2021年3月8日週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りが週末にかけて再び1.6%近くに上昇しました。

バンクオブアメリカは1.75%を超えると株式から債券への投資資金のシフトが起こる可能性が有るとしています。(ただ、その時期はかなり先だとも同時に話しています)

(週末は1.577%で終えています。)

主な要因は①1.9兆米ドルの経済対策の早期成立予想の高まり②直近のインフレ率の上昇、

ここに今回経済対策と別に大規模なインフラ投資も計画されています。

米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債券等が引き続き運用提案商品の中心に変更ありません。

米国10年債利回りは2月26日時点で1.4%程度に戻ったのですが、4日のパウエル議長の講演会で追加の金融緩和策が出なかった事を受けて再び上昇、5日には1.6%に再び接近、週末1.577%で終わっています。

パウエル議長は講演の中で「今後数か月で雇用創出に弾みがつく十分な理由がある」「経済活動の再開に伴い消費が増えれば物価は上昇する可能性が有る」と発言、一方で足下の金利上昇を受けて幅広い年限の国債をFRBが買って金利をコントロールする政策を導入する期待があったのですが、特に言及が無く金利の上昇を招きました。

3月1日のコメントでは1週間様子を見てとお話ししましたが、債券市場の動揺はもう暫くは続きそうです。

運用商品としては米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債券に変更はありません。

国債利回りが上昇しても、運用において利回りを欲する資金が多く、これらの分野は価格が安定しています。

国債を中心とする投資適格債とハイイールド債の価格の差は普段添付している表のETFの価格差からも伺えます。

iSh LQD(米国投資適格社債)は年末138.13が129.76と6.1%の下落ですが、iSh HYG(米国ハイイールド債)は年末87.3が86.62と0.8%の下落にとどまっています。ETFは分配金は再投資されない為、分配金を除いた価格の比較なので実際分配金を加味するとハイイールド債の方が分配額は高いので差は更に大きくなります。

このETFを購入する事でも利益は見込めますし、個別で魅力的な商品があれば引き続き提案して参ります。

為替

米国債の利回り上昇がサポートで為替は円安傾向です。一時108.63円まで進みました。今後も極端な円高は想定せず、やや円安気味に推移すると見ています。

豪ドルの上昇について前回コメントしましたが、堅調に推移するとの見方に変わりはありません、ただ、今から為替の上昇で大きな利益を取るのは難しくなってきています。鉄鉱石価格が過去10年で最も高く、今以上の上昇が厳しいと予想されること、豪RBAがここ最近の豪ドル高に警戒感を示し始めているからです。大きく下落する事も無いと見ていますが、やや変動幅の大きな通貨なので80円を挟んで上下5円の動き程度が居心地の良い水準であろうと考えています。

豪中の政治問題は鉄鉱石が中国は豪州意外に代替が効かない製品の為為替にはニュートラルとみています。

株式

将来の株価に強気なことに変更はありませんが引き続き米国長期金利の動きに振り回されています。

週末の米国債利回りは25日のピークが1.61%、5日は1.59%です。

週末に米国雇用統計の発表があり、2月の非農業部門雇用者数は予想の18.2万人を大幅に上回る37.9万人、失業率も6.3%→6.2%に低下、1月の速報分も4.9万人増加を16.6万人に修正と非常に好調な結果が発表されました。景気は確実に上向いています。

目先の好材料①米国1.9兆ドル経済対策法案通過見通しの高まり②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ。

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化⑥米国長期金利の急騰です。

好材料②好調な企業決算 前回米国の決算動向が好調な話をしましたが、日本も好調です。2020年10月~12月期の売上高は2.6%減収に対して経常利益は21.9%の大幅増益になりました。今後ワクチンの広がりと人々の行動の正常化により更なる加速が見込める状況です。日本においてもレジャー、航空、鉄道、百貨店、ホテル等への物色の広がりが期待できます。

4日のパウエル議長の講演における追加の緩和策が無かったことに対する金利高騰と株価の動揺ですが、今は動揺しても時間が経てば1.5%程度の利回りに慣れ、企業業績の改善が勝る展開になると見られます。

指数の動きについては日経平均が2月16日に30,714円を記録後、3月5日に一時28,308円と8%下落、NYダウは2月24日に32,009ドルを記録後3月4日に30,547ドルで5%下落、米NASDAQは2月16日に14,175ポイントが3月4日に12,553ポイントと11%下落となっています。

ここで目立つのがNASDAQの動きです。ネット企業等グロース株が多いマーケットで直近の金利急騰の影響を大きく受けています。2月16日米国債10年利回りは1.27%程度だったので国債の利回りの上昇と逆に大きく下落してきています。

テスラ株がこの1か月程度で約3割下落している影響も大きいと見られます。

余り影響を受けていないのがNYダウです、こちらは伝統的な企業が多く、GAFAMの中でもアップルとマイクロソフトしか構成銘柄に入っておりません。グロース株が少なく、バリュー株が多い為影響は比較的小さいです。

雇用統計で少し今後の米国の景気状況について今までよりやや強気に修正する必要があるかもしれません、今回大幅に上振れたのは一部の州で経済活動への制限措置が緩和され、娯楽産業の雇用が回復し始めていることが原因のようです。

仮に3月感染が再拡大しないとなると3月の雇用統計は100万人伸びる可能性すらあるという予想もあります。

一方で金利についてですが、現在審議中の1.9兆ドルの経済対策がここ2週間以内に上院で可決し、次の経済対策が発表されるタイミング、もしくは4月2日の米国雇用統計発表時辺りが目先のピークになると予想しています。

グロース株は金利動向が落ち着くまで不安定ですが金利水準は例え今よりも上になる事があったとしても上昇ペースが緩やかになったり、同じ水準で一定期間過ごすと慣れてきて再び資金が戻ると見ています。

その上で雇用が回復し、出遅れていた産業の株価も上昇し、全体を押し上げる展開になると見ています。

また、短期的な需給要因でARK関連という言葉がここ数週間取り上げられています。

これは投資会社ARK社が保有するETFに組み入れられている株式群の事です。同社は破壊的イノベーションを起こしうる企業に投資を行うとしており、超グロース投資企業です。ここ1年間の成績がとてもよかったため注目されており、逆にここ数週間はARK銘柄が狙い撃ちされて下落しています。ARK関連株の落ち着きもNASDAQ市場の落ち着きに貢献します。ARK社ついてはその他の項目で詳しく解説いたします。

その他

ARK社について解説いたします。

同社は2014年1月にアライアンス・バーンスタインのキャサリン・D・ウッド氏が設立した資産運用会社です。破壊的イノベーションを起こす企業を発掘、投資を行うとしており、現在①ゲノム②ブロックチェーン③ロボティクス④AI⑤エネルギー貯蔵等のイノベーションが起こっているとしています。また、これら以外の分野においても将来の成長性が見込めると判断した企業には投資を行っております。アナリストも技術分野毎に配置を行い、企業の今を分析するよりも将来の爆発力を見越すいわばベンチャーキャピタル的投資を行う運用会社です。日本ではARK社のETFは金融庁未認可で買うことは出来ず、代わりに日興アセットマネジメントが出資関係にあり、連動する投資信託を通じて提供を行っております。

日興アセットの提供するARK社の投資信託ですが、フィンテック分野はグローバル・フィンテック株式ファンドMaaS分野はグローバル・モビリティ・サービス株式ファンド宇宙関連はグローバル・スペース株式ファンドゲノム関連はグローバル全生物ゲノム株式ファンドゼロコンタクト関連はデジタル・トランスフォーメーション株式ファンドとなっております。

ARK社はツイッターで日々の売買動向を情報提供しています。(Twitterでは@ActiveArkです)

ここの売買動向がここ直近の株式市場に大きな影響を与えています。最近の売買ではグーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック等の大型株を売却し、テスラ、ドラフトキングス(オンラインカジノDKNG)、ヴァージン・ギャラクティック・ホールディングス(宇宙開発SPCE)等超グロース株を買い増ししています。

売買動向に沿ってロビンフッド社を利用している個人投資家が追随していると言われております。

上昇時は集中して買われ、下落の時も投げ売りが集中し株価の乱高下が激しい傾向です。

また、現在の売買動向ですが、売っている企業は黒字の大型企業が多く、買っているのはテスラ、ドラフトキング、ヴァージン等赤字か高PER企業が多いです、現実を売り、夢を買う戦略ともいえます。

これらの企業は全体の相場が上昇傾向でいるうちはとても強いのですが、外部環境が悪化すると株価を支える根拠となる数字が薄い為、株価の暴落が起こります。テスラ株も1月26日に883ドルを付けた後に3月5日は597ドルと1か月程度で30%以上調整、ヴァージンは2月11日に59.41ドルが3月5日に27.21ドルと半値以下になっています。

ちなみに、キャサリン・D・ウッドはテスラ株には超強気で2024年に4000ドル目標を掲げています。

割り切った個別銘柄投資を行うか、ここで紹介した日興アセットマネジメントの投資信託を購入する手段もあります。

楽天、SBI、マネックス等でも取り扱いはあるようです。

ただ、とても変動が激しいのとテーマが忘れられると超長期間株価が低迷するリスクには注意してください。