2021年4月19日週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りは引き続き落ち着いております。

4月13日発表の米消費者物価指数は高い伸びを示したものの事前予想に近かった事と食品とエネルギー価格を除いたコア指数は落ち着いていたことからむしろ金利低下となりました。

また、4月15日に米バイデン大統領がロシアに対して米金融機関のロシア債券取引制限を含む制裁措置を発表したことにより安全資産といわれる米国債への買いが膨らみ米国債利回りの低下要因となりました。

また、4月に入り日本勢の米国債買いもあり米国金利自体が上昇しても日欧の投資マネーが流入しています。

①バイデン政権の財政支出に対する国債大量発行に対する警戒感②インフレ率上昇を示す指標の発表③FRBの発言、行動

投資対象はコール迄の期間が10年を超えないレベルの米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCo債等が中心で変更ありません。

4月13日に3月の米消費者物価指数(CPI)の発表があり、2月比では+0.6%と2012年8月以来の高い伸びを示しました。しかし、事前予想が0.5%と大きく離れていなかったことと同時に発表となった前年同月比は+2.6%とFRBの目標の2%を超えたものの、価格変動の大きいエネルギー、食品を除いたコアCPIは+1.6%と12か月連続で2%を下回る結果であったためマーケットでは悪材料になりませんでした。CPIで伸びが目立つのはエネルギー価格と全体の1/3を占める住居費、航空運賃が伸びた輸送サービス費等でコロナワクチン接種が進む中で正常化に向けて動き出している印象です。

4月15日発表の米バイデン大統領の対ロシア制裁措置ですが、市場は米国債への資金流入という形で対応しました。米景気回復やインフレ率の上昇が米国債利回りの上昇要因ですが、地政学リスクからの退避資金の受け皿としての米国債買いがおこり、一方的に米国債を売り込む展開は落ち着いてきたと言えます。

投資対象商品に変更ありません。米国ハイ・イールド債券、米銀優先株式預託証券、欧銀CoCo債等を丁寧に購入継続で良いと考えます。

為替

引き続き米国債の利回りが上昇傾向であることがサポート要因です。米ドルが強い状況に変化はありません。今後も極端な円高は想定せず、やや円安気味に推移すると見ております。

ただし、足下は米国のインフレ率に落ち着きが見られた事などにより米国10年債利回りの上昇が止まったため円ドルは膠着状態になっております。

調整の域に過ぎないと考えており、方向感に変化はありません。

新興国は不安定です、先進国の景気回復を見越したコモディティ価格の上昇によるインフレ、変異型の広がりによるコロナ禍の新規感染者数拡大、米と中ロの冷戦の余波等悪材料が多いです。

4月7日のインド金融政策決定会合では2020年5月以降5会合連続で政策金利の据え置きが決まりました。

政策金利は4%ですが、インフレ率も4%程度で今後推移すると見られており事実上のゼロ金利政策継続です、インフレを加速させたくない中で景気を支えないといけない難しいかじ取りが続いています。

4月15日には米バイデン大統領がロシア債券の取引の制限を拡大する制裁措置を発表しています、ルーブル安に繋がれば輸入物価の上昇を通じたインフレ要因になります。

同日、トルコ中央銀行も政策金利を19%で据え置きとしました。

インド中央銀行(RBI)はインドの成長率を2021年4月から2022年3月では10.5%、物価は2021年10~12月期には目標の2~6%のレンジの中央の4%程度で落ち着くと予想しています。

目先は原油価格の上昇、需要の回復に伴い高いインフレ率が出る可能性がありますが、年末には落ち着くと考えているようです。同時にダス総裁は2021年4月~6月インドルピー(約1.5兆円)の国債買い入れプログラムの発表を同時に行い、10年国債利回りはやや低下しました。インフレは怖いが毎日コロナ新規感染者数が20万人を超えるインドでは景気回復も大きな課題で簡単に利上げはできません。

よって金利を据え置きつつ国債買い入れで金融緩和策を取る難しい政策を行っています。

ロシアに対する米国の制裁ですが、予想されていた範囲ということで市場に混乱は起こりませんでした。しかし、米国投資家との取引を制限されるのはロシアにとって痛手です。

ロシアは天然ガスを中心とした資源を輸出し海外から商品を購入する経済ですが、貿易で必要となる米ドルの調達が難しくなってくると経済的に厳しくなる可能性があり、今後も不安定な動きになると思われます。

トルコリラに関しても緩和策を望むエルドアン大統領に対して同調しているはずのカブジュオール新総裁がインフレの状況を見ると身動きが取れなくて金利据え置きとした印象です。

今後も新興国は政治、インフレ、コロナ禍、景気に関して不安定な動きを見せると予想します。単純に為替水準が低い事や絶対値の利回りが高いだけで判断しないほうが良いと考えます。

株式

米国債利回りが落ち着きを見せていること、インフレ率の発表に投資家が慣れてきたことなどにより引き続き米国株は堅調に推移しました。

目先の好材料①4月公表予定の追加経済対策を含むバイデン政権の財政支出法案の成立②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ。

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化⑥米国長期金利の急騰

これらに大きな変更はありません。

好材料「②好調な企業決算」ですが、S&P500の2021年1-3月期は前年同期比で+25%と高い伸びで4-6月は更に加速が見込まれております。

懸念材料「①コロナ感染拡大が再び加速」ですが、こちらは米国当局によりジョンソン&ジョンソンの新型コロナワクチンの接種の一時停止勧告がなされました。

ただ、こちらはファイザーやモデルナのワクチンとは無関係で大きくは無いと考えます。

一方で2月に1日35万人まで低下したコロナ新規感染者数が直近70万人を超えてきたことはやや不安材料でワクチンの普及速度が引き続き重要です。

マーケットでは4月14日にビットコイン取引所のコインベースが上場し、初値381ドル、時価総額759億ドル(約8兆円)の大型上場となりました。

また、最近中国政府による企業に対する締め付けの記事が増えてきており、テンセントやアリババに対して懸念される記事が出ていますが、4月10日のアリババに対する処罰についてはとても軽いものでした。

政治リスクは引き続きあるもののネット企業の発展を中国政府が妨げようとする意思は無いとみられます。

4月16日に中国の1~3月期GDP成長率が18.3%増加の発表がありました。昨年新型コロナ最初の発生時期の反動とはいえ回復ぶりが伺えます。

米国の1-3月期の決算の集計ですが、リフィニティブ社によるとS&P500の2021年1-3月期は前年同期比25%増益、4-6月は前年の2020年4-6月期がマイナス30.6%だった反動もあり、54.9%増益予想、7-9月20.2%、10-12月14.1%、2022年1-3月16.8%予想と一年を通じて2桁増益予想となっており、今後も相場を支えそうです。

4月12日時点での米国S&P500社のPERは23.7倍でここ10年間の平均17.1倍を4割上回っているので決して割安ではありませんが、好調な決算と金融緩和の継続に支えられる展開は継続しそうです。

また、成長率が高く好決算が期待できるインターネット企業等は国債利回りの落ち着きもあり、NASDAQ銘柄を中心に再び買われる可能性が出てきているといえるでしょう。

以前お伝えしたGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)や決算が良いにも関わらず売られたドキュサイン、ズームビデオ、オクタ等も候補になりえます。

また、正常化を睨んだ米国不動産REITへの資金流入も継続するでしょう。

ジョンソン&ジョンソンの新型コロナワクチンですが、4月13日に米疾病対策センター(CDC)、米食品医薬品局(FDA)が接種停止勧告を出しました。これは同社のワクチンがだめということではなく、今迄米国で680万回接種を行い、1人死亡、1人重体の事例が出たため様子を見るためです。確率で考えるととても小さいのですが、人命にかかわるため慎重に判断しての判断とのことです。

米国全体で考えるとファイザーやモデルナのワクチンが順調に広まっているので経済全体に与える影響は小さいです。

4月14日上場のコインベースの上場ですが、PERベースで20倍台なので割高感はありません。が、今後の発展となると色々課題はあります。

コインベースの収益の源泉は取引所でコインを取引した際に売り手と買い手の価格差を取る証券会社同様のモデルです。最大のコインはビットコインですが、ここに投信大手のフィデリティがETFを組成する申請を行っており、承認されると大半の投資家はこちらを利用するでしょう。日本人もビットコインは雑所得ですがETFは証券所得なのでビットコイン投資はETFに集中します。交換手数料の低減要因になるでしょう。

また、ビットコイン自体の価格に妥当価格はありません、価格が下がれば交換手数料も減るので上場したての今はともかく、将来にわたって長期的に良い株かと言うとやや疑問が残ります。

4月10日に中国国家市場監督管理総局がアリババグループに対して実施した罰金ですが、2015年から出店テナントに対してアリババ以外のストアに出店を制限する「2者択一」を強制したとして独占禁止法違反で2019年の売上高の4%相当の182億人民元(約3000億円)となりました。日本のマスコミでは中国政府がいよいよ企業の締め付けを始めたと騒いでいます。

しかし、よく見ると実態はかなり違う様です。

まず、今回の罰金ですが、かなり緩いです。というのが独占禁止法の上限金額は前年売上高の10%ですが今回は4%です。米クアルコムに行った2015年2月の罰金は8%でした。

理由も「2者択一」のみで事前に言われていた他の指摘に対しては全く言及がありませんでした。

また、この処分を発表した4月10日に政府が中国中央テレビのホームページで「経済プラットフォーム事業は重要であり、今後も発展を支持する」趣旨の投稿をわざわざおこなっております。

ネット企業による貸出業務については銀行同様の規制を導入し、国家管理として監督を行いたい意向の様ですが日本で報道されているような当局が新興企業を否定するような動きでは全く無いです。

その他中国のマザーズともいえる2019年に設立されたスターボード(科創板)における上場予定取りやめの数の増加ですが、日経新聞では当局が新興企業を否定しているような書き方です。

2019年に23件、2020年51件だったのが2021年は3末時点で76件と急増しているからです。

ただ、このマーケットのIPOは許可制ではなく登録制で、不備のある企業の申請も多く、却下の理由も「情報開示不足」「株式の複雑な保有構造」「利害関係者間取引」等当然といえる理由が並んでいます。

どうしても日本から見ると中国とは政治、領土問題、人権問題もあり、報道は悲観的になりがちですし私も色々考える所はあります。

しかしこれらとは別に中国自身は自国経済の発展を第一に考えております。

アリババやテンセントのような巨大企業は当局からの規制が入ると株価に一時的な影響は受けますが、長期的な彼らの発展シナリオに変更は無いといえるでしょう。