購買力平価と為替レート

安いニッポン(上)価格が映す日本の停滞 2019年12月10日

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53150550Q9A211C1MM8000/

  • 世界のディズニーランドの大人1日券(当日券、1パークのみ、10月31日時点)の円換算価格は東京は7500円、カリフォルニア(1万3934円)、パリ(1万1365円)、上海(8824円)
  • ダイソーの100円ショップの同じ商品が米国では約162円、ブラジルでは215円、タイでは214円、中国153円
  • 5つ星ホテルのキングベッド1つの50平方メートルの部屋がロンドンは約17万円、東京は約7万円超
  • 日本で390円のビッグマックは米国では5.74ドル。同じモノの価格は世界中どこでも同じと仮定すると、ここからはじき出す為替レートは1ドル=67.94円

購買力 賃金やハンバーガー、物差し多様2019年12月10日日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53150460Q9A211C1EA2000/

購買力平価は為替の話をする時によく出ます。

各証券会社の解説です

野村證券

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/kobairyoku.html

  • ある国の通貨建ての資金の購買力が、他の国でも等しい水準となるように、為替レートが決定されるという考え方
  • 購買力平価の問題としては、「日本ではハイテク製品は安い・・・」というように、モノによって購買力を等しくする為替レートが異なること
  • ビッグマックの様に製品が似通っているものが指標として優れている

SMBC日興証券

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ko/J0263.html

  • 長期にわたる為替レートの決定理論で、スウェーデンの経済学者カッセル氏によって提唱された
  • 絶対的購買力平価説は、為替レートは2国間の通貨の購買力によって決定されるという説
  • この説が成立するにはすべての財やサービスが自由に貿易される前提で、厳密には成り立たない
  • 相対的購買力平価説は、為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定されるという説
  • すべての財やサービスが同じ割合で変動することを前提としているため、厳密には成り立たない

大和証券

https://www.daiwa.jp/glossary/YST0538.html

  • モノやサービスの値段を基準にした為替レート
  • ある商品の価格がひとつに決まる「一物一価」を前提に、多様な商品・サービス購入時の各国・地域通貨の価値を比較して算定

記事では

日本は長い間経済の停滞が続いて賃金上昇がなかったため諸外国より物価が安い、為替レートが円安過ぎる、ビッグマックで見ると米国だと5.74ドル、日本だと390円、390/5.74=67.9円が妥当為替レート

と書いています、ただ、購買力平価は参考にはなるけれどこれを基に投資を決めるとまぁ失敗する可能性が高いです。

というのが、各証券会社の解説にもあるように、同じ名前の商品でも厳密には全く違う商品だからです。

ビッグマックだってアメリカのものはアメリカで調達した材料を使い、輸送費や会社の人件費や利益等様々な条件が変わります。

ディズニーランドはかなり乱暴で、全てのディズニーランドの広さやアトラクション、人気も違うので同じにする意味がありません、各地の運営企業の企業努力です。

ダイソーも日本では100円で安いイメージで捉えていますが、ブラジルやタイは果たして?となります。

また、ビッグマックは日本のビッグマックを米国のビッグマックで割って1ドルを出してますが、これは元々かなりいじれる数字です。

購買力平価では今の価格が正しくて、同じになるべきと前提を置いて、390/5.74=67.9円を出してますが、ここでは為替が間違えているという前提です。

なら為替が正しいと前提をおいてもいいわけで、日本の390円が正しければ今のレートの109円で考えると米国のビッグマックは3.58ドルが正しく、高いという訳ですし、5.74ドルが正しければビッグマックは626円まで値上がりできる事になります。

まとめ

購買力平価について一面で大きく取り上げられていたので今回記事を書きました。もちろん、購買力平価も重要な指標には間違いないです。

ただ、あくまで今の価格が正しくて、世界で同じ名前の商品が同じ価格で取引されるはずという前提があってはじめて成立する考え方なので投資においては参考程度にとどめたほうが良いです。

為替の決定要因はこれだけではなくて、商品価格は企業努力や輸送環境、商品の調達等様々な要因が絡みます。また、金融緩和の影響もここには含まれていません。為替の決定要因は無数にあります。

さらに言うとビッグマック、ディズニーチケット、ダイソーの商品は裁定が働きません、日本のビッグマックが安いからと日本で購入して米国に運んでも届いた頃には食べられません、東京ディズニーランドのチケットで他地域のディズニーランドで遊べません、なので価格差があって当然とも言えます。

商品の名前が同じだから世界で同じになるべきという考え方自体に無理があるようにも感じます。

勿論、記事にある日本の1人当たり賃金が伸びていないのは問題です。

「経済協力開発機構(OECD)などによると、1997年の実質賃金を100とすると、2018年の日本は90.1と減少が続く。海外は米国が116、英国は127.2など増加傾向にある」

ただ、だから円高が良いか?というと日本企業が海外に出て、世界最大の債権国になり、海外からの所得収支で経常黒字を上げている現状ではむしろ円高は日本国に逆効果ではないかなぁと思います。

これは円高だと米ドル建てで見た1人当たりのGDPが見かけ上伸びるのでそれを記者が意識しているのではないかと思います。でもそれはあくまで見かけだけで実態は伴っていません。

むしろ、今の環境をチャンスと捉え、海外からの投資や買い物、レジャーをどんどん呼び込んで外資を日本活性化の起爆剤にした方が良いように思えます。