中国で起きた原油先物の損失騒ぎについて

バンク・オブ・チャイナ、損失補填に揺れる 2020年5月13日 日本経済新聞

 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58983440S0A510C2EE9000/

記事内容

  1. 中国の国有銀行、中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)が原油先物に連動する個人向け投資商品の対応に苦慮している
  2. 4月20日に米先物価格がマイナスに転落、100億元(1500億円強)規模の損失を被った個人が販売姿勢や商品設計への批判を強めているため
  3. 価格が米原油先物WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)に連動し、5月物など月ごとに訪れる期日に合わせて売りと買いを決済する「原油宝」と呼ばれる事実上の先物商品が騒ぎの原因
  4. 商品設計上の不備を投機筋に狙われた可能性が高い
  5. 原油宝は連動する米国のWTI先物が21日に精算されるのに中国の20日夜10時で注文を閉める。この時は米国は朝10時で取引時間中、この日の清算値は1バレルマイナス37.63ドル
  6. 中国銀はこのマイナスの20日清算値で決済すると投資家に伝え、騒ぎになった。
  7. 5月物の取引は翌21日まで続き、21日の価格はマイナスを回避している
  8. SNS(交流サイト)やネット上の掲示板には投資元本を失い、マイナスで精算された差額も支払うよう求められた人々の悲鳴のような書き込みが相次いだ
  9. 金融当局が中国銀幹部を呼び出して事情を聴取し、中国銀は投資元本の2割を支払うことで和解に応じるよう投資家に呼びかけたが動揺は続いている

感想

この記事は2つの示唆を与えてくれます

商品に対する理解と金融リテラシーです

まず、商品性から考えると原油先物が米国で決済されるのに合わせず、時差があるからと前日に中国人は決済されてしまうとなると常に中国人は時差分の価格変動リスクを負っていることになります

これは中国銀行の設計上の怠慢です

今回は恐らく原油先物を売買していたヘッジファンドが20日に中国勢が決済のために原油先物を買いに来ることを知っており、事前に売り崩し、マイナスにした上で中国勢にマイナスで引き取らせたんだと思います

売り崩した側は大儲けです、ただ、空売りした勢力も成功するかしないかはわからない中でリスクを負って投機を仕掛けた事実は忘れてはなりません

普段は理屈では商品価格はマイナスにはならないのですが、今回は事前にWTIの原油を引き取るクッシングの貯蔵庫が満載な情報は伝わっていたため、現物で原油を引き取るには他へ移す輸送コストもあるから清算値がマイナスになるかもしれないという話はニュースでも流れていました

そんな中にこの日に買うよって事前に言ってくれるなんて、わざわざ私は損しますよって言う様なモノでみんな千載一遇の挽回チャンスとばかりに殺到すると思います

これは中国銀行は大いに責められるべきです

一方で投資家側はどう見るべきでしょうか

これを可哀想とか中国銀行は許せないと思う人は残念ながら投機や投資には向いて無いです、やらない方がいいです

まず、先物が安全な商品であるとはそもそも思えません

マイナスになることは私も想定外でした、でも想定外は株も何でも相場には付き物です

だからこそ儲かる時も損する時もあるわけで損したから訴訟したり誰かのせいにして騒いだりする事は

自分は自分の許容範囲超えて投機を行った欲深で無知な人間でしたと言っているようなものです

同情の余地はありません

では対策は?

  1. まずはきちんと商品性を理解して損失がどこが最大かよく検討する
  2. その上で理解できなければ見送り、理解できても損を許容できるレベルをよく考えてから投じる資金の金額を決めて動くべきです

勿論これをさも儲かりますよ的な安易なセールスを行った銀行員は退場して欲しいですし、制度設計を安易に行う金融機関は許せません

しかし、今回日本では認められない損失補填が行われましたがそれでも2割です

全額は戻りませんし、株式でも想定外や倒産は往々にして起こります

投資や投機を行う時はどの位儲かりそう?と思う気持ちよりもまず、どこまでなら損に耐えられるのか?をよく考えてから取り組む事を肝に銘じる事だと思います

これは日本でも同様だと思います