債券・金利
※引き続き満期やコール迄の期間を10年未満のハイイールド債、COCO債、米銀優先株式預託証券等が中心商品です。
インフレ材料は数多く報道されているものの、市場が慣れ切っており、落ち着きがみられるとむしろ金利低下すら起こり得そうな状態です。
もちろん、将来の金利上昇リスク、インフレリスクにも配慮しながら慎重に運用する方針に変化はありません。
6月25日に1.52%で終了した米国10年債利回りは1.43%で終了です。
今週もインフレ材料になりそうな指標が数多く出ました。
6月29日の米国の4月住宅価格指数は1991年の統計開始以来の最高を記録。
6月30日の6月ADP米民間雇用者数がプラス69.2万人と予想を大幅に超過。
7月1日のISM製造業総合景況指数の発表の中の仕入れ価格指数は約42年ぶりの高水準、イラン革命やオイルショック時と同等の水準。
雇用指数は49.9で分岐点ギリギリ、雇用の需給のミスマッチから賃金上昇圧力懸念。
7月2日の労働省発表の米雇用統計は予想を大きく上回る85万人増加。
現在の債券市場は慣れ切っていて、インフレは一時的だという見方が支配的です。今後金利低下すら考えられる状況です。
潤沢な投資マネーが利回りを求めて金融商品が継続して購入される状況は変わっておりません。
もちろん、将来のインフレや金利上昇に対する注意は必要です。これは労働市場の動き、FRBの政策がカギを握ります。
FRBは金融緩和縮小を2022年、利上げを2023年に目論んでいます、今年は議論が中心ですが、来年以降実際に政策が動き出すと金利上昇圧力が市場にかかります。
また、インフレ率も今の現象は「一時的」がコンセンサスですが、今後、雇用市場が逼迫し、賃金上昇圧力がかかるようであれば予想以上に引き締めが行われるリスクは残ります。
引き続き、新規投資に当たっては利回り、発行体の信用力、満期やコール迄の期間に注意しながら慎重に選定し、既保有の商品も常にチェックを怠らず運用を継続する方針に変更はありません。
為替
※111円を超えてきました、相変わらず小さなレンジ相場ですが、今後も円安傾向継続とみてよいと考えております。
6月24日にメキシコ中央銀行が利上げを行っておりましたが、僅差による可決でサプライズでした、インフレ抑制から利上げに動いており、強気とまではいきませんが、良い材料です。
今年順調に円安方向だった南アフリカで新型コロナ第3波が広がっており、通貨にマイナスになる可能性が出てきました。南ア含めアフリカのワクチン接種率は1けた台なので懸念されます。
また、今後米国が引き締めに向かう際に新興国から資金が米ドルに向かう可能性があります、米ドル高と新興国の利上げが綱引きを行う状況が続きそうです。
6月24日にメキシコ中央銀行は、政策金利を4.00%から4.25%に2018年12月以来、約2年半ぶりに引き上げる発表を行いました。
政策委員5名の内、3名が利上げ、2名が据え置きを主張する僅差での決定です。
事前にブルームバーグ社が集計した23名のエコノミストは全員据え置き予想だったのでサプライズ利上げです。
会合後の声明文で、現在のインフレは一時的としつつも、上振れ期間が長期化するリスクやエネルギー価格の上昇などインフレ要因が増えてきており、政策目標の3%に収めさせるためには、引き締める必要があると判断したと説明しております。
三井住友DSアセットマネジメント社によるとメキシコの2021年通年CPI予想はプラス4.5%で2021年末 の政策金利の予想も4.5%となっており、
年末までにもう一度利上げが行われる見通しです。
通貨についてですが、米国が将来の引き締めを考え出している以上米ドルの上昇があれば、隣国メキシコペソにとっては下落要因になります。
一方で通貨安は輸入物価の上昇を通じて国内のインフレ要因になるのでインフレを抑え込みたいメキシコ当局は通貨安を容認できない立場です。
プラスとマイナスの要因が綱引きする状態が続くので円から見たメキシコペソは中立と見ております。
南アフリカの通貨ランドは対ドルでここ1年ほど概ね上昇傾向です、円ベースで見ても、2020年4月に5.585円と直近の最安値を記録した後、資源国、高金利通貨といった要因が支えになって、直近高値8.168円を記録しています。
足元は新型コロナウイルスの感染第3波がきており、やや軟調となっています。
今まで上昇してきた要因は、資源価格の上昇、相対的な高金利、新型コロナ感染拡大の第1波と第2波は比較的早期に収束してきた信頼感などです。
ただ、足下は資源価格の上昇が頭打ちになり、新型コロナの第3波に伴う厳格なロックダウンを導入する等懸念材料が出てきました。
南アのワクチン接種率(少なくとも1回接種)は5%と極端に低いです。
世界保健機関(WHO)によるとアフリカ全体では接種率は1%程度だそうです。
中央銀行は利上げを示唆しております、これは新興国全体に共通するリスクなのですが、米国による引き締め策の開始は米ドル上昇を招く可能性が高く、新興国通貨にとってはマイナス要因です。
各国が自国通貨防衛のため利上げを行い、どこまで耐えられるかが焦点になります。
株式
※日米ともに2%未満の変動率の小動きの週でした。
雇用関連では好調な数字が出て景気の回復継続が確認できております。
自動車の販売台数が復調してくる等消費の回復が継続しております。
7月4日には「コロナ独立宣言」がバイデン大統領により行われます、宣言を受けて人々のマインドが更に強気に変化することが期待されます。
日米ともに材料不足で小動きでした、上に買いあがるには材料不足、下落するには不安要因が少ない状態です。
米国は7月4日の独立記念日にバイデン大統領が「コロナ独立宣言」を行う予定です。米国が名実ともにポストコロナ入りします。
米国の新規感染者数はピーク時の一日30万人程度からは大幅に減りましたが、7月2日時点で11,544人と日本に当てはめると4,400人程度毎日増えている状況です。
日本は2日で1,730人なので日本の2倍以上の酷さで終息宣言です。
既に米国の消費は活発で、旅行も活発、航空機を大量購入する航空会社も出てきており、コロナは米国では終わったものとなっております。
この楽観的な姿は日本人が見習っても良いかもしれません。
また、環境に優しくというのが世界的テーマで、テスラもこの4-6月は20万台程度販売しておりますが、
GM、トヨタ共に多く売れたのはガソリン車のピックアップトラックです、
代表的なのがGMのシルバラードという車で全長は5.84M、幅2M、全高1.88Mでエンジンも4.3L V6、5.3L V8、6.2L V8の3種類で燃費は4-7K程度だそうです。
EVは今後も伸びるとはいえ、米国人に本格的に普及するには政府の補助政策が更に必要になると思われます。
目先の好材料
①バイデン政権の財政支出法案の成立
②好調な企業決算
③堅調推移する景気指標
④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ
懸念材料は
①コロナ感染拡大が再び加速
②米中緊張激化
③米経済対策法案成立遅れ
④短期的過熱感の解消の為の調整売り
⑤民主党の増税政策や金融規制強化
⑥米国長期金利の急騰
その他
米国のインフレ、デフレに対する見方、そこから考えられる投資についてコメントします。
※現在の米国のインフレに対する見方はまとまっていない
債券市場の関係者はデフレ派が多く、株式市場の関係者はインフレ派が多い印象
安定的に資産を成長させるには商品・方針の分散が重要
インフレに対する議論がとても増えていますが、将来の見通しは割れております。
インフレ派は
①金融緩和政策によるマネーの供給過剰の反動
②世界中で国債や社債が大量に発行されており、返済不可能な水準からインフレが引き起こされるリスク
③米中の対立が世界的な商品の需給バランスを崩し、インフレ要因となる
等の意見が多く見られます。
一方でデフレ派は、
①今はモノの価格は上昇しているが、サービスの価格はパンデミック前に比べるとむしろ低く、インフレとはほど遠い状況
②モノのインフレも中古車や半導体等需給バランスが一時的に崩れた影響なので時間がたてば落ち着く
③米国のインフレ率は上昇しているが、他の先進国は低い水準
④IT等の技術革新により価格が下落する傾向は続く
等の意見が良く出てきます。
どちらの意見も根拠があり、それぞれ説得力があります。ニュースや新聞ではそれぞれの意見の人がバラバラに話すので混乱します。
色々な人との話しや、レポートからは、それぞれメインとしている「市場」によって意見が違う傾向がある様に感じます。
債券市場の関係者はデフレ継続派が多く、株式市場の関係者はインフレ懸念派が多い印象です。
扱う商品の特性も影響しているように思います、債券は利率や満期が決まっているのが一般的な金融商品で、変化を好みません。
株式は企業の成長期待に投資を行うので変化こそ成長要因です。つまり、真逆の金融商品です。
ここ40年近く日米欧の国債金利は低下傾向です、変化を好まない側から見ると「現状は続く」解釈を行いたがります。
変化を好む側は「これ以上金利は下がらない、大転換する」と解釈したがります。
特に今回は新型コロナという世界に大惨事をもたらしたパンデミックや、米中冷戦という政治的に新しい局面が来ているので特に強調されます。
では、この状況下で投資家はどうするのが適切かというと、やや普通の回答になりますが「株式も債券も両方保有するポートフォリオ運用が最も有効」
となります。どのような局面でも企業業績を伸ばしてきた企業の株価は上昇してきていますし、実績を上げている投資信託も数多くあります。
また、債券も水準が低いとはいえ、米国だと2~4%程度の利回りで運用ができ、利息収入の積み上がりは時間の経過とともに大きな財産となります。
分散投資で代表格は公的年金の運用を行うGPIFです、200兆円近い運用財産で、2020年度は37.8兆円の利益です。
運用スタイルは海外株25%、日本株25%、外国債25%、国内債25%のポートフォリオ運用で、外国株式は59.42%、国内株式41.55%、外国債券7.06%、国内債券マイナス0.68%でした。
運用リスクを嫌い債券のみではこのようなパフォーマンスは無かったし、今後株価下落局面では債券の価格上昇や利息収入が株式の下落分をカバーするでしょう。
一番まずいのが誰か一人の意見、一つの方針に全てをかけてしまう事です、成功すれば良いですが、失敗すると時間の空費、最悪回復不能になります。
100%当たる人や方針などこの世に存在しません。
資金を短期間で大きく増やすなら集中投資は有効ですが、失敗するリスクも大きいです。
財産を安定的に長期に渡り継続して増やすためには商品・方針の分散が重要だと考えます。
経済イベント(抜粋)
6月29日 米4月住宅価格指数
米連邦住宅金融局(FHFA)発表、4月住宅価格指数 結果:プラス15.7%(前年同月比、3月はプラス14.0%)
1991年の統計開始以来の最高を記録しました。
住宅バブルのあった2005年はプラス10%程度だったので、これを上回る水準です。
S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが同日発表した「S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)」もプラス14.6%(前年同月比)で、これも過去最高の伸び率でした。
住宅ローンの利息の低下により、需要が旺盛なのと、木材不足高騰が影響して価格が上昇しています。
FRBは住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れを毎月400億ドル継続していますが、緩和策縮小議論の材料になりそうです。
6月29日 米国6月消費者信頼感指数
コンファレンスボード社発表 結果:127.3(予想119、前月分も速報117.2→120へ上方修正)
アンケートの内容から見えるのが、ワクチン接種の広がりにより、人々の消費意欲が向上している姿です。
コンファレンスボードの景気指数担当シニアディレクター、リン・フランコ氏は、「短期のインフレ期待は上昇したが、消費者信頼感や購入計画にほとんど影響していない」と発表文で指摘しています。
住宅については、年初から見ると購入予定があると答えた人の割合は低下しています、価格の高騰が影響しているとみられます。
仕事が豊富にあるとの回答比率は54.4%で21年ぶりの水準で、景況感の改善を示しています。
6月30日 5月中古住宅販売成約指数 全米不動産業者協会(NAR)発表 プラス8.0%(前月比、予想はマイナス1%)
2020年6月以来、約1年ぶりの高い上昇率でした。
前年同月比ではプラス13.9%で前月の過去最高の伸び率のプラス53.7%からは鈍化しました。
この指数は、売買契約が成立し、引き渡しが完了していない物件を指数化したもので、中古住宅販売に1~2ヵ月先行すると言われております。
価格が上昇していても需要が強い原因が住宅ローンの金利が3%を下回る水準まで低下したことです。
日本だと0.5%程度まで下落しており、3%の住宅ローンはとても高い印象ですが、米国内においては過去最低の水準です。とはいえ、価格の急激すぎる上昇には警戒が必要とも言えます。
6月30日 6月ADP米民間雇用者数 結果プラス69.2万人(前月比、予想60万人)
大きかったのがサービス部門で62.4万人増加です、半数以上が娯楽・ホスピタリティ分野です。2日発表の雇用統計とずれる事が何かと最近多い指数ですが、従業員数500人以上の企業で24万人、小規模企業で21.5万人増えているとの報告なので、雇用が回復している事の確認は取れます。
7月1日ISM製造業総合景況指数 米供給管理協会(ISM)発表 結果 60.6(予想60.9 分岐点は50)
数字は好調ですが、懸念もあります、仕入れ価格指数が92.1と約42年ぶりの高水準でこれはイラン革命やオイルショック時と同じ水準です、一時的と言われておりますが、需給バランスが大きく崩れております。
もう一つは雇用です、本日発表の中の雇用指数は49.9で分岐点ギリギリです、採用したいがなかなか人が来ない状況は改善されていないようです。
現状はとても好調、しかし物不足、人不足は懸念されるところです。
7月1日 米4―6月自動車販売台数
前年同期から大幅に増加です、アナリスト集計によると440万台程度で前年同期比プラス51%です。
確認できたところでは、GMが前年同期比プラス40%、68万8236台、トヨタがプラス73%で68万8813台と僅差で首位、日産がプラス68%で29万8148台等です。
7月1日 新規失業保険申請件数(6月20日~6月26日) 労働省発表 結果36.4万件(予想38.8万件)
新型コロナウイルス禍に伴う制限措置が導入された昨年3月以降で最低です。
継続受給件数(6月13日~19日)は346.9万件(プラス5.6万件)
失業手当についてですが、アイオワ州やミシシッピ州など12州で失業給付を週300ドル加算する特例措置がすでに打ち切られているようです。また、テキサス州やジョージア州など他の13州でも6月26日~7月10日にかけて同様に打ち切られるとのことです。
よって今後打ち切りを受けて人々の行動がどの様に変化するか注目です。
7月1日 中国 共産党創立100周年祝賀行事
中国としては東京オリンピックと比べて人々が大勢並ぶ姿を世界に見せ、コロナ克服をアピールする狙いがあったと思われます。
軍事パレードを無くすなど米国に一定の配慮を見せてはいますが、米中冷戦を象徴するイベントでした。
7月2日 米国 6月雇用統計 労働省発表:非農業分野85万人増加(前月比、予想70万人)
債券市場は予想を上回る数字であれば金利上昇と反応しそうなものですが、同時に発表となった失業率が前月比でプラス0.1%の5.9%であったため、雇用状況のひっ迫が起こっている訳では無いとし、国債利回りの低下を招きました。今後も雇用に関するデータは金利に密接に関わってくるので注目です。
決算発表(抜粋)
6月30日発表 ニトリ 第一四半期 売上高2154億円(前年同期比プラス24.0%)、営業利益427億円(同プラス15.0%)、経常利益434億円(同プラス16.3%)、純利益291億円(同プラス14.1%)
ニトリ事業では、家具・ホームファッション商品が好調に推移、EC事業の売上高も195億円(前年同期比プラス15.9%)。アプリ会員数は1005万人を突破、目標は25年までに2500万人。
子会社化した島忠事業もホームセンター商材の園芸用品やグリーンなどが好調に推移しており、巨大企業ながら成長する姿が確認できます。