2021年5月17日週刊相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りが再び1.7%に接近して株式市場に大きな影響を与えましたが3月のピークには至りませんでした。債券市場は比較的冷静です。

前週末1.58%程度で終了した米10年債利回りですが、

米国の4月の消費者物価指数は、全体が前年同月比+4.2%(予想3.6%)、食品・エネルギーを除いたコア・ベース+3.0%(予想2.3%)と、それぞれ、2008年9月、1996年1月以来の高い伸びとなりました。

前年比で伸びは高まると想定されていたものの予想を超えてきたため米国10年債利回りが上昇する要因になりました。

しかし、14日の5月消費者態度指数速報、米4月小売売上高、4月米鉱工業生産指数がそれぞれ事前予想を下回ったり、前月比に対して減速した結果だったため、過度の景気過熱やインフレ警戒がおさまり、週末は1.64%の着地でした。

投信運用会社のアセットマネジメントONEがまとめた米国ハイイールドの資料によると4月の価格は3月に比べて1.1%上昇し、平均利回りが4.73%とのことです。

4月末において米ドル建て新興国国債の平均が5.05%、米国投資適格社債平均2.25%、米国債1.63%となっており、利回り差から引き続き米ハイイールドが選好される流れが続くとみられます。

投資対象は米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCo債等が中心で変更ありません。

為替

7日に米雇用統計が予想外に低調だったため米10年債利回りが低下し、11日には108.35円まで円高が進みましたが、12日の米国の4月の消費者物価指数上昇を受け

米国債利回りが上昇、13日には109円78銭まで円安が進みました。

週末にかけて利回りが低下したため連動して109円34銭で終えています。

引き続き米国債利回りがサポート要因でやや円安気味に推移すると見ております。

メキシコ中銀が13日に政策金利を4%で据え置きを発表しております。

しかし、メキシコの4月の消費者物価指数は中銀の目標の4%を超える6%と高い数字なため、次回以降利上げが予想されます。

新興国の中では比較的通貨が安定しているメキシコにおいても景気回復を優先するか、景気減速覚悟でインフレ抑制に動くかの他の新興国にみられる厳しい状況が例外では無くなって来ました。

株式

目先の好材料①4月公表予定の追加経済対策を含むバイデン政権の財政支出法案の成立

②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ

④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化

⑥米国長期金利の急騰

これらに大きな変更はありません。

12日の米国の4月の消費者物価指数が事前予想を超えて上昇し、米国10年債利回りが上昇、米ハイテク株が下落、日本株もあおりを受けて下落した週でした。

決算発表が日米で続いており、コロナ禍の中比較的良い決算が相次いでいるのですが、2022年の市場の期待が企業予想を上回るケースも多く、企業の発表を受けて一度売却する

動きが起こっている地合いです。

その中で米国の物価上昇懸念が持ち上がり、米10年債利回りが上昇して、市場に格好の売りの材料を提供した形になりました。

しかし、予想されているものの、日本企業の2022年3月期は30-40%の増益が見込めますし、米Nasdaq上場企業も日興アセットの調べによるとEPS(1株利益)が21年4-6月期に前年比約2倍、7-9月期に同46%増と好調が見込まれています。

動揺は暫く続く可能性がありますが、好業績と金融緩和路線の継続を背景に、増収増益が見込めるハイテク企業中心に株価は戻る可能性が高いと見ております。

ただ、日本株についてはコロナ新規感染者数の絶対数は欧米に比べてとても少ないのですが、欧米がコロナワクチンの接種率が上昇して新規感染者数が減少傾向なのに対し、日本は接種率が低く、新規感染者数が増える傾向な事が不安視されており、パフォーマンスに影響が出始めております。ワクチン接種ペースの加速が望まれます。

経済イベント(抜粋)

5月7日 4月米雇用統計分析

100万人増加予想に対して26.6万人しか増加しなかった4月の米雇用統計ですが、

娯楽・接客が同33万1千人増、このうち、飲食サービスが同18万7千人増となる一方、コロナ禍の中で好調だった宅配・メッセンジャー(前月比マイナス7.7万人)、人材派遣(マイナス11.1万人)などで減少がみられました。民間部門全体では同21万8千人増と、市場予想の同93万3千人増を大幅に下回りました。政府部門は同4万8千人増となりました。

宅配・メッセンジャー、人材派遣はコロナ禍で好調だっただけに正常化に向けた動きとみられます。また、自動車・部品部門での伸びが鈍化しており、半導体不足による生産調整の影響が出ているとみられます。

その他企業と求人のミスマッチ、手厚い失業給付による職場復帰のペースが緩慢であることが考えられます。

失業率が予想5.8%に対して6.1%の結果であったことは求職を諦めていた人々が再び求職活動を始めて失業者数が増えた事が原因と考えられるので特に問題はありません。

企業の側は人手不足で回復傾向が変わったという事は無く、米国の景気回復シナリオに変更はありません。

5月12日 米国4月消費者物価指数 

全体が前年同月比+4.2%(予想3.6%)、食品・エネルギーを除いたコア・ベース+3.0%(予想2.3%)と、それぞれ、2008年9月、1996年1月以来の高い伸びとなりました。

新型コロナウイルスのワクチン接種の普及に伴ない、経済活動の再開が進む中、経済対策の現金給付などの寄与もあり、需要が拡大した一方、供給が追いついていないことの影響が大きかったとみられます。

目立った事例では中古車の価格が前月比+10.0%と大幅上昇を記録しました。寒波に見舞われた米工場の操業停止や日本でのルネサスの工場火災といったトラブルなどに伴なう半導体の供給不足などを背景に、新車の生産が落ち込んだ影響もあり、中古車の需要が大きく膨らんだことが背景にあります。しかし、米FRB(連邦準備制度理事会)のクラリダ副議長は昨年が落ち込んだ反動であり、一過性のものであり、現在の金融緩和路線を修正する必要を否定しております。4月、5月は仕方ないとして6月から秋にかけてのインフレ率が落ち着くかどうかが今後のカギとなるとみております。

5月13日 米国新規失業保険申請件数 

米労働省発表、1日から8日までの1週間の新規失業保険申請件数は47万3000件(ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は49万件)と前週の50万7000件から3万4000件改善。

新型コロナウイルスの感染第1波に見舞われた昨年3月中旬以降で最低となり、前週に出た雇用回復に対する懸念を緩和する結果となりました。

5月13日 米国4月卸売物価指数

米労働省発表、前年同月比6.2%上昇。3月の4.2%から加速し、2010年の統計改定以来の大幅な伸びとなり、消費者物価指数の動きに連動して高い数字となりました。

5月13日 メキシコ銀行政策決定会合 

政策金利4%で据置、4月消費者物価指数6.08%(目標4%)上昇、この日の声明でインフレ率を3%に向けて管理していく必要があると発表しており、次は利上げに動くことが予想されます。

エネルギーや農産品を除くコア指数も4.13%上昇で3月の4.12%に続いて2か月連続で4%以上の上昇を記録しております。

5月14日 米ミシガン大学発表 5月消費者態度指数速報 82.8(前月比マイナス5.5、予想90.1)「現在の景況感90.8、前月比マイナス6.4」「今後の見通し77.6、前月比マイナス5.1」インフレ懸念が指数をやや押し下げたとしております。

5月14日 米商務省発表4月小売売上高 前月比マイナス0.2%、前年同月比+3.1%の結果です。自動車や自動車部品が1.1%減ったことが大きいようです。しかし、この要因を除いても前月比+0.1%で予想の0.7%には届きませんでした。単月のデータでは全てを判断できませんが、インフレ警戒の所にやや消費行動は過熱していない結果になったため、米10年債利回りの低下要因となりました。

5月14日 4月米鉱工業生産指数 前月比+0.7%、3月が+2.4%なので減速しました。これもワクチンの広がりが景気を加速する論議にやや冷や水を浴びせる格好になったため米国金利の低下要因となりました。

決算発表(抜粋)

5月11日 日産自動車 2021年3月通期決算発表 売上高7兆8625億円(前期比マイナス20.4%)最終利益マイナス4486億円(前期マイナス6712億円)と2期連続の赤字。2022年3月期予想は売上高9.1兆円(+15.7%)、最終利益は600億円の赤字予想です。コロナ禍で販売が低迷した事や半導体不足で生産が一部低調なことを理由に挙げております。ただ、12日のトヨタと比べるといかにも今後に不安を残す決算と言えます。

5月12日 トヨタ自動車 2021年3月通期決算発表 売上高27兆2145億円(前期比マイナス9%)純利益2兆2452億円(前期比+10%)事前は7%減益予想だったがRAV4等の多目的スポーツ車(SUV)が伸びる、また、半導体不足に対しても対応が功を奏しており、各社不安視している中トヨタは問題ないとのことです。2022年3月期は売上高が30兆円(+10%)予想、純利益は2兆3000億円(+2%)見込み。同時に2030年には電動車販売を年間800万台にする計画も同時に発表しており、本格的にEV販売に力を入れることを表明しております。

5月12日 ソフトバンクG 2021年3月通期決算発表 純利益が4兆9879億円と純利益比較で行くとここ1年間では1位米アップル、2位サウジアラムコに次ぐ世界3位。最も貢献したのはベンチャー投資のビジョンファンドが4兆268億円、次に通信子会社ソフトバンクが8479億円でした。とても好業績な結果ですが、株式の売却による実現益は4196億円で大半が含み益の増加です。

株式投資においては含み益が伸びている企業は保有を継続し、損切は早く、伸びが期待できなくなった企業は早めに利益確定が基本ですが、株式を知らないマスコミや帳簿の数字しか見ない格付け機関の目は厳しく、ベンチャー投資で英グリーンシルキャピタルの破綻等今後も破綻や損切が出たときは悪く報道されそうですが、世界3位の純利益を出したことは素直に評価して良いと思います。

5月13日 米ウォルト・ディズニー2021年1~3月期第一四半期決算 売上高が前年同期比13%減の156億1300万ドル(約1兆7010億円)、純利益は96%増の9億100万ドル。新型コロナウイルスによる映画館やテーマパークの営業制限が緩み、業績改善が進みつつあることが追い風、一方、動画配信サービスの会員数の伸びの鈍化が嫌気されました。3月末のディズニープラスの会員数は20年12月末より870万人多い1億360万人でしたが、昨年10-12月は3か月で1600万人が増加し、今四半期も1440万人の増加が予想されておりましたが、予想に届きませんでした。しかし、24年に2億3000万~2億6000万人の会員という目標に変更はないことや米国では4月30日に13か月ぶりにディズニーランドが開園し今後テーマパークの収益も改善することが見込まれおり、問題視することは無いと考えます。