ハザードマップと不動産価格

私自身は不動産取引は素人です。

ただ、最近余りに水害の話が多く、治水事業がどうなっているのか、仮に今高騰している不動産価格が水害の影響や各自治体が公表しているハザードマップの見直しの影響があるのか等考えてみました。

ハザードマップは価格に影響無しとする意見

インターネットには色々な意見が掲載されています。

まず、不動産の専門家の意見です。

不動産売却にハザードマップの影響はある?ハザードマップの種類もご紹介http://www.re-advance.co.jp/blog/entry-173371/

  • 自然災害時の被害予測であるハザードマップは、あくまでも予測であるため、買主に告知する必要はありませんし、地価には影響は無い
  • 過去に起きた災害については告知義務がありますので、気持ちの良い取引をするためにも、不動産会社とよく相談をした方が良い

台風19号、大きな被害が。不動産業界にどういう影響が。。https://remax-l-style.com/archives/268

  • ハザードマップで調べれる情報は、重要事項説明書に記載
  • 災害リスクのお話と同時に損害保険の加入の話もする
  • 水災被害に関する項目は現段階で法的説明義務がない
  • 災害が起こると、不動産の売れ行きは停止

2つの不動産会社のブログです、一方はやはり売れ行きに影響が出ると書いてます、一方は売れ行きではなくそもそもハザードマップの影響は地価に織込み済みであるという考えです。

その他の意見

「浸水リスク」不動産業者に説明義務なし 台風19号で浮かび上がった課題 弁護士ドットコムhttps://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191019-00010270-bengocom-soci

  • 国が2019年7月、不動産業者に対し、住宅購入者などに洪水ハザードマップの情報を伝えるように通知
  • 全国知事会「ハザードマップ説明を」とし、国に「来たるべき大規模災害に備え教訓に基づき行動するための提言」を提出、説明必須の重要項目に入れるように提言
  • 宅地や建物が「土砂災害警戒区域」や「津波災害警戒区域」の場合には、その内容や影響などを個別に確認することが義務付けられているが、堤防の決壊や激しい雨が降った場合などにどの程度浸水するかについては、重要事項説明の項目に入っていない
  • 「必要最低限以上は『聞かず、知らざる、調べない』という不動産業界の慣習がある

災害危険地域に引っ越す人が絶えない根本原因は不動産業界の“不作為”https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1811/26/news012.html

  • 2018年7月の西日本豪雨で被害を受けた岡山県倉敷市の真備地区は土地価格の相場は隣の総社市よりも半値近くで、人気のエリアだった
  • 不動産業者はその事実を顧客に知らせる義務はない
  • 不動産価値を下げるような情報を伝える事業者は少ないのが現状
  • 多くの人に災害情報を届けるために、まずは不動産総合データベースの早期運用を期待したい

基準地価の下落は過疎化・自然災害が要因に。今後はハザードマップ重視の方向へ?https://www.jutaku-s.com/rensai/id/0000000798

  • 基準地価で住宅地変動率を見ると、最も下げたのが岡山県倉敷市の真備町で16.1%の下落
  • 原因は水害で需要減少のため
  • 地価が自然災害の影響を受けている
  • ハザードマップに対する注目度が高まっている
  • 不動産売買の際に、取引相手に対し、ハザードマップで地域の危険情報を提供することは、不動産の価値下落につながるという考えから、不動産会社は情報提供に後ろ向きとされてきた
  • 不動産関係者としては、今後、各種公表地価の動向を分析し、ハザードマップを含め地域の特性等を加味した上で現状を把握、今後のビジネス戦略に活用していく必要がある

色々見てきましたが、ハザードマップが既に公表されているから価格に織り込まれているとする意見、そうではなく余り言いすぎると下落してしまうという意見に分かれているのが実態でやはり売買の際に詳しく不動産業者に聞く方がいいと思われます。

自治体の対策基準は?

では、治水対策の担当を主に受け持つ自治体は普段どんな対策を進めているのでしょうか。よく雨が1時間あたり○○ミリの雨と天気予報で言いますが、どの程度から大変で、洪水や浸水対策の基準はどうなっているのでしょうか。

ここでは東京都都市整備局のホームページから特徴的な部分を抜き出します。http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kiban/gouu_houshin/

対策の基本

  • 降雨特性を考慮した目標降雨の設定
  • 目標降雨を「年超過確率1/20規模の降雨」である区部時間75ミリ、多摩部時間65ミリに設定し、この降雨に対して床上浸水を防止
  • 大規模地下街の浸水対策計画の充実など、減災対策の強化
  • 河川・下水道の整備において「対策強化流域」「対策強化地区」を設定

また、これ以外にもオリンピックを控えているので外国人向けの対策も計画しています。

ここで注意するべき数字は1時間あたりの降雨量で75ミリや65ミリの雨が東京都では対策する基準になっている様です。この数字は他の自治体より高い数値で、例えば大阪府は50ミリと80ミリに分けて対策をしているなどまずは50ミリが1つの基準になっています。

この基準は自治体によって違いがあって各県のホームページに掲載されています。

治水事業の全体像

まず、集中豪雨数は年々増加傾向の様です。

対策の全体は多岐に分かれます。

単純に豪雨対策といっても多岐に渡ります。まずは浸水させないための対策、次に床上浸水を食い止める対策、あとは避難とか命を守る行動です。

単純に堤防を高くすればいいのかというだけではありません。

価値の高い地区が災害に弱い

このホームページの資料で確かになぁと思ったのが地下街の水害対策です。

東京や大阪などの大都市は地下街は当たり前にあって、雨の日は特に人が入ってきて混雑します。

ただ、地下なので当たり前ですが水害にはとても弱いです。一方で地下街がある様な地区はビルも多く大都市の中心部に集中しています。

過去の浸水被害の雨量

雨量に対する対策ですが、1時間あたりの雨量が多いのが怖い状態で、東京都で区部は75ミリ、以外では65ミリの雨対策を推進するとありますが、時々100ミリを超える雨もあり、水害の被害を全く無くすわけにはいかない様に思えます。

まとめ

色々見てきましたが、災害と不動産には以下の関係があると思います。

  • ハザードマップをよく確認するべきという流れはあるが、現状不動産業者に説明義務はない
  • 過去の水害は説明義務があるが、危険地域かどうかは義務がないので他地域から知らずに家を買うケースが多い
  • 不動産価格への影響は、影響が織込み済みと考える不動産業者もいるが、ハザードマップの説明を義務付けするかしないかで揉めている状況をみると地域によってバラツキがある
  • 災害リスクと別に利便性でとても資産価値の高い都市部は地下街含め災害にはとても弱い地域が多い
  • 自治体も対策を多岐にわたり進めてはいるが、1時間あたりの降雨量50〜75ミリ程度までの対策が主力で極端な豪雨では堤防決壊や下水が溢れる等被害が出る可能性は排除できない
  • 河川が多く日本はあり、全ての水害を防ぐ手立ては無い

不動産を購入する際には利便性や利回りが大事なのは言うまでもありません。

ただ、最後にハザードマップを確認して判断するのも確認作業に加えたほうがいいです。

また過去の状況なども不動産業者によく確認してから判断したほうがいいです。

水害は水が引けば終わりと考える人が多いですが、水が一度くると建物は壊れ、資産価値が失われるし、家財はダメになります。

また、泥水が色々なものを巻き込んでやってくるので後で固まった土を除去するのは1人では不可能で、大きな費用をかけてやる必要があります。

私も過去に東日本大震災の時にボランティアで家の周りの泥を除去する作業を行いましたが、80人位で2日間で家数軒分の泥の除去で終わりました。

色々なものを含む泥は固まるととても固く、ツルハシで土を砕かないとスコップを入れられない位苦戦しました。

最悪地域に住む需要が減れば財産価値は大きく毀損します。

厄介な問題ですが、日本に住んでいる以上気をつけないといけない問題だと思います。