2021年1月25日週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りは1月15日が1.087%に対して1月22日が1.086%と変化がありませんでした。

金利を下押しする材料と上昇させる材料が入り混じっており、全体的に様子見です。

金利下押し材料は①新型コロナ感染状況は酷く人々の行動の制限が世界的に続いていることで1-3月の景況感が再び悪化が予想される事②米国失業率はピークの15%超からは回復基調ですが12月末時点で8.1%と高水準であること③米FRBが2023年までは政策金利を0%程度の現状維持を続けると見込まれること等が挙げられます。金利上昇要因は①自動車や半導体等製造業の生産・販売の回復や情報通信産業の活況等景気回復期待が強いこと②世界中が大規模金融緩和実施で将来のインフレを懸念(2020年2月末比で各国中央銀行の資産規模は米FRBが1.77倍、欧ECBが1.5倍、日銀1.2倍)していること③2020年年末合意の経済対策9000億米ドルに続きバイデン大統領が1.9兆米ドルの失業給付金上乗せを含む経済対策を発表し(規模は今後変化する可能性が高いです)、更に2月にはインフラ投資を中心とした追加経済対策が発表される予定で、財源として国債の増発が懸念されていることなどで、今後も互いの綱引きは続きそうです。一方、①景気回復は企業の業績の安定性に寄与すること②銀行経営にプラスの影響をもたらすこと③投資家の投資余力が改善することなどから緩やかな国債利回り上昇ならハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債等は国債利回りの上昇のマイナス効果よりも上記のプラス材料が上回り、価格の上昇が見込めるという考えに変わりはありません。

為替

為替動向も1週間大きな動きはありませんでした。昨年よりコロナショック後の金融緩和の拡大の規模が日銀より米FRBの方が大きい事(2020年2月比で米FRBは資産規模1.77倍、日銀1.2倍)や日米金利縮小(米穀10年債利回りは2020年1月約1.8%→年末0.9%台、日本は大きな変化なし)などの材料からドル安円高基調です。しかし、市場に迷いも見られます。米国の景気の回復スピードが速く、また国債利回りも緩やかに上昇してきたので一方的に円買い、ドル売りを仕掛けられる状況ではありません。また、日本の貿易収支は2020年7月から11月の統計まで黒字が続いており、これを円高の材料に取り上げる所もあります。しかし、これは日本の景況感が悪く日本の輸入が減ったことが原因で、今後日本の景気が回復すると再び貿易赤字になると見られており、世界景気の回復が貿易のためのドル需要に結びつくため円安・ドル高要因になります。

債券利回りの状況に似ていますが、足下の景気が悪い材料で金融緩和長期化や米国債利回り低水準長期化見通しの広がりがドル安傾向(結果円高)を起こし、将来の景気回復期待による米国債利回り上昇や日本の貿易赤字化などの材料でドル高(結果円安)の今と将来の材料の綱引きが続きそうです。

株式

S&P500が1.9%上昇、NASDAQ総合が4.2%上昇と米株を中心に好調が続いています。景気対策期待とワクチン接種の本格化、企業収益の回復期待が主な要因です。2020年4Qの決算発表が始まりました、まだS&P500の企業中60社程度しか出ていませんが今後米国の企業の回復基調が確認できます。

新型コロナワクチンの本格接種が始まりました、この接種状況のスピードが速ければ株高材料、遅い話が出れば株安材料となりえます。

やや先の話ですが、今悪いホテル、旅行、航空、鉄道、飲食、レジャー、小売店等数多くの人が集まる事が商売になる業種の回復ですが、これは早ければ3月後半、遅くても5月には回復が顕在化しそうです。

米国を見ると、米FRBや政府は失業対策で政策をどんどん追加しています。結果、米国全体の家計のデータによると過剰貯蓄は約2兆ドルに達しているという試算もあります。

外にも出にくいし、お金も使えない、でも政府の対策のお金はやってくる、おまけに株も上がっているので貯蓄は膨らんでいる状態です。

失業者は多いですが、もともと失業者の所得は小さいので消費に与える影響は小さく、元々問題が無かった人々が政府の対策の真の恩恵を受ける結果になって貯蓄が増えている状態です。

お金はあって外に出られないストレスフルな状態です。今後ワクチン接種が広がり、外出が自由になってくると回復が一気に進むと見ております。

その他

銀行でも証券会社でも新興国に関連した金融商品の案内を受けた方は多いと思います。

その際に販売側の売り文句で「金利高いですよ」「分配金沢山入りますよ」が良く出ます。

しかし、その金利や分配金は本当に高いのでしょうか。

お客様には良く、「インフレ率」を引いた数字で比較しないと実質的な比較にならないと伝えてきております。

2020年12月のデータが手に入ったので掲載しておきます。

表では政策金利と10年国債利回りからそれぞれインフレ率を引いた数字を掲載しています。

つまり、この数字が実質的な利回りということになります。

こうしてみるとそれほど高い状態ではありません。

投資するかしないかの判断は該当国の政治経済状況にもよるので金利だけで判断する訳にはいきませんが判断材料の一つにはなると思います。

利回りや分配金を訴えてくる営業には「インフレ率加味したら何%」?と返してみると良いと思います。