ウィーワークについて考える

ウィー支援 しわ寄せ懸念 2019年10月27日日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51453470W9A021C1EA5000/

ソフトバンクが巨額の追加出資を行なったウィーワークですが、今年のユニコーンの大きな話題の1つです。

単純に新聞記事などを読んでいるとどうも腑に落ちない点があります。

「なぜ孫正義の様な稀代の投資家がそこまで惚れ込むのか?」です。

最近の報道は悲観的な論調が多く、孫正義御乱心か!位の勢いです。

  • ウィーワークは昨年18億ドルの売り上げがあるがほぼ同額の赤字があり、赤字を垂れ流している状態
  • 2019年年初には時価総額は470億ドルと言われていたが今や80億ドルに低下
  • 創業者の不貞の騒動やガバナンスの欠如等で資金繰り悪化、倒産寸前でソフトバンクが本体で100億ドル近い支援を債務、株式取得を行なった。経営権そのものは取らないが、株式の8割をソフトバンクが握る
  • ソフトバンクは総額200億ドル近く投じているが時価総額が80億ドルとなると数千億円の巨額の減損処理を迫られる
  • ソフトバンク自体の株価や債券価格の下落などの影響が出ている

でも実際どうなのでしょうか?

一般的に集められる記事からウィーワークってそもそも何者?を書いてみたいと思います。

私個人の解釈ですし集められる記事からなのでデータの古さなどもありますので若干正確性に欠けるかもしれませんのでご容赦ください。

ウィーワークの現状

ソフトバンク強気の投資岐路 2019年10月24日 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51323270T21C19A0MM8000/

  • ウィーワークは2010年に創業
  • 世界29カ国に528拠点
  • 会員数は52万7000人
  • 事業内容は「サブリース」、自ら資産は持たず、長期契約でオフィスを借り上げて短期契約で転貸
  • リース料の支払いは今後は年20億ドルを超える
  • 新規株式公開(IPO)に失敗すると資金繰りに窮した
  • リース契約は平均15年で、原則、途中解約できない。稼働率を引き上げて各拠点の損益を改善しなければ資金流出が続く収支構造

巨大ユニコーン、米ウィーワークの錬金術と危うさ 2019年5月27日日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45125100S9A520C1000000/

ウィーワークの業績など

  • 業績は2018年の売上高は18億ドル、損益は19億ドルの赤字
  • ウィーワークの入居者は世界27カ国で40万人以上で18年には米ニューヨークのマンハッタンで最大のオフィステナントになった

ウィーワークの利点

  • 会員企業は成長に応じてもっと広いプランやプライベートオフィス、フロア全体の賃貸にアップグレードできる→借り換えの必要がない
  • 個人起業家や大企業など誰もが一つの席からフロア全体まで何でも借りることができる→自由度が高い
  • 18年にはニューヨークとロサンゼルスの同社が入居するビルの賃料プレミアム(上乗せ幅)が15~29%ビルの所有者にも、賃料の上昇や入居者層の拡大、不動産価値の上昇など多大な価値をもたらす。
  • ビジネス用百貨店「ウィーワーク・サービスストア」オフィスの必需品から販促ツール、ジムやフードトラックに至るありとあらゆるモノを割引価格などで提供する→備品が安い
  • 「ウィーワーク・ラボ」スタートアップ企業の成長を支援するインキュベーションプログラムの提供→ベンチャー支援を得られる
  • ウィーワーク専用アプリの改良、利用者が他の会員を見つけてつながり、協業しやすくなるスキル共有機能を追加→様々な会員企業やフリーランスと協業など横の繋がりが得られる
  • サービスとしてのオフィス」を目指しており、ウィーワークはオフィスの設置場所、オフィスと作業スペース、アメニティーの最適な組み合わせなど、拠点の構築に生かすためにデータを使ってきた。このデータを外販して収益化しようとしている。パワード・バイ・ウィーで提供している→不動産業者からデーター保有、販売会社へ
  • パワード・バイ・ウィーは英スタンダードチャータード銀行や米写真投稿サイトのピンタレストなど30社に利用されている。米ブルームバーグによると、17年のこの部門の売上高は1370万ドルで、同年のウィーワーク全体の売上高8億8600万ドルの1.5%にすぎない。だが、「サービスとしてのオフィス」の提供は同社が進める戦略の柱になる可能性がある。
  • データ強化のために15年には「ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)」と呼ばれる技術を活用する米建築コンサルティング会社Case(ケース)を買収、18年には、企業のオフィス最適化を支援するソフトウエア開発・分析会社、米Teem(ティーム)を買収。19年に入って、人が物理的空間でどう動き回るのかを追跡・分析する「特別分析プラットフォーム」を手掛ける米Euclid(ユークリッド)を買収した。
  • 会費関連の収入は88%

ウィーワークの使用別サービス

  • プライベートオフィス 一般的な固有のスペース利用
  • オフィススイート 専用の受付、会議室、役員室、電話ブース、パントリーが提供される点にある。管理は引き続きウィーワークが担い、清掃やメンテナンス、IT(情報技術)機器の管理、電気・ガス・水道などもウィーワークのスタッフが担当する。
  • ヘッドクオーターズ・バイ・ウィーワーク 大企業向けのウィーワークの「ホワイトラベル(相手先ブランドでの商品やサービスの提供)」だ。既存のウィーワークにその企業のオフィスを設けるのではなく、顧客が選んだ地域でウィーワークが調達した専用オフィスをその企業の本社にする

ウィーワークのその他サービス

  • ウィーワーク・ラボ グローバルイノベーション基盤。専任のプログラムマネジャーや週ごとのイベント、ピッチナイト(投資家へのプレゼン)、ワークショップ、投資家紹介などの追加機能によりウィーワークのオフィスサービスを強化した社内スタートアップ養成サービス
  • ウィーワーク・エンタープライズ 社員1000人超を抱える大企業の顧客はウィーワークの最上級モデルに位置する。こうした顧客はさらなる会員や安定、資金、データをもたらし、ウィーワークのフライホイール型アプローチの強化に貢献してくれるので積極的に取り組んでいる
  • 大企業の顧客のおかげで新規賃貸の平均契約期間は20カ月に延びている
  • 出張中やリモートワークのビジネスパーソン向けに設計されたグローバル・アクセスにより、企業は社員のために世界各地のウィーワークの会員権を購入することができる。

その他取組

  • 実験的な小学校「WeGrow(ウィーグロー)」の開設
  • シェア拡大による建設費の節約交渉 17年の机1台当たりの純建設費は前年比22%減の5600ドル強、17年の机1台あたりの粗設備投資は9500ドルで、前年の1万4000ドルから減った

課題と懸念、現状を表すデータ

  • ニューマンCEOはウィーワークがテナントになっている複数の物件の所有権を握っており、公私混同状態
  • 入居率を60%以上に保つ必要があるが18年8月時点の同社全体の入居率は推定84%で、前年の78%から増えた
  • ウィーワークのメンバーの32%は大企業の顧客経由で、18年の25%から増えている。
  • ウィーワークのシェアオフィス分野における地位は決して安泰ではない、今後もオフィス確保、維持の資金は必要で巨額、競合も出る

ウィーワーク「シェアオフィス」黒字化へ遠い道2019年8月26日東洋経済新報https://toyokeizai.net/articles/-/298887

  • 世界29カ国に528拠点を構え、会員数は52万人以上にのぼる。日本では2018年に東京・六本木に第1号拠点を設けて以来、都内を中心に6都市で約30拠点を展開
  • 2018年12月期は売上高約18億ドルに対して、最終損益は約16億ドルの赤字。直近の2019年上半期(1~6月)も、売上高約15億ドルに対して赤字幅は約7億ドル
  • 開業時のシェアオフィスの稼働率は52%にとどまる(2018年実績)、ただ3年程度で84%程度になる予想
  • シェアオフィス事業に黒字化の見通しが立たない中、ウィーワークは新たな事業展開も模索している。2016年に開始した企業向けオフィス設計サービス「Powered by We」だ。500人以上のデザイナーや建築家を有する同社のサービス育成に力を入れる、ただPowered by Weの売上高は今年1~6月の累計で約6000万ドルにとどまる
  • 締めくくり→「コミュニティづくり」という雲をつかむような構想に無尽蔵の資金を投じるほど、投資家は甘くはないはずだ。

利用者の声

1人/月15万〜? 社員40名のベルフェイスがWeWorkを選んだ3つの理由https://note.mu/kazuaki_nakajima/n/n5e79f1f01b0c

  • reason① クリエイティブ職の採用強化
  • reason② 冷静に計算すると意外に安い−敷金礼金がかからない
  • reason③ グローバル展開を本気で考えているから

様々な記事からのまとめ

ウィーワークの売上に関して

  • ウィーワークはオフィス提供を不動産業ではなくサービス業として捉えているが世間は売上の9割が会費=賃貸収入の不動産業者と捉えている
  • 入居率60%以上で黒字だが、18年8月時点の同社全体の入居率は推定84%、現在も新規開設拠点はともかく平均では80%を超えている模様
  • 2018年12月期は売上高約18億ドル、最終損益は約16億ドルの赤字。直近の2019年上半期(1~6月)も、売上高約15億ドルに対して赤字幅は約7億ドル
  • Powered by Weの売上高は17年は1370万ドル、2019年1~6月の累計で約6000万ドル

懸念材料

  • 創業者のニューマンCEOの公私混同が難点
  • マンハッタン、ロンドンではオフィス占有面積で首位の模様、ただ競合に負けないため継続してオフィスの獲得、設備投資が必要なため黒字化は遠く引き続き巨額の資金需要が必要
  • 毎年20億ドルの家賃支払いが必要
  • 新規事業がまだ全体の売上の1割程度なので投資家から見ると不安

ウィーワークを利用する側から見ると

  • 入居者から見ると敷金、礼金が不要なメリットを考えるとそれ程高いコストではない
  • 世界中の拠点利用ができるメリット
  • 世界中のフリーランスや企業と繋がれるメリット
  • ウィーワークを導入する家主から見ると他のオフィスに比べて付加価値が付いて2〜3割高くなる

ウィーワークについての私の感想

全体を通して見ると「え?悪くないじゃない?この会社!」な印象です。確かにここ数年黒字化はしなさそうです、ひたすらシェア拡大が必要なので引き続き資金が要ります。

良い解釈の見方

  1. 稼働率は損益分岐点の6割を超えており、拡大路線を止めると黒字化する水準である
  2. 新規事業のPowered by Weの売上高は17年は1370万ドル、2019年1~6月の累計で約6000万ドルと急拡大中と将来有望
  3. 今までのオフィスと違い、世界中の拠点を利用でき、世界中の人や企業と横の繋がりが得られるのは今までにないメリット
  4. 事業規模が拡大すればプランを変えればよく、新しいオフィスを借りる必要が無い
  5. 日本の内部の理由だが敷金、礼金がない、今後日本でも大都市で拡大して力をつければ日本の不動産の慣習も変える可能性がある
  6. 創業者の素行などが話題だったがソフトバンクの追加出資に伴い退任
  7. 拡大のための事業資金確保で上場を目指していた所が上場が頓挫、よって資金繰り悪化で時価総額急落、倒産寸前まで行ったが、今後はソフトバンクの支援があるので資金面の心配が無い

別の角度からの見方

  1. ソフトバンクの考え方次第、資金回収に走るなら拡大路線を止める方向へ
  2. 拡大路線を止めると新規投資が必要なくなるので賃料差額で資金回収を長い時間をかけて行える
  3. 最終的にIPOなり同業他社への売却、ただしその際は一連の出資額を回収できる程度かそれ以下の可能性も高い

つまり、今後、ウィーワークを事実上支配したソフトバンクの方針次第です、ソフトバンクが今後大きな資金をかけて拡大路線に入るなら今の事業が伸びて大きくなる可能性がありますが、仮に資金回収を目指しての買収というならどちらかというと後ろ向きで大きな伸びが期待できないです。

ここ数ヶ月でウィーワークに対するソフトバンクの方針で全てが決まると思います、今後も注視していきたいです。また、これによりソフトバンク自体の評価を落とす必要はない様に思えました