週間相場メモ2020年12月14日

2020年12月14日号
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債券

金利
週末の米10年国債利回りは0.896%と前週の0.973%と比べてやや低下しました。
米FRBの理事会が15日~16日にかけて開かれるため様子見姿勢です。
12月は日米欧の中央銀行の理事会が全て行われます。コロナ禍の経済を支える為に金融緩和の追加策が出てくるか、今の緩和策がどの程度継続されるのかに注目が集まります。
先頭は欧州ECBです、10日に開かれました、柱は3月に開始された欧州各国の国債や金融機関の短期債務を購入して市場に資金を供給しているPEPPのプログラムの買い入れ枠拡大です。
現在買い入れ枠は1.35兆ユーロ(約170兆円)ですがこれを5,000億ユーロ(約60兆円)増額し、合計1.85兆ユーロ(約230兆円)へ、期限も2021年6月終了→2022年3月末へ延長を決めました。理由は低迷するインフレ率です。
ラガルド総裁はこの1年間で欧州中銀の資産を約4.6兆ユーロから6.6兆ユーロに5割拡大しましたが、需要や経済活動の低迷で一向に上昇しない為追加をしてきました。
2023年予想でも1.4%程度のインフレ率予想なので暫く欧州が金融引き締めに出ることは無さそうです。
今後16日終了予定で米国FRB、こちらも追加の緩和策が期待されています。
17~18日の日銀政策決定会合では追加では無いですが、現在の資産買い入れプログラムの期間を1年程度延長する事が予想されています。
足下ワクチン開発の加速などで経済活性化期待や米国追加経済対策の期待等から米国長期金利は上昇傾向です。この傾向は今後も続くと思われますが、先進国中心に中央銀行の巨額の緩和策で資金供給が継続的に行われるためペースは緩やかだと思われます。
一方で巨額の緩和策の影響は投資家にも及んでおり、我々で案内しているハイイールド社債、欧州銀CoCos、米銀優先株式預託証券等の利回りが比較的高い資産は買い上げられ、利回りの低下(価格は上昇)が続いております。この傾向はインフレ率の上昇が起こるまでしばらく続きそうです。
為替相変わらず円ドルは週間を通じて膠着状態です、ここ数年、円もドルも調達通貨と位置付けられ、投資家がリスクをとる局面では共に売られ、リスク回避の局面で共に買われる傾向があるからと言われています。
米FRBの追加緩和策が予想されている中で米ドルからユーロへの資金移動が一部見られますが、10日の欧州中銀の緩和策の追加と欧州中銀ラガルド総裁の「為替相場の動きを引き続き注視する」の発言で一方的にユーロを買い進めることもできにくい状況です。
欧州はユーロ高が輸入物価の下落を通じて物価下落に繋がるため、ユーロ高を歓迎しておりません、米ドル安の方向は変わらないにしても速度はゆっくりだと思われます。
株式NYダウが3万ドル超えで終了、日経平均も26,000円超えで終了、変動幅が小さい1週間でした。
米国株はプラスの材料はIPOです、9日に料理宅配のドアダッシュ(DASH)がNYに新規公開し、調達額34億ドル、時価総額は公開価格102ドルを大幅に上回る189ドルで引け、時価総額は6兆円を超えました。米国ではウーバーのシェアが26%、ドアダッシュは50%です。日本ではソフトバンクG傘下のSVFが当社の株式の22%を保有しており、過去3年間で6.8億ドルを投資、20倍程度になり、約120億ドルの含み益を手にしたと言われ、ソフトバンクG株も一時8,900円を記録しました、これは2000年の10,999円(調整済み)以来の高値です。(その後2002年に137円迄下落したことも追記しておきます)
その他人工知能(AI)を使ったソフトウエアを提供するC3Ai(シースリーエーアイ/AI)が9日上場し、公開価格(42ドル)の2.2倍の92.49ドルで取引を終え時価総額が100億ドル超、10日に民泊のAirbnb(エアビー&ビー)(ABNB)が上場し9兆円程度の時価総額になっているなど米国市場の活況ぶりが伺えます。
また、政府の経済対策でも明るい材料が出ています、日本では8日に事業規模73.6兆円の追加総合経済対策を閣議決定(国の財政支出分は約40兆円)、欧州は4月に発表し、加盟国が一部反対していて長引いていた欧州復興基金と中期予算の合計1.8兆ユーロ(230兆円)の支出策が10日に首脳会議で成立(内訳は7,500億ユーロの復興基金創設と2020年以降7年間で合計1兆ユーロの財政支出策が中心)、米国も11月の雇用統計が10月に+61万人だったのが+24.5万人と急減したのを受け、超党派議員グループで9,080億ドル規模の追加経済対策をまとめようと動きが出ております。
結果日本で70兆円規模、欧州で230兆円規模、米国で100兆円規模の財政対策が検討もしくは成立しており、来年以降の大きな支援材料となります。
先週お伝えしたように足下の悪いニュースが金融緩和策と財政支出の追加を促す流れが続いています。

その他株式市場の来年見通しの各社のコメントが出てきておりますが、米BOA(バンク・オブ・アメリカ)が2日に出したレポートによると来年注目は日本株で日経平均3万円予想というのが出てきています。
日経平均は既に26,000円台なので3万円と言われてもと思うのですが、明るいニュースです。
しかし、来年にかけての見通しが明るく、支援する中央銀行や政府の支援策も多くあるので株式市場が今後も活況だということを否定しませんが、調整を示唆する話も出ています。
先ほど強気のBOAの他のレポートではファンドマネジャーのキャッシュポジションが大幅に低下(つまり株式をかなり購入した)しており、短期調整を示唆しています。
同様のことは米国ゴールドマンサックスも指摘しています。同社は米国の来年のS&P500を現在の3700より16%上昇の4300予想なので決して株式市場の先行きに弱気ではありません。ただ、短期間の調整はありうると警告しています。
投資家の立場としては、ここまで株価水準が上昇してくると色々気になりますが、引き続き有望銘柄を丁寧に拾い、数年後の成長を取りに行く、短期の相場に一喜一憂しない、つまらなくても分散投資で規律を守って投資を継続する事が運用目標の達成に繋がるため方針は今まで通りの継続で良いと考えております。
今後も米大統領が14日に無事決まるのか、来月1月5日に米国の上院が共和党が過半数になるのか、イランの問題は果たして何も起きないのか等リスク材料は数多くあります、なので一方方向に傾斜しすぎた投資はしない方が良いと思います。