2021年3月1日 週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りが25日に1.61%と急速に上昇しました。欧米の大手証券会社の年末の予想は1.3~1.5%に集中しておりますが、バンクオブアメリカは1.75%に変更しました。これから予想を変更する金融機関が出てくる可能性があります。

(週末は下落し、1.4%程度で終えています。)

主な要因

①1.9兆米ドルの経済対策の早期成立予想の高まり②直近のインフレ率の上昇など。

現在のFRBは「足下で起きているインフレは一時的現象」とみており、金融政策に変更を加える必要は無いとしています。

米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債券等には

投資資金が継続して集まっているので国債の利回り上昇の影響は大きくありません。

引き続き運用提案商品の中心であり続けると考えております。

米国10年債利回りは19日時点で1.34%だったのが25日には一時1.61%と急騰しました。

原因は①1.9兆米ドルの経済対策の早期成立予想の高まり②直近のインフレ率の上昇が主に考えられます。

ここ1週間の動きは急で債券市場が小さなパニック状態になっています。

23日の議会公聴会で米FRBのパウエル議長が金融緩和の継続の確認やインフレに対する懸念は示さず、市場を落ち着かせようとしたものの、米国債を売る流れが止まりませんでした。

週末は1.407%と上昇一服です。これが落ち着くかは暫く様子を見てからの判断で良いでしょう。

いずれにせよ将来のインフレを巡る議論は今後も活発に行われ、相場に影響を与え続けるでしょう。

インフレ予想に影響を与える要因の①の経済対策は27日未明に下院で可決しました、今後上院で審議され3月上旬に成立する見通しです。規模が共和党との交渉で半分程度に減額されると見られていましたが、民主単独で下院は可決しており、規模は1.9兆ドルと変更はありません、上院でもサンダース上院議員が財政調整法を使用し、過半数で可決できるよう動いているようで、実現すると共和党抜きで規模を減額することなく成立させる可能性が高くなってきました。

②直近のインフレ率上昇ですが、米国の1月の消費者物価指数(CPI)は前年比+1.4%、食品とエネルギーを除くコアCPIは12月比+1.2%、前年比+2%と上昇なのに加えて26日の米商務省発表の1月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比で1.5%上昇とインフレを示す指標の発表が相次いでいます。

今後もこれらのようなインフレを示す指標が発表になるたび米国債利回りが反応すると思われます。

ただ、このインフレが持続的かはまだ疑問です。前回お伝えしたように持続的なインフレになるためには1000万人に及ぶ失業者問題が解決し、消費環境が活発になることが必要で、今はまだ早いと考えております。

パウエル議長は講演で、インフレのデータは昨年同月比でみるため、ロックダウンで消費を控えた昨年と比べるとインフレになって当然、しかし、長続きしないという主旨の発言を行っています。

昨年コロナ禍で一時期マスクが品切れでネットオークションでひと箱数千円の高値で取引されましたが、供給網が整備されると価格が急落しました。世界中の数多くの製品がコロナ禍で一時生産を停止し在庫が減った所に政府の経済対策、一部の製品への需要の急増が起こり、需給バランスが崩れたため価格が上がっている製品が多く、ここから数か月間はこのような指標は数多く出ると見られます。その度に今回のような混乱が起こる事はあり得ます。

しかし、いずれ需給バランスが改善され、価格が安定してくると思われます。

よって本格的な金融引き締めは2023年から2024年頃とする当初の予定は変わらないと見られます。

今後のインフレ率は昨年との比較で2%を超える数字も出ると見られ、相場のかく乱要因になりそうです。

運用商品としては米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債券に変更はありません。

国債利回りが上昇しても、運用において利回りを欲する資金が多く、これらの分野は買われ続けています。

しかし、現在の想定と違い持続的なインフレに入り、国債利回りが上昇し続けるリスクもあるため満期までの期間は10年以下の商品にする方が良いと思われます。

為替

米国債の利回り上昇がサポートで為替は円安傾向です。一時105.84円まで円安が進みました。今後も極端な円高は想定せず、やや円安気味に推移すると見ています。

最近目立つのは豪ドルの上昇です、25日には84.94円まで記録しました。鉄鉱石価格に支えられており、中国経済の影響を大きく受けています。中国は鉄鉱石を自給できないのでオーストラリアにとって強みになります。今後も堅調に推移すると見られます。

豪ドル高理由は①ドル安の受け皿の一つ②鉄鉱石価格の上昇が考えられます、

①のドル安の受け皿は米ドルが安くなった時に代替の一番手通貨はユーロ、次にポンドですが、先進国通貨として豪ドルも受け皿の一つとして資金が流入しています。

②の鉄鉱石の恩恵ですが、鉄鉱石の価格は昨年と本年で倍になっています。

これには中国の活発な公共投資が支えになっております。

中国はオーストラリアと政治的な関係は悪化していて、石炭やワイン、牛肉、大麦など様々な物の輸入制限措置を行っています。が、鉄鉱石は中国国内で調達が難しいのでオーストラリアとブラジルから大量に購入しています。

中国の鉄鉱石輸入に占めるシェアはオーストラリア6割、ブラジル2割(2019年)でオーストラリアが最大の鉄鉱石買付相手です。

自給をすることが厳しい商品なのでこの傾向は今後も続くとみて良いでしょう。

もちろん、昨年3月のコロナショックでは2019年末に70円台半ばで推移していたのが59.9円を記録したとても変動の激しい通貨なので荒っぽい動きを今後もする所に注意は必要です。

株式

将来の株価に強気なことに変更はありません、過熱感が強かったのですが、久しぶりに少し調整が入りました。

米国債利回りが急騰したことが原因とされています。

週末の米国債利回りは25日のピークが1.61%です。水準としては決して高くないですが、上昇スピードが今後も鈍らないと株式市場に悪影響が出てしまいます。ペースが鈍るかを暫く見る必要があります。

株式もここ1週間程度の下落率で見るとまだ調整と言えない位小さな率です、新聞では値幅を主に書きたがりますが、幅は大きくても率にすると小さいです、更なる調整があるかもう少し時間をかけて様子を見ても良いと思われます。

先週お伝えした

目先の好材料①米国1.9兆ドル経済対策法案通過見通しの高まり②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ。

ですが、②にコメントします。

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化⑥米国長期金利の急騰です。

好材料②好調な企業決算 米国S&P500採用の企業20年10-12月の決算は2月19日時点で399社が終えており、82%が市場予想を上回る当期純利益を報告しております。前年比で増収増益で着地する可能性も出てきており、コロナを企業決算は完全に克服したと言えます。また、ワクチン接種が順調に進めば今まで物色の対象外だったレジャー、航空、鉄道、百貨店、ホテル等への広がりも期待できます。

今後株価が更に上昇するためには米国債利回りが再び下落するか、上昇するにしても緩やかであること、企業業績が上向く事、FRBの緩和姿勢に変化が無いこと等が必要です。

FRBの姿勢の変化は暫く無いと言えます、金利の急騰時はFRBが国債の買い入れ対象を長期債に広げる選択肢も残っています。

企業業績についてもワクチンの普及が進めば改善が期待できます。

注意点は、金利の急騰に対処できる政策手段があるということと実際に使うという話は別ですし、企業業績が上向いていても米国の株価をPER(株価収益率)で見ると現在の米国はやや割高な事が懸念材料です。過去のPERは2019年が17倍程度、2020年初頭で19倍程度だったのが現在21倍程度で推移しており、やや期待先行の面があります。(現在の米S&P500は3811、1株利益予想約180ドル)仮に2020年初頭のレベルまで調整するとなると今から約1割、2019年レベルとなると約2割の調整が必要になります。

逆に株価の調整ではなく、増益が今後も1割、2割と進めばPERは下がるので株価の割高感は解消されます。

今後5G携帯の広がりや工場の自動化、オンライン化の進展、電気自動車は今年のテーマですし、コロナ禍を克服した後に幅広い業種で回復が実際に起きてくると実現可能な数字なので今を悲観する必要はありません。

昨年11月ごろから世界的にコロナを克服後を想定した期待感で株価が上昇してきました、それがやや行き過ぎになっているのが今と言えます、一時的に金利上昇を理由に下落していますが、今年1年を通じてみると企業決算も回復し、株価も伸びる1年になると考えております。

将来の見通しは明るく期待できますが、その前に一度正常化のための痛みが来るリスクがあるというのが現在と言えます。