週間相場メモ2020年12月21日

債券・金利

週末の米10年国債利回りは0.945%と前週の0.896%と比べてやや低下しました。

日米欧の中央銀行の緩和策が予定通りで特にサプライズが無かったことで落ち着いた展開です。

FRBは16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の一部に観測のあった追加緩和を見送る一方、量的緩和を「完全雇用に近づくまで」維持すると表明しました、完全雇用は失業率4%程度と言われており、コロナショック前は米国失業率は2020年2月で3.5%、3月で4.4%でした。およそこの水準と比べると約1000万人が米国で今後雇用されないといけないとされており、11月の雇用統計(非農業部門雇用者数変化)が24.5万人増加だったため、単純計算で3年はかかる為、少なくとも2023年いっぱいは米国の利上げや引き締めがやりにくい状況が続くと見られています。

日銀も18日の金融政策決定会合において、追加では無いですが、現在の資産買い入れ策の期限を2020年9月から2021年9月に1年間延長するなど緩和策の継続を発表しています。

来年2021年は中央銀行の資金供給ラッシュの一年と予想されます。

日米欧に加えて英、豪、NZ、スウェーデン、中国合計で毎月約3000億米ドルの国債、社債等の資産買い入れ策(量的緩和)を実施予定です。

これは8か国のGDP合計の0.7%に相当し、年間に直すと8.4%となります、日本円に直すと約370兆円です。これが中央銀行を通じて世界に大量供給されるインパクトはとても大きいと予想されます。

余剰資金の受け皿は限られているため、債券投資においては利回りの低い高格付け債券より、格付けは低くてもハイイールド社債、更には経営破綻や経営不振で財務危機に陥った企業が発行する ディストレスト債券等にもリスク承知で資金が今後も流れ込むと見られます。

もちろん、景気回復期にインフレ率の上昇を見越して米国債利回りが上昇する可能性はありますが、各社の来年末予想は1.4-5%程度と2020年の年初の水準1.919%にも届きませんし、急激な動きには中央銀行が追加緩和策で対応してくることが予想されるのでハイイールド社債やCoCos債、米銀優先株式預託証券等には安心できる環境が続きそうです。

為替

円ドルが17日深夜で102円台に一時入り、円高傾向が続いています。米国のFRBの金融緩和の長期化を受けてドル安が進展しました。目先ドル安の流れは続きそうですが、日銀も緩和策の延長を行うなど金融緩和合戦の様相を呈しているので動きとしては緩やかな状況です。

投機筋の動きもあり、短期的に激しく動くときもあるかもしれませんが、長期間で見ると日米は一定の幅で動くレンジ相場になりそうです。

先週お伝えした通り現在は円も米ドルも調達通貨としての位置づけなので、景気回復期には円やドルを調達して投資資金に回り、ショック安などがあると投資資金が売却されて本国に戻ってくるため買われる同一方向へ動く傾向があります。

来年も全面米ドル安、円高なのかというと決めつけることは無いと考えています。

日経Quick社が実施した機関投資家アンケートによると、2021年中で最も強くなる通貨と予想しているのは米ドル28%、人民元24%、日本円17%、豪ドル12%、ユーロ8%となっており、実際に売買を行う現場は米ドルが一方的に弱くなることを現在は考えておりません。こういう意見も一方である訳です。

引き続き為替の目先の水準や見通しに一喜一憂することなく、投資先の株式や債券の企業や内容を重視した投資を行うことが重要だと考えます。

株式

週間を通じて日米株式が余り大きな変動が無かった一週間になりました。米国の経済対策は米上下両院は19日から予定していた休会を先延ばしし、9000億ドル(約93兆円)規模の新型コロナウイルス対策を週末返上で協議するとしており、年内の成立が間近になってきました。

来年の見通しは各社から沢山出ており、いくつかキーワードが出てきていますが、その中で今回は「5G」を考えてみます。

米アップル社から5GスマホのiPhone12が10月に出て、当初価格が一番安いminiでも7万円台、一番上位のproで15万円台と高価なのを嫌気して当初は売れ行きが懸念されていました、しかし、12月15日の日経新聞電子版でアップル社が2021年1-6月期のiPhoneの生産計画を30%上積みすると報じ、株価も上昇しています。

アップル社の2021年通年の暫定的な生産予測は新旧モデルを合わせて最大2億3000万台で、19年と比べて20%増えるとみられています。その中で最も成長が期待できるマーケットは中国で同社の売上の2割を占めています。

中国の5G契約者数は2019年11月に開始以降、2020年6月に1億人突破、10月で1.5億人突破ですが、2021年には5億人まで伸びると予想されています。

関連した企業としてはアップルももちろんですが、日本では東京エレクトロン、村田製作所等が挙げられます。

また、5G網が完成するとデータ容量が飛躍的に伸びるため、インターネットを使用して事業を行うテンセントやアリババ等の企業にとっても恩恵が大きいと見られます。

米中問題ばかりで悲観的な記事が中国系には多いのですが、コロナ禍をいち早く終息させ、2021年に再び8%成長に復帰する中国の影響力は大きく、日本の企業も恩恵を受けそうです。

その他

バイデン次期大統領の政策ですが、1月の上院選挙もあり、公約の実現可能性はこれからですが、報道では大規模な公共事業や富裕層課税等断片的にしか情報が無いので整理してみました。

まず、投資面ですが、10年間で8兆ドルの支出を計画しています。

財源として10年間で4兆ドルの増税も同時に計画されています、キャピタルゲイン課税(証券投資利益課税)や所得税増税、法人税増税等が柱です。

これらの政策で左派だ、極左だと色々ネットやマスコミで言われていますが、果たしてそうでしょうか。

良くみると、充実した医療保険があり、住宅ローン補助や企業の不動産買い替え特例、企業への補助金、教育無償化となると、日本で実施済みの政策ばかりです。

税金面も引き上げても日本より法人税、所得税は低いです。

また基本理念はトランプ大統領の政策を引き継いでますし、経済政策も極端な変更は見当たりません。