著者紹介
坂本彰さん
株式会社リーブル代表取締役
2009年130万円だった株式資産が2017年10月に9000万円突破、金融資産1億円を超える。2012年、投資助言・代理を取得。
現在会員向け情報サービスを行いつつブログや執筆活動も行う。
全体の構成
高配当株投資術を実践した人々の声
はじめに
第1章 60歳から着実に資産をつくるために知っておくべき5つの考え方
第2章 60歳からの投資生活に欠かせない8つのこと
第3章 60歳からの「高配当」投資術~有望銘柄の見極め方~
第4章 60歳以降の投資でやってはいけないこと~買ってはいけない投資信託&株~
第5章 10年で資産を2倍にするためにすべきこと
~まずは10万円からスタートでいい~
特典 高配当株有望銘柄リスト14
おわりに
です。
各パートの要点
高配当株投資術を実践した人々の声
最初に4名の坂本さんの投資術を実際に実施して利益を得た方々の声が紹介されています。
大きい方は1000万円以上利益を上げたそうです。
はじめに
2017年11月にかかれています。年金以外に100万円が得られる生活を実現しよう。
それには今後日本企業は配当に回す資金を増やす可能性があるので配当株投資は有望。
日本企業の配当は2009年度には6兆円程度まで落ち込んでいたのが2017年度は12.4兆円に達する見込み。
高配当株の明確な定義はないが、著者は3%以上と定義。
第1章 60歳から着実に資産をつくるために知っておくべき5つの考え方
1「リスク」の先に「安定」がある
◎投資で「損」をしない考え方を身につければいい
株式はリスク商品なので損をしないことはありえないが、やり方さえ間違えなければ、大きな損をすることなく着実に資産を増やせる。
◎「投資にはリスクがある」ことを常に頭に置く。
成功体験を積むことで恐怖を克服できる。
◎心の安定を優先させる
時にはストレスが大きくなって冷静な判断ができないときは思い切って縮小するのも方法の一つ。
◎「日々の株価変動」ではなく「企業価値」をみる
株価に一喜一憂だけだと心が疲れ果ててしまう。
◎3回以上に分割して投資をする
一度に買わないこと、下がった時に買う資金があれば下落はピンチからチャンスに変わる
2 自分で考える感覚を身に着けることでチャンスに出会える
他より教えてもらう情報より、自分で分析するほうがプラス材料を見つけやすい。
3 人の経験を自分の糧にする
投資において失敗はつきもの、ただ、本当に失敗してはお金が無くなる。
先人の成功した経験を学び、学習し、合うやり方を見つけることで損を最小限に抑えつつ経験を重ねることができる。
4 何もしないと資産は減ってゆくだけ
老後に必要な資金は3000万円程度と見込まれる。
金利がつかないまま消費すれば不足は目に見えている。
投資信託は銘柄数が約6000と株式の数より多いので選ぶのが大変。
株式投資のほうが良いと思われる。
5 株式投資が「最強の運用先」である7つの理由
資産家ほど株式投資を行う比率が高い
理由
①税金が安い 20.315%のみ、所得税は最高税率55%
②キャピタルゲインとインカムゲイン
株式の値上がり益をキャピタルゲイン、配当や利息収入をインカムゲインと呼ぶ
ためたお金を働かせることができるメリットがある。
③限界がない 株式投資で1億円を超えている人のうち24%が年収100-500万円の人というデータもある。得られる金額に上限がない。
④小資本でスタートできる 金額は自分で決められるメリットがある
⑤大金持ちのほとんどはビジネスオーナー
億万長者ランキングには上場会社のオーナーが並ぶが、それらの人は自分の資産を減らすような策をとることはないので株を保有するだけで自然と増える人々。
⑥株式を保有することで、間接的に人も会社も土地も所有できる
フランスの経済学者、トマ・ピケティのr>gを上げている
rとは株式や不動産などから得られる収益の利益率
gとは労働から得られる所得の伸び率
日本を見てみると明らかで、年間賃金を2%伸ばすだけでもやっとの状況、しかし、株式の配当は3%を超える会社がたくさんある。これを活用しない手はない。
会社の使用者から所有者になることで実現できる。
⑦働かなくても資産が増える
ビル・ゲイツの例を挙げ、引退後もマイクロソフトの企業価値が上がることで自動的に資産が増えてゆくことを解説している。
第2章 60歳からの投資生活に欠かせない8つのこと
1 「60歳以降」は株式投資に適している
研究時間がゆっくりとれる有利さがある。
2 株式投資性向日必要な3つのステップ
Ⅰ「投資用語」や「基本的なルール」を覚える
Ⅱ「運用法」を学ぶ
Ⅲ「投資先」を選ぶ
いきなりⅢに行って失敗する人が多い、成功者のノウハウを学ぶために書籍を読み込んだり、(7冊本書では紹介されています)図書館に通うこと。
日経マネーなどもおすすめ
3投資に役立つ「日経新聞」の読み方
特にA売上高B利益に関するニュースは株式に直結するので熟読すること。
4東京と大阪のみだが、「証券図書館」があり、さまざまな専門誌が置かれている。
活用すべし。
5「個人投資家向け会社説明会」で将来性を見極める
6IRイベントは有望株の宝庫
5.6の注意点としては株を購入してもらいたい企業側は悪いことは言わない。
ただ、実際に企業担当者のプレゼンを聞けることや、商品などについて詳しく知ることで将来性が判断できるのが大きなメリット。
業績に関しては自分でチェックしたほうがいい。
7 効率よく高レベルの投資家を目指す
最低限やったほうがいいこと
日経新聞チェック
図書館に行く
業績の変化を探す
8「年の功」は大きなアドバンテージ
過去の経験を活かせるのが株式投資。バブル期やその後の景気がどうなったかの記憶があるので今に生かせる。
株式のサイクルは上昇5-8年、下落1-2年が多いが下落のスピードは速いので注意。
第3章 60歳からの「高配当」投資術~有望銘柄の見極め方~
これからは配当株投資が有利な時代が来ると思われる。
理由は、企業が高度経済成長期を経て、成熟期に差し掛かっている。
株価下落を防止するためには「自社株買い」「増配」「優待の増加」など株主還元に積極的になることが予想される。
高配当株(3%以上)ともなると、配当利回りが高いことが株価下落のブレーキになってくれることも期待できる。
また、増配による株価上昇効果も見込める。
個人投資家にとっては優待も大きな魅力の一つ、配当と優待を金券に換算した利回りで考えると6%を超えるものもある。(複数銘柄紹介されています)
◎J-REIT(不動産投資信託)と組み合わせて盤石にする
不動産投信は不動産物件を多数保有している会社の株式の性格の商品。
不動産オーナーになり、高い配当利回りを得ることができる。
また、実際の賃貸経営と違って家賃回収や納税の手間もない、分散投資もでき、上場されているので換金性も高い。
◎高配当株投資で着目すべきは「1株利益」の推移
1株利益が年々増加している企業は経営がコツコツとできている会社だと見ることができ、安心感がある。
1株利益が伸びると株価の上昇も伴う。
会社四季報でコメントも見ると尚よい、見出しが良い記事だと今後も期待できる。
◎「連続増配」の可能性を見極める
ポイントはキャッシュリッチ企業
四季報の「利益剰余金と有利子負債」つみあがった資金を効率的に使えていない企業は今後、株主還元策を強化する可能性がある。
●高配当株発掘戦略 買いのタイミングを見誤らない
ここのパートだけ少しだけ毛色が違います。
高配当株の基本戦略は長期保有で配当を受け取ることがメインの目的です。
著者は売却益よりも配当や優待を重視しており、5年、場合によっては10年保有も基本としています。
1株利益が成長している会社は数倍になることもあり、売買益を目的とした短期投資はあまり考えていません。
しかし、一部このような戦略もありではないかということで書いてます。
1 株価が10倍、100倍になる株には共通項がある。
日経マネー(2017年6月号)に「見つけた!大化け株の法則」では過去の10倍株を抽出して以下の傾向を出しています。
Ⅰ 業種はサービス業が多く、なかでもIT、ネット系、人材関連
Ⅱ 最安値の時価総額は100億円以下が全体の8割
Ⅲ 上場市場はJASDAQが35%と最も多い
買いタイミング① 時価総額
トヨタのように20兆円を超える時価総額の株が倍になるのは大変だが、100億円程度の時価総額の会社ならば動きやすい。
買いタイミング② 知名度向上
MCJ(6670)を例に挙げて、2016年からテレビCMを始め、知名度向上が株価きっかけになった例を取り上げています。
買いタイミング③ 経営回復株
任天堂(7974)が2012年に購入後、3期連続赤字を記録し、我慢を続けたうえで2015年以降の業績回復で利益を得た例が紹介されています。
ただ、経営回復株は赤字の途中に投資をするのではなく、黒字転換のタイミングで投資をするほうがいい、必ずしも好転するわけではないので保有期間の上限を設けたり、少額から投資するほうがよいとしています。
第4章 60歳以降の投資でやってはいけないこと~買ってはいけない投資信託&株~
やってはいけない投資の代表格
投資信託につぎ込んでしまうこと
理由
①顧客本位といえない商品が売られていること
②米国と比べて日本が手数料が高すぎるため
ファンドラップは買ってはいけない
投資信託をラップ口座が選んでくれる仕組みのため、ラップ口座の維持費用と投資信託の信託報酬がダブルでかかってくる毎年2-3%が引かれてしまう。
1000万円投資なら毎年20-30万円、5年で100-150万円、10年で200-300万円の手数料を取られる商品、避けるべき。
買ってはいけない株
①何かの材料をきっかけに動く株(材料株)ブームが過ぎると悲惨なことになることが多い。
②景気や市況に株価が大きく左右されてしまう株(景気循環株)
紙・パルプ、化学、鉄鋼などの素材産業、自動車、機械、電気機器、建設業等。
好景気と不景気で有名大企業の株であっても数倍に株価が平気で動いてしまう。
③高すぎるPERの会社
1株利益の何倍まで買われているかを示す指標であるPERが上場企業の平均が15倍であるにも関わらず、40倍以上にもなっている場合は投資対象から外したほうがよい。
④本業がいくつもある会社
例として富士フイルム(4901)を挙げており、傘下のゼロックスのオーストラリアの不適切会計で株価が影響を受けたことや、船井電気(6839)の米子会社の税金未払い問題などを挙げ、暗い材料が株価下落のきっかけになってしまうので、事業を本業一本にしている会社のほうが安心だと書かれてます。
また、最後に、すでに書かれているような投資信託、株式を保有している場合は一部でもいいから売却して損切りも視野に入れて行動しましょうと締めくくっています。
第5章 10年で資産を2倍にするためにすべきこと
~まずは10万円からスタートでいい~
配当利回り3%の株を60歳で取得して増配も減配もない場合、30%の配当を受け取れます。
株価も5年や10年というスパンであれば1.5倍や2倍になることもあり得ます。
まずは10万円でもいいので少額から初めて感覚をつかむことが重要であると訴えてます。
◎複利の力を最大限に活用する
配当利回りを重視すること 3%以上の株を狙うこと
配当と年間の株価上昇を合わせて6%とすると、10年で複利だと1.79倍になる。
長期運用すればするほど資産拡大スピードは加速します。
とはいっても株価は動くので6%に固執はダメとも書かれてます。
◎J-REITにおける目標の立て方
分配金利回りを4-5%、株価上昇率を1-2%という目標で設定。
◎60歳を過ぎているからこその注意点
「20%以上下落で損切り」とか、「3回以上に分けて購入」等ルールを決めて実行するべき。
◎株式投資は結果ばかりを重視してしまうと損するときの心理的負担も大きいもの、過程を楽しむくらいの余裕をもって取り組んだほうがよい。
◎投資を道楽化させるコツ
1 新しい有望株の発掘、探求を常に続けること
2 退職後の趣味やライフスタイルに、株主優待や配当金をリンクさせること
特典 高配当株有望銘柄リスト14
このパートは本を購入なさった方限定の特典なのでここでは割愛いたします。
おわりに
生涯を通じてお金を得ようと思ったら「知力」と「体力」しか使えるものはない。
体力に限界がある以上、60歳を過ぎたら知力を生かしてお金を得ることに頭を切り替えるべき、そのためにも証券口座を開いて株式投資を実行するほうがよいと著者の思いが書かれています。
感想
投資に取り組むにあたって共感できたポイントがいくつかありました。
株式投資性向日必要な3つのステップ
Ⅰ「投資用語」や「基本的なルール」を覚える
Ⅱ「運用法」を学ぶ
Ⅲ「投資先」を選ぶ
いきなりⅢに行って失敗する人が多い、成功者のノウハウを学ぶために書籍を読み込んだり、(7冊本書では紹介されています)図書館に通うこと。
の箇所は私もまったく同感です。坂本さんのように成功なさっている方の書籍は町にあふれています。まずはいろいろなスタイルの本を本で見て、自分に合っているスタイルを見つけ出すことから始めることだと思います。
免許取り立てでいきなりフェラーリの運転をする人がいないのと同じで株式投資を何も知らないで飛び込むリスクを冒す必要はないと思います。
この本で著者が強調したい箇所は以下の箇所だと思いました。
配当利回り3%の株を60歳で取得して増配も減配もない場合、10年で30%の配当を受け取れます。
株式の上昇率目標を年間で3%程度、J-REITの場合は分配利回り4-5%程度で上昇率の目標は1%程度としていて、株価の値上がりはある程度無視しています。
あくまで配当を重視しているところなので投資家からみると非常にシンプルです。
また、購入すべき株の目安もシンプルです
◎高配当株投資で着目すべきは「1株利益」の推移
1株利益が年々増加している企業は経営がコツコツとできている会社だと見ることができ、安心感がある。
1株利益が伸びると株価の上昇も伴う。
と書かれております。
全体を通してみると、キャピタルゲインを狙って大化け株を探そうという視点はなく、退職金をどのように運用すればいいか困っている人に対して、ゆっくりと勉強しながら、分割購入、分散投資により、じっくりと配当をとれる株式を長期で持つことを進めている書籍です。
最後のパートで投資信託やファンドラップもこともまったく同感です。
配当利回り3%の株式を高配当株と定義しているわけで、それと同額の管理手数料を取るということは投資家からみると暴利に思えます。
近寄ってはいけない投資だと思います。