低リスク株投信って?

低リスク投信へマネー 2019年8月9日 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO48388900Y9A800C1EN2000/

  1. 米ブラックロックが運用する上場投信のうち、世界の低ボラティリティー銘柄で運用する「最小分散型」の計15本の資金流出入をまとめたところ、年初来で126億ドル(約1.3兆円)の流入超
  2. 日本では「iシェアーズ MSCI 日本株最小分散ETF」の組み入れ上位のオリエンタルランドやNTTドコモ、ローソンなどの騰落率が日経平均株価(5%下落)を上回る。欧米やアジア企業でも同様

日経新聞にあるようにリスクが小さい株式の投信に資金が流入しているようです。

ちょっと題名が「低リスク株」と大きく書いていたので「ん」?そんなのあったっけ?と思って読んでブログで取り上げてみました。

読むと対象はブラックロック社が世界で運用する株式ファンドの中で変動幅が小さいデータが出た株式を組み合わせた投資信託のようです。

リスクとは?

ここでファンドの内容などに入る前に「リスク」についてコメントしておきます。

リスク(=危険なこと)の印象があり、投資の用語で常に出てくる言葉ですが、実際にはリターンの変動(ブレ)のことを表し、リターンの変動幅が小さいことを「リスクが低い」、変動幅が大きいことを「リスクが高い」と話しております。

つまり、金融における「リスク」とは「ブレ幅」と言ったほうがしっくりきます。金融にかかわらない人からすると「低リスク株」と言われると「なんだか危なげなく儲かりそう」とか「変動が少ないから安心」とかに繋がってしまうのですが、そうではないです。あくまで「ほかの株式より変動幅が少ない」と言うことです。

最少分散投資とは?

野村證券の金融用語集を見てみると以下のように書いてあります。https://www.nomura.co.jp/terms/japan/sa/A02356.html

  1. 銘柄の組み合わせを変えたり、組入比率を増減することによって株式ポートフォリオ全体の価格変動リスクを抑えるよう投資する手法。
  2. 価格変動リスクを定量化する際には、一般的に株式のリターン分布の標準偏差を用いて計測するが、最小分散投資の「分散」は標準偏差の2乗であり、リスクを意味する言葉として使われている。

とあり、過去の株価変動をデータとして取ってその変動幅が小さいものを組み合わせて、全体として効率的に上昇が狙える組み合わせにしてパッケージしたものが低リスク株式投信と言えるわけです。

ブラックロック社の運用について

では、新聞でも取り上げられていた「iシェアーズ MSCI 日本株最小分散ETF」とはどの様なコンセプトでどんな銘柄を組み入れているのでしょうか。https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/ishares/smart-beta#mitigating-risk

コンセプトについてブラックロック社のHPでは以下のように書いてあります。

最小分散戦略は、業種、ファクター、銘柄間などの相関を検証し、最もボラティリティ(価格の上昇・下落幅の大きさ)が低くなる銘柄群を選定することで、ポートフォリオレベルのリスクの軽減を目指す投資戦略です。

で、グラフを見てみると

出所:ブルームバーグのデータをもとにブラックロックが作成。2007年3月末を100として指数化。 期間:2007年3月末~2017年3月末。配当込み指数のデータ。 上記は、連動を目指す指数の特徴を説明するために用いた過去のデータであり、当ETFの運用成果を示すものではありません。また、将来の運用成果等を示唆、あるいは保証するものではありません。

確かに統計的には2007年3月と言えばリーマンショック前で株価は高く、17,453円でスタートしています。TOPIXは1740.11でスタートしており、今より高いです。2009年3月にボトムをつけるのですが、その時の日経平均が7054.98(月足)円、TOPIXでは700.93で、スタート時と比較すると日経平均、TOPIX共に60%近く下落しており、これに対して40%程度下落程度で済んでいるのでデータとしては良いという判断です。

また、その後株価回復してグラフで一番高いのがTOPIXでは2015年の8月、最少分散指数では2015年の9月ごろになりますが、8月から9月にかけては高値1691.29を記録してます。

グラフでの注意点ですが、HPにも書いてありますが、TOPIXの2007年3月の価格が1662.71~1741.94なのに対して2015年高値は8月の1432.65~1691.29ですが、配当込の指数なのでご注意ください。

いずれにせよ、この投資法だと安値、高値において10~15%位対象指数をアウトパフォームする結果が過去で出ているとのことです

では、「iシェアーズ MSCI 日本株最小分散ETF」では、どのような銘柄を組み入れているのか見てみました。銘柄コードは1477です。

上位銘柄を見ると、確かに世の中でディフェンシブと言われている銘柄が多いです。ただ、NECがそうだったっけ?と思ったりしますし、過去のファクトシートには日本郵政が入っていたりセコムがあったりと直近変動幅が小さい銘柄を多く組み入れるのだと思われます。

ベンチマークについてはどれを使っているのかがはっきり書いてある場所がHPやファクトシートに無かったので交付目論見書を見に行くと

日本株……… 東証株価指数(配当込み)

とあったので配当込のTOPIXです。

では、ファンドのパフォーマンスをファクトシートからデータを取りました。6月30日時点のデータです。

このデータから見ると確かにTOPIXを持っているよりかは成績がよさそうです。

また、上位銘柄の値動きですが、上位10銘柄のここ5年間の高値、安値を一覧にしてみました。

参考までに新聞記事の文中に「GAFA」とあったのでアマゾンとフェイスブックの5年内の高安も付け加えました。確かに比べると大きく違います、ただ、組み入れ銘柄も結構動いています。

結論

色々見てきましたが、結論は「低リスク株」という用語の響きと実際の値動きの違いに驚かないことです。あくまでこの投資法は他のあまたの株式に比べて変動幅が小さい銘柄を組み合わせて、できるだけ効率良く運用できるようにしたETF(投資信託)のやりかたです。

低リスク株と聞くと変動が小さいように見えますが、単体でみると倍以上動いているものもあり、やはり株式に違いはありません。

また、TOPIX等ベンチマークに勝てる運用を目指しており、現状勝ってます。でも皆が勝てるからと真似をしだすと勝てなくなることも考えられます。

「低リスク」「最少分散」という用語がどうもしっくりは来ないのですが、ご自身でも同様の言葉を見たときは組み入れ商品の過去の変動幅位はチェックするとよいと思います。

その上で出てきた変動幅を自身で許容できるかどうかで投資をするかしないかを判断するとよいと思われます。最後に運用会社を信じるか信じないかということになります。