お好み焼き千房と職親プロジェクト

千房株式会社中井貫二社長のお話

今日は自身で参加している経済勉強会の会合に行って来ました。メインスピーカーにお好み焼きの千房株式会社の中井貫二社長をお招きして千房の歴史や取り組み、今後の展望、インバウンドについて語っていただき、次に創業者の中井政嗣会長のお話、最後にお好み焼きのフルコースを食べて解散と非常に美味しい勉強会でした(笑)

千房といえばお好み焼きの会社で有名ですが、創業して45年を超え46年目に入っている会社です。

飲食業の世界は参入障壁が低い代わりに競争が激しく、人々の趣向も変化するため創業から10年間営業を継続できている会社は3%だそうです。その中でこれだけの歴史を持ち、企業規模を現在も拡大している会社は飲食業界で数少ないとても素晴らしい存在です。

当初は中井政嗣会長が様々な事情から始めた会社で壮絶な苦労の果てに伸ばして来た会社です。

この苦労話は中井政嗣会長の著書「できるやんか!」に書かれており、涙無しには読めない本です、是非オススメです。

さて、この競争の激しい業界でどうやって生き残って来たのか、なにか物凄いノウハウでもあるのか?と思いそうですが、結論としては特殊なノウハウは無いです

提供されているお好み焼きという商品は、凄い凝ったラーメンとか有名シェフのフレンチ料理とかと違って関西人には長年親しまれた主食的な存在で、どこの家庭でも作れます、私も大阪出身なので夕食がお好み焼きという日は結構ありました。お祭りになるとお好み焼きは露店で必ず出て来ます。誰でもお好み焼き屋さんをやりたい!と思えば明日にでもできる商品です。

では、長く続き、皆に親しまれ、また行きたいなと思わせる要素は何なのか?

本日参加の勉強会で繰り返し出て、本当に感じられたのが「人を大切にする」です。

口先だけで人を「人財」と言ったり、組織では従業員が一番だという会社は多い中で、今日の勉強会で社長、会長から出てきた言葉から「本気で人を大切に思う心」がとても感じられました。

食べる行為は全ての人が行う事で、出来れば「美味しい」「楽しい」「心地よい」中で過ごしたいものです。

これを全てにおいて実現出来ている飲食業が意外と少ないのが現実ですし、また、とても難しい事だと思います。

「美味しいけど」「豪華だけど」「有名だけど」等「けど」がつくお店は沢山あって、皆さんも経験があると思います。一度「けど」がつく経験をしたお店には二度と行かないものです。

全ては「人」が引き起こす事です。美味しいものを作れるのも、気持ち良い環境を提供するのも、清潔感のあるお店にするのも全て「人」です。

そのため千房では従業員教育に力を入れ、従業員が明るく、働きやすい職場にできる様人材教育を「人財共育」と考え、皆で育て、成長しようと熱心に日々取り組まれています。

きちんと育てられた基本がきっちりしている「人」が数多くいて、その「人」が作り上げた環境が継続しているからこそ来店したお客さんが気持ちよく、美味しく食べ、また来たいなと思って帰ることができ、これを継続できているからこそ企業としても継続し、発展しているのだろうととても感じました。

職親プロジェクト

「人財共育」の一環として取り組まれているのが「職親プロジェクト」だそうです。読み方は「ショクシンプロジェクト」で、一度罪を犯し、受刑者となった人々に企業が刑務所で面接を行い、採用し、更正させようとの法務省、日本財団と協賛企業で取り組んでいるプロジェクトです。

このプロジェクトの筆頭が千房です。

元は中井政嗣会長が創業当初人が集まらず、学歴、経歴不問で採用して一緒に働き、立派に育った従業員に後日経歴とかを聞くと元受刑者が結構おり、「人は環境や心がけによって大きく変われる」と実感、実践していた中井会長の所に法務省が依頼して立ち上がったプロジェクトだそうです。

もちろんダメな刑罰もあり、殺人、薬物、性犯罪は常習性があるため職親プロジェクトからは除かれている様です。

このプロジェクトは広がりを見せつつあり、日本財団のホームページでは大阪府の54社を筆頭に130を超える企業が現在参画しています。

始まったのが2013年です。

なぜ、この様な取り組みを行う様になったかというと、一度犯罪を犯した方の再犯率は1996年に27%だったのが2016年には49%に上昇しており、再犯者の70%は無職だそうです。

刑期を終えて社会に出ても一度罪を犯した人を採用する会社は少なく、仕事につけてもキツかったり、余り内容が良くないと言われる仕事が多く、結局将来に絶望したり、仕事を離れたりして再販を犯すケースが多いと思われます。

再犯率が上昇している事実は人手不足と言っても世間の寛容さはだんだん減っていることの裏返しかもしれません。

再犯が増えると言うことは被害者が増える事と同義なので社会的に解決しないといけない重大事です。

よって職だけではなく、寮も提供してまずは衣食住を安定させて企業が責任を持って教育しようという試みです。いわば企業が親代りを務めるので職親プロジェクトです。

ただ、実際には相当困難が伴う様で、採用しても続かなかったり職場の人に迷惑をかけてダメだったりとトラブルも多く、現場からスタート当初はやめてほしいという意見も多かった様です。

ただ、そこは中井会長、社長の強い意志で会社全体で取り組んで更正させるんだとの思いで継続し、現場の従業員の意識もだんだん変わり、数名ながら今でも店舗や厨房で元気に前向きに明るく働いている人が育ち始めています。

これに関しても日本財団の職親プロジェクトのHPに中井会長のインタビュー記事があり、述べられています。

以前にこの話を最初に知った時は正直どうなんだろうと思いました。飲食業は評判が悪くなれば一気に潰れます、犯罪を犯した人を受け入れて育てる決断は相当なリスクを伴う事です、でもこの事業を物事の善悪であれば善行であると考え推進した会長の判断が素晴らしいし、人の可能性を信じ切らないと出来ない決断だと思います。

千房は人が全てのベース

その他の企業として今力を入れているのが海外展開です、中国、台湾、ハワイ、ベトナム、タイ、インドネシアに店舗を持ち、次はニューヨークに出すそうです。従業員は日本のお好み焼きを徹底的に学ぶ為に日本の店舗で働き、仕込まれた後に現地に配属されます。

これも働く人々が、単なるお好み焼き屋さんで働いているというだけではなくて、海外にも店舗があって世界的な企業で働いており、その一翼を担っているんだと誇りを持ってほしい、モチベーションUPが大きな目的の1つだそうです。

会長、社長の印象に残った話

中井政嗣会長のお話でとても印象に残ったのが

「成功者が共通して話すポイントが2つある、1つは良い人と出会った、2つは運が良かった。これは出会った人との縁を大切にしているから運が良くなった、逆に縁を大切にせず、打算的な考えでいると運が逃げていく」

です、私も今まで全ての人に対しての縁を大切にしてきたとは言い切れないですが、1人でできることには限りがあり、何かを成し遂げるには協力して貰わないといけないことだらけです。なので人との縁を増やすこと、大切にすることは今まで以上に大事にしていきたいと改めて思わされました。

中井貫二社長の話でとても共感したのが

「機械は生産性を倍にすることはとても困難、けれど人間はモチベーションによって10倍にもなれる、一方で10分の一にもすぐなってしまう」

でした。単に表面的にキツイとかシンドイとかではなくて、明るい環境の職場で良い仲間、お互い高め合える仲間、それを後ろから支えてくれる経営陣やマネージャーがいる安心感、これがあるから日々の仕事にも一生懸命取り組めるのだろうと思います。

この勉強会を受けた後で今後私に起こる変化としては今後千房に来店した時には今日の話を思い出しながら食べる様になると思います。客として来店する私も人です、単純に食べるのとまた違った味がしてくると思います。

とても素晴らしい勉強会でした。感謝です。