式から別の資産への資金移動が行われている

です。

金ETFは売買するには日本人から見ると為替が絡んでくるので、危機時に円高になることが多いため金価格の上昇を為替が打ち消してしまうこともあり、ETFだけで儲かる商品とは言いにくいです。ただ、活用としては金銀比価の高低を見て、株式投資を行い、80倍を超えている状況下では警戒、一部売却、50倍を下回る状況下では安心して株を購入するなどの活用が考えられます。

個人的には金関連で利益を狙うなら金鉱山株式への投資ができるGDXやGDXJ等のETFを考えたいと思います。

今後も注目するべき指標の一つといえます。