前回バンクローンファンドを調べている中で「プレミアム」という言葉が投資信託の商品名に入っているのがありました。
プレミアムと一般的にいうと「特別な」とか「ラグジュアリー」的な意味で使われる事が多いです。では投資信託の世界でもそうなのでしょうか?
SBIの投信のパワーサーチで「プレミアム」と入力して検索すると33件出てきました、残高は比較的多く、全て合わせると3000億円を超えます。
残高の上位銘柄を掲載します。
今回は残高トップの三菱UFJ国際-モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP為替ヘッジなしと同3位のニッセイ-JPX日経400アクティブ・プレミアム・オープン(毎月決算型)を見てみます。
三菱UFJ国際-モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP為替ヘッジなし
商品性
目論見書を見ると、世界的に見てブランド力の高い企業をプレミアム企業と投信会社が呼び、それらの企業に集中投資するファンドというようです。世の中のプレミアムという言葉と同じ意味で使ってますね。
リスクも外国株なので為替、株の価格変動リスクと割と普通です。
手数料はやや高めです。ネット専用投信では無いため、入り口手数料が最高で3%、信託報酬も最大で1.8%です、信託報酬の内訳が書かれていますが、委託会社は運用会社の事で、販売会社は投信を販売している金融機関です、受託会社は投信を預かる金融機関です。ネット専用投信になると販売会社がいないため信託報酬の販売会社分が無くなります。
今までの運用成果を見てみます。
ヘッジ無しの方で見てみます、割と好調に推移しています。
ここまででみてくると割と普通のコンセプトです、信託報酬が高い所を除けば優良投信と言えます。
月報には受賞したことも載っています。
ニッセイ-JPX日経400アクティブ・プレミアム・オープン(毎月決算型)
では残高3位のニッセイ-JPX日経400アクティブ・プレミアム・オープン(毎月決算型)を見てみます。
まず、このファンドはJPXジャストとJPXプレミアムの二本が同じ目論見書になっています。今回はJPXプレミアムでみます。
JPX日経インデックス400を上回る成績を目指すとあるのでアクティブファンドになります。
運用内容
少しわかりにくいですが、ポイントは2つあります
- まずは、JPX400は円資産なのでこの円資産を保有しながら、円売りー米ドル買いの通貨オプションのカバードコール運用を行い、資産が実質的に米ドルに連動するようにし、プレミアムも受け取れる様にします。
- 次にJPX400の値動きに関してオプションのカバードコール戦略というのを行い、オプションプレミアムというものを得るように運用します。
- カバードコールでカバーする比率は資産全体の50%になります。
はい、全くわかりませんね、まず、1は比較的わかりやすいです、とりあえず米ドルに連動するようになるから円安になればいいとなります。
日本株が円安時に上がりやすいのでダブルで取りに行こうとしているわけです。
わかりにくいのが2です、何で株式を保有しているのにわざわざこれをいじるのでしょうか?また、そもそも「オプションのカバードコール戦略」って何でしょう?
3は簡単に考えて下さい、資産全体の50%に相当する部分にカバードコールをかけるという意味です。なので、米ドルや株式のカバードコールの影響は資産の半分です。
オプションのカバードコール戦略とは?
三井住友DSアセットマネジメントのHPに詳しく載ってましたので引用して解説します。https://www.daiwasbi.co.jp/fundcollege/fund/coveredcall/index.html
まず、株式資産を購入します、これは上記の左の図です、株が上がればいいわけです。図では800円の株式を購入したとして仮定しています。
一方でコールオプションと呼ばれる金融商品を売却しています、このケースでは満期が1ヶ月で1000円を行使価格とするオプションを売却して100円のプレミアムを受け取ってます。
プレミアムとは買い手が売り手に支払う掛け金の様なものと思って下さい、売り手は売却する時に受け取り側に回ります。
この買い手と売り手は何を考えているのでしょうか?
まず、買い手側は1ヶ月以内にこの株式は1000円を大きく超えて上昇すると考えています、800円の全てに資金を投入するのは資金もかかるし、下落リスクもある、ならば100円の掛け金を支払って上昇にかけてみよう!というわけです。買い手側の損失は最大で100円です、例え株価が下落しても追加の支払いは発生しません、その代わり、行使価格は1000円なので1100円を超えてくれないと利益にはなりません。
では売り手側はというと、1ヶ月では対象株は大きくは上昇しないと思っています。少なくとも1100円は越えないと思ってます。仮に1ヶ月の満期時に900円なら買い手側はわざわざ1000円以下で対象株式を購入する権利行使をしませんのですでに支払ったプレミアムを放棄してきます、なら売り手側は100円の儲けです。
売り手側は権利行使には必ず応じないといけないので株価が1100円になると受け取りプレミアムを飛ばしてしまって損益ゼロです、ここ以上の株価になると買い手側に株価の上昇分の支払いが膨らみ、損が拡大しまします。
つまり、このコールオプションの売りのケースでは株価は余り短期で急騰しないで欲しい訳です。
一方で今回の場合はこれに対する備えとして現物の株式を保有しています。なので800円で購入した株式は上昇してくれているので損失を一部カバーしてくれています。
まず、株式は
- ①は600円なので200円負け
- ②は700円なので100円負け
- ③は1000円なので200円勝ち
- ④は1100円なので300円勝ち
- ⑤は1200円なので400円勝ち
コールオプションの売りは最初にプレミアム100円を受け取り済みです、なので損益は
- ①〜③株価600円〜1000円のケースだと買い手側が権利行使をすると負けになるので権利行使をして来ず、100円のプレミアム分を受け取って終われる。
- ④1100円だと買い手側が権利行使を行えばプレミアム相当分を買い手は回収できるので権利行使をされてしまい、権利行使より上の分100円を売り手は支払いますので損益0です。
- ⑤1200円になると買い手が権利行使をしてきますので200円支払います、100円の受け取り200円払うのでマイナス100円です。
この合計数字が最下段の合計の損益となります。
①〜③の場合はやって良かったケースで④⑤の場合は素直に株を購入しているだけで良かったケースです。
この④⑤がリスクの項目には以下のように書かれています。
プレミアムも株価見通しによって日々変動しますので抽象的な書き方しかできませんが、1番怖いのが急騰です、株式ファンドなのに株価が急騰すると損失の要因ができてしまいます。原資産は上昇するのですが、一部減じられるのです。このファンドの場合カバー率は50%なので半分の資産にこの現象が起こります。
あと、ここでは書いてませんが、オプションは満期がありますが、投資信託は長期で運用が継続されます、なので投資信託はオプション取引を満期毎に継続する必要が出てきます。
この時に満期が来たオプションを埋めるために次のオプションを売るのですが、コストが裏側でかかったり、毎度必ず満足行くプレミアムが得られるわけでは無いことも注意です。
運用内容
題名にはJPX400がありますが、あくまでベンチマークであって上回る目的のアクティブファンドです、銘柄は優良銘柄が並んでいます。
JPXプレミアムですが、分配金と合わせるとやや増えています。
プレミアム戦略や外貨連動戦略が役に立っているのかを見てみます、まずは同じ資産を保有しているJPXジャストです。JPXジャストは為替のカバードコールを実施、株価には実施していません。
一見基準価格が高いですが分配金合計だと大差ないですね、JPXプレミアムが3254円+7580円で10834円、JPXジャストが8911+2000円で10911円です。
手数料
アクティブファンドで、色々手間がかかっているので信託報酬は割と高めです。
パフォーマンス比較
三菱UFJ国際-モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP為替ヘッジなし
を先に見てみます。
このファンドはベンチマークは無いのですが、月報に参考指数としてMSCIワールドインデックスを掲載しているので、これをベンチマークとしているパッシブファンドの三菱UFJ国際-eMAXIS全世界株式インデックスとパフォーマンス、手数料を比較します。
3年のトータルリターンで見ると勝っています。これを見ると内訳はわかりませんが、為替のカバードコール戦略と銘柄を絞るプレミアム株式に投資する戦略は機能していると判断できます。
手数料
手数料はやはりアクティブファンドなので割と高めです、手数料払ってもこの戦略にかけようというなら悪く無いと思います。
ニッセイ-JPX日経400アクティブ・プレミアム・オープン(毎月決算型)
ではプレミアム戦略の方を見ます、JPX400のインデックスファンドも加えて比較します。
3年のトータルリターンで比較します、分配型は基準価格が下がる傾向があるのでトータルリターンで見る必要があります。JPXプレミアムも本家のJPX400には1.5%くらい上回ってます。
手数料
やはりアクティブファンドなので手数料はやや高めです。
結論
色々比較してきましたが、以下の様な教訓が得られます。
- プレミアムという言葉が色々な意味で使用されているので違いをよくみないとわからない
- プレミアム株投信を購入する場合は普通に委託会社をどこまで信じるかパフォーマンスをチェックしながら保有
- プレミアム戦略投信を購入する場合は戦略の中味をよく見て運用の状態もよく見る必要がある、また、カバードコールの仕組みが理解できて、リターンやリスクについて理解ができてから購入する
保有の仕方としては手数料は高いファンドなのでどちらもきちんと機能しているか3ヶ月毎位にパフォーマンスをチェックする必要があります、月報を見ながらチェックして下さい。
どちらも言えることは戦略が有効に機能していないと判断された時には降りないといけないので積立やNISA向きでは無いと思います、まとめて購入してまとめて売るのが良いと思います。
また、投信はプレミアム株式に投資する場合は割とわかりやすいのですが、カバードコール戦略などと書かれているとわかりにくいです、繰り返しになりますが、ファンドは目論見書に書いてある目的と実際に起こることがずれる事が往々にしてあります、なので目的の次にリスクの欄をよく読んで調べて理解できてから購入を検討しましょう。
もし、担当者がいた場合は質問をして下さい、いきなりした場合は時間がかかるのは仕方ないですが、仮に案内を受けた場合は答えられない様では失格です、本社の売れ!という指示を受けているだけです。
複雑な仕組みの商品は沢山あるので今後も色々解説していきます。