逆イールドについて

市場覆う景気悲観論=世界的に金利低下

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190815-00000055-jij-n_ame

上記のニュースは2019年8月15日の時事ドットコムのニュースです。これに限らず「逆イールド発生だ!」の記事がたくさん出ています。

また、アメリカのNYダウもこの結果を受けて急落し、NYダウが-800ドルの25,479ドル、S&P500指数も2840と85ポイント下落とそれぞれ3%の下落の結果に終わっています。

では、そもそも逆イールドとは何でこれが起こると何が起こるのでしょうか。

逆イールドとは

本来金利とはお金を貸借する期間に応じて適正とされる利回りが変わるのが通常です。国債の金利であれば2年国債と5年国債、10年国債、30年国債が米国では有名ですが、満期が長いということは、お金を長く固定する訳なので満期が短いものより長いものの方が高い利回りが付くのが通常です。

この短い期間の債券についている利回りが低く、長い期間の債券についている利回りが高い状態を順当だと言うことで「順イールド」と呼んでいます。

しかし、何らかの理由によって期間の短い債券の利回りが長い満期の債券よりも高くなってしまう場合があります。この状態を普段と逆だという意味を込めて「逆イールド」と呼びます。

逆イールドが発生する状態とは?

これは主に景気の先行きに対する期待感や政策によって左右される場合が多いです。例えば景気の先行きが明るい状態の場合は今よりも将来の景気が良くなることを皆が期待して消費が活発になります。家や車をローンで購入したりする人が増えます。つまり、お金を借りたい需要が増える訳です。

金利はお金の値段といってよい指標で、お金を借りたい需要が多いということはそれだけ高い金利をお金につけることができます。

逆に不景気の場合は高い金利ではお金を借りて物を買おうとしないため金利は低くなります。

今より将来の見通しが明るいと思うからこそ消費が活発になり、長期のローンも増える訳で、今よりももっと先はお金の借りる需要は強くなる、景気に楽観論が広がっているような状態です。

しかし、景気も過熱してくると中央銀行はバブルが発生してしまうのを防ぐために市中金利を引き上げて景気の引き締めにかかります。中央銀行の大きな仕事の一つに景気の山と谷をなだらかにすることがあります。

しかし、中央銀行は基本的には銀行に対して融資を行う金利の操作をメインに行っているため満期までの期間の短い部分のみを操作するのが一般的です。

となると、まずは短期の利回りが上昇を始めます。

段々と短期の利回りが引き締め政策によって上昇するので短期と長期の差が縮まります、やがて逆転現象が起こります。これが逆イールドです。

この時に景気見通しは景気の良かった時とは逆で、今よりも将来の方が景気が悪くなると思われています。つまり、消費に陰りが出てきているような状態でわざわざ長期間のローンを借りてまで消費したくないと思っている状態です。

特に短期間の利回りと長期間の利回りが逆転現象を起こした時が景気が暗転するスタートと思われており、主に米国の場合2年国債利回りと10年国債利回りを比較して話す場合が一般的です。

それが2019年8月14日に米国で起こったというわけです。

逆イールドが発生したら株価はどうなる?

結論から言うと景気後退期の始まりと言え、長期的には下落すると見るのが一般的であり、過去はそうなってました。

なので昨日からのニュースは悲観一色でNYダウも3%下落すると過剰反応を示しました。

しかし、あくまで長期的にという言い方です。逆イールドが起こったからすぐに株をすべて売却して資金を預金や国債に避難させるのが得策なのでしょうか。

これも間違いの場合が多いと言えると思います。

ここ25年程度の逆イールド発生時の日付と利回り、株価、その後の天井を付けた株価をアバウトではありますが、月間ベースで見てみました。

①1998年6月 2年5.471% 10年5.446%で逆転 S&P500 1133P 

その後の株価は一旦下落するものの

2か月後の1998年8月に S&P500 957P と下落すると思われたが、ここで止まって上昇が始まり、その後インターネットバブルへとつながり、景気後退とはならなかった。

②その後もう一度逆イールドが発生したのが2000年2月で

2年6.521% 10年6.409% S&P500 1366P 

この後約半年間株価の上昇が続き、2000年8月にS&P500が1517Pで天井を打ち、2003年の2月に841Pで底を打つまで株価は3年近く下落を続けた。

③次に逆イールドが発生したのが2005年12月です

2年4.3996% 10年4.3911% S&P500 1248P

ただ、この時も逆イールドの期間は3か月しか続かずに株価は上昇を継続

④次に逆イールドが発生したのが2006年6月で

2年5.1498% 10年5.1364% S&P500 1270P

⑤ただ、翌月には逆イールド解消、2006年8月に再び発生

2年4.7754% 10年4.7258% S&P500 1303P

ただ、この時は以降7か月に渡り逆イールドの状態が続いたにも関わらず株価は上昇を続け、2007年10月まで株価は上昇し、S&P500は1549Pまで上昇しました。

その後リーマンショックが2008年10月に起こり、2009年2月にS&P500が735Pでボトムを打ってからの現在に至る流れです。

ちょっと文章なので分かりにくかったかもしれませんが、過去25年くらいで逆イールドと言われる現象は何回も発生し、恐らくその度ごとに景気悪化だのなんだのと言われていたと思われます。

しかし、言えることは全て株式の下落のスタートになっていないということです

一連の流れを再度まとめますと・・・

1998年から2000年にかけて

  • 1998年6月 S&P500 1133P この時は1か月しか逆イールドの状態にならず、景気後退まで至らず株価上昇
  • 1998年からの株価上昇を引き継いだ途中の2000年2月に再度逆イールド発生、S&P500 1366P
  • この後逆イールド期間は10か月続くが、その途中の2000年8月に株価は1517Pで天井を打ち、景気後退(上昇率約11%)
  • 2003年2月に841Pで底打ち(下落率約45%)

2005年から2007年にかけて

  • 2005年12月に逆イールド発生する、株価は1248P、3か月続くが株価が本格的に下落することはなく、上昇
  • 再度逆イールドは2006年6月で株価1270P これも1か月限りで株価下落せず
  • 2006年8月に再度逆イールド、株価1303P、だが、ここから株価の上昇が再度スタートする
  • 逆イールド期間が6か月続いたものの、株価は上昇し、2007年10月まで上昇、最後は1549P
  • リーマンショックを経て2009年2月に735P(下落率約52%)でボトム
  • 判断が難しいが、初回の逆イールドから見ると天井まで約24%上昇、次の発生からは22%上昇、3度目の発生からは約19%上昇

こうやって見ると「逆イールドだ!」で全てを結論付けるのは早計と言えます。確かに逆イールドは景気後退の予兆に違いないです。ただ、どのタイミングで株を降りればよいかはその時々の判断と言えます。期間も最初に発生したところから天井までは2年以上とも言えますし、一番短いところだと半年程度で株価の天井を迎えています。

しかも、逆イールドが発生してからむしろ株価は上昇し、最低11%、大きいと24%上昇しています。

もちろん、過去は過去ですし、過去の経済状況と今は違いますので単純に当てはめるのも危険です。

ただ、過去、むしろ逆イールド発生時に株式を購入しておくと結構儲かってしまっている事実も脇に置きながら投資を考える必要もあると思います。