2021年5月3日週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りに大きな動きは見られません、1.5~1.7%程度での推移です。

株式市場で日米ともに決算発表を控え小動きな影響が債券市場にも影響し、特に日本はGW前で動きが小さい状況です。

経済指標は好調なものが多くでております。

4月22日米カンザスシティ連銀製造業景気指数は31(予28)で2001年7月以降の過去最高を記録、生産、受注も過去最高となりました。

4月22日全米不動産業者協会(NAR)発表の3月中古住宅販売件数は2月比-3.7%の601万件(予611万件)と予想を下回りましたが、

4月23日米商務省発表の3月米新築住宅販売件数は2月比20.7%増、年率102.1万戸(予88.5万戸)、2006年8月以来の14年半ぶりの水準を記録しています。

4月27日発表の米消費者信頼感指数は121.7と予想の113を大きく上回り、消費者心理の好転が現れております。これ自体は良い材料ですが、インフレ材料でもあります。

4月29日の米国GDPは前期比+6.4%です。2月寒波の影響の反動を考えると4-6月は二桁の伸びになりそうです。

4月30日に米商務省発表の3月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+2.3%と2月より0.8%の高い伸びとなりました。

物価の伸びがここ数か月は前年比較で高くなり債券相場に金利上昇の影響を与えそうですが、大半のアナリストやFRBは昨年落ち込んだ反動で一時的な現象とみております。

この様に米国の景気指標は好調持続です。

4月27日公表の日銀の展望レポートが出て、日本の物価見通し2021年分が下方修正され、2023年予想も1%程度で

日本のデフレ脱却の難しさが報道されました、日本の金融緩和は出口が見えない状況で、仮に米国が2023年末から利上げとなると日米金利差は更に広がる事になります。

結果債券投資では米国が比較的良い状況に変りはなく、投資対象は米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCo債等が中心で変更ありません。

米国の不動産市況ですが、好調な数字が続いております。

新築住宅が好調で、中古住宅も予想に届かず2月に比べて減った理由は販売が好調過ぎて在庫が不足しているからだそうです。

現在の米国の新築住宅の在庫は3.6か月分(5か月が分岐点、2月は4.4か月)、中古住宅は2.1か月分とそれぞれ在庫不足が目立ちます、暫く活況は続くでしょう。

米消費者信頼感指数の好調さですが、これは1人当たり1,400ドルの給付金がとても大きな影響を与えております。

いまだ新規感染者数が5万人レベルで日本に置き換えると1.8万人位毎日新規感染者が増えているような状況で4月30日時点で4684人の日本より遥かに悪いのですが、

ワクチン接種後はマスクを取って行動してよくなるので、米国人は楽観視しており、経済活動が正常化に向かっております。

消費好きなアメリカ人が給付金を蓄えて使う時期を探っている状態で徐々に加速してくると見られます。

米商務省発表の3月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+2.3%、食品とエネルギーを除くコア指数は+1.8%でした。

PCE物価指数はFEBが政策を決める上で重視している指標の一つですが、FRBは以前からの説明通り昨年落ち込んだ反動であり、一時的としております。

これもバイデン政権の1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策の現金給付により個人所得が前月比で21.1%増え、需要が急増した影響が大きいからとしております。

FRB及び大半の各社アナリストは今年後半になるとこれらの影響も落ち着き、インフレ率及び10年国債利回りは緩やかな上昇基調になり、市場は落ち着くと見ております。

日銀の展望レポートですが、話題になったのは日本の物価見通しの改定で、米国とは真逆でデフレ状態から抜け出せていません。

2021年の物価見通しは当初+0.5%だったのを+0.1%に下方修正、2023年見通しも+1%と目標とする2%に届かない予想を公表しました。

黒田総裁は2013年3月に就任して2023年3月末迄が任期です。就任当初2年でインフレ率2%を達成するとしておりましたが、10年間の任期中に実現不可能と

事実上のデフレに対する敗北宣言を出した格好です。日本の金利については上昇しにくい状態が続くと見られます。

為替

引き続き米国債利回りがサポート要因です。米ドルが強い状況に変化は無く、今後も極端な円高は想定しておりません。

目先は円安への買い疲れ感からの調整もありうると思いますし米大統領選挙翌年の為替相場のアノマリーも意識されると思います。

ただ、4月27日公表の日銀の展望レポートから日本のデフレ脱却の難しさが改めて認識されました。

米国と日本の金融政策の差が金利差を通じて為替に影響するとみられますし、金利の低い日本からの投資資金が米国に流入する流れも継続するとみております。

同様なのが欧州です、4月22日にECB理事会があり、低水準のGDP成長率、高水準の失業率、物価の低迷等を理由に緩和策の継続を決定しております。

米国に日欧の投資資金が向かう流れに変化は無さそうです。 

新興国では4月23日にロシア中央銀行が政策金利を4.5%から5%へ利上げを行っております、日欧と対照的に新興国はインフレが厳しく抑えるために利上げを行っている国が多いです。

米ドルのアノマリーですが、大和アセットマネジメントが1973年~2020年のデータを取った所米大統領選挙翌年のドル円は1~4月が円安、5~10月が円高傾向だそうです。

あくまで過去のデータですが、意識はされそうです。

4月22日開催のECB理事会では金融緩和の現状維持、継続が決定されております。

主要政策金利は0%、民間銀行がECBに預ける当座預金の金利(預金ファシリティ金利)は-0.5%据置です、2021年1~3月のGDP成長率はマイナス成長予想、2月の域内失業率も8.3%とコロナ禍前の7%前半に戻る勢いが無いことが理由です。消費者物価(CPI)は16日に3月は前年同期比+1.3%と出ましたが、インフレ加速を気にする程ではありません。

日欧がデフレ脱却、景気回復を果たして金利上昇局面に入るにはまだ時間がかかりそうな印象です。

4月23日にロシア中銀は政策金利を4.5%から5%へ引き上げました、2021年3月のインフレ率は5.79%で政策目標の4%を上回っている理由からです。

2021年年末で4.7~5.2%程度、2022年年央に4%台半ば程度に減速する見通しです。

GDP成長率は2023年まで2~4%程度と低迷し、4月15日発表の米国の追加制裁、ウクライナ問題の影響もあり、厳しい状況は続きそうです。

株式

米国はS&P500、NASDAQ指数共に最高値更新です、決算動向に注目が集まっています。

日本の決算発表は東証1部上場企業で連休前の26日~7日迄400社程度なのに対して10日~14日が1057社発表予定なので連休明けに動きが大きいとみられます。

目先の好材料①4月公表予定の追加経済対策を含むバイデン政権の財政支出法案の成立②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化⑥米国長期金利の急騰

これらに大きな変更はありません。

好材料「②好調な企業決算」ですが、今年の決算に加えて来年にかけての見通しも好調であれば株価上昇の追い風になります。

米国ではGAFAMの決算が出揃いました、株価の反応はガイダンスに届いたり届かないとかで短期売買が行われ、まちまちでしたが、売上高は昨年の反動もあり、大幅増加で着地しています。

マザーズ企業でもこの位売り上げを伸ばしている企業は少ないのに年間売上高が10兆円や20兆円規模の企業でこの成長率は凄まじいと感じます。

日本勢でもソニーグループや東京エレクトロンが好決算を出しております。

決算直後は好決算であっても利益確定売りに押される事は良くありますが、最終的に売上と利益を伸ばせている企業に投資資金は戻ると考えております。

27日発表 マイクロソフト 第3四半期 売上高417.1億ドル(前年同期比+19.1%)、純利益155億ドル、1株利益1.95ドル、クラウド事業、PC事業など全部門二桁成長

27日発表 グーグル(アルファベット)第3四半期 売上高553億ドル(前年同期比+34%)、純利益179億3000万ドル、1株利益26.29ドル、クラウド事業、YouTube事業も好調

28日発表 アマゾン 第1四半期 売上高1085.2億ドル(前年同期比+43.8%)、純利益81億ドル、1株利益15.79ドル、北米売上高40%、海外60%増加、クラウド事業30%増加

28日発表 フェイスブック 第1四半期 売上高262億ドル(前年同期比+47.7%)、最終利益94億ドル、1株利益3.3ドル 広告収入が伸長

28日発表 アップル 第2四半期 売上高895億8400万ドル(前年同期比+54%)、最終利益236億3000万ドル、1株利益1.4ドル、iPhoneが479億ドル売上と70%増加、Macも91億ドル売上と67%増加等が材料、このうち中国でiPhoneが177億2800万ドル売上と、前年同期の94億5500万ドルから87%増加しております。

今年はコロナ禍からの回復局面なので昨年ほどの伸びは期待できないと各社予想しておりますが、引き続き注目してよい企業群だと思います。

その他日本勢ではソニーと東京エレクトロンについてコメントします。

28日発表 ソニーグループ2021年3月通期決算、売上高8兆9994億円(+8.9%)、純利益1兆1718億円(+101%)、PS5効果等ゲームが好調です。

2022年について減益予想としたため株価は下落しましたが、売上高予想は9.7兆円としているので相当利益を慎重に見積もっていると見られ、弱気になる必要は無いと考えます。

30日発表 東京エレクトロン2021年3月期通期決算、売上高1兆3991億円(+24%)、純利益2429億円(+31%)と好決算でした、来年の見通しも好調で

売上高は1兆7000億円、純利益も3300億円予想としており、半導体不足の恩恵は暫く続きそうです。

もう一つ、株式材料になる環境関連ですが、4月22日~23日に気候変動サミットがありました。

11月にイギリスで国連気候変動枠組条約第26回締約会議(COP26)が開かれ、Co2の排出目標などが決められる予定です。

今後もEVや再生可能エネルギーは株式市場で話題になりそうですが、各国の思惑や目標が大きく違ったり、実現時期が先過ぎて本当に実現するのかについては注意が必要です。

Co2の削減目標は各国直近のピークをスタートにしており、米国は2005年、日本は2013年、欧州や英国は1990年基準でバラバラで、着地は2050年に揃えて削減するとしております。(米50%、欧55%、英68%、日46%)

また、中国はCo2の排出量が世界の28%を占めるのですが、2030年までにピークアウトして石炭の使用を削減する、インドも2030年までに削減する為に米国と協力する等ずいぶん先の努力目標と言え、実現するかは不透明です。

現在の環境関連銘柄は期待先行で買われている部分も大きく、話題で上昇する銘柄も出てくると思いますが事業内容が不透明な会社も多く、やはり決算がしっかりしていない銘柄は手を出さないほうが良いと考えます。