2021年6月28日週刊相場メモ

債券・金利

※将来の緩和縮小と利上げ実施をマーケットに認識させながら落ち着いた状態を維持する事にFRBが成功しつつある印象です。

利回り水準の絶対値が低く、投資マネーがあふれている現状では、利回りの取れる投資先に資金が流れ込む状況は簡単には変わらないでしょう。

引き続き満期やコール迄の期間を10年未満に抑えて、ハイイールド債、COCO債、米銀優先株式預託証券等を中心に慎重に銘柄選びを進める事が重要だと考えております。

6月18日に1.44%で終了した米国10年債利回りですが、特に大きな変化がなく1.52%で終了です。

22日にパウエル議長が下院で証言を行い、労働市場の回復に配慮し、インフレ抑制のみでの利上げをしないと発言、

インフレ率についても2021年はコア指数が3%程度まで上昇し、2022年は2%程度に落ち着く見通しを示し、足下のインフレ率の高まりを気にしない姿勢を改めて示しました。

23日にはアトランタ連銀のボスティック総裁がラジオのインタビューで

「米国の高いインフレは数か月続く可能性があるが、新型コロナウイルスで失われた750万人の雇用を取り戻すために性急な利上げをするべきではない」

と前週のセントルイス連銀のブラード総裁とは逆のハト派発言を行いました。(アトランタ連銀は2021年のFOMC投票権保有者です)

物価については25日の米5月個人消費支出(PCE)物価指数が前年同月比プラス3.9%と12年ぶりの強烈な上昇でしたが、マーケットの反応は薄く、パウエル議長の考えが浸透してきた印象です。

FRBは債券・株式市場に極端な変動をもたらす刺激を回避しつつ、2022年には緩和の縮小、利上げも2023年ごろには行いたい難題にチャレンジ中です。

市場が楽観的になればタカ派理事が引き締め発言、警戒しすぎるとハト派理事がなだめる発言を続け、時間をかけて市場に浸透を試みると思われます。

為替

※小動きの一週間でした、日米の中央銀行の政策に変化がない事や金利差が開いていることから今後も円安傾向かと思われます。

イギリスの中央銀行のイングランド銀行が2021年のGDP成長率予想を5%から7.5%に上方修正しました。経済回復期待の高まりはポンドにとってプラスとみられます。

6月24日にイギリスのイングランド銀行は22日から開いている金融政策委員会(MPC)の結果を公表しました。

インフレ率が5月に2.1%に達し、政策変更があるかどうかに注目がされておりましたが、政策金利0.1%、債券購入プログラム8950億ポンド目標をそれぞれ据置、現状の緩和策を秋口位迄は少なくとも維持することを確認するなど変化はありませんでした。

2021年のGDP成長率は2月の段階では5%予想としていましたが、今回7.5%予想に変更しました、ワクチン接種の進展により経済回復期待が強まっております。

インフレ率は2021年には3%に達したのちに2022年に2%に落ち着く予想としており、米FRBと似たような予想を取っております。

経済の回復が加速している事は英ポンドにとって好材料です、年初から対円でも上昇しておりますが、今後も安定した動きを期待できるでしょう。

株式

※週初は大きく下げたものの週末にかけて上昇して日米ともに結局18日に比べて上昇して終わりました。

マイクロソフトが時価総額2兆ドルを超えるなど強い企業に資金が集まる構図に変化は無さそうです。

バイデン大統領と超党派議員団が1.2兆ドルのインフラ投資策で合意しましたが、実際の成立や、今後の他法案成立には紆余曲折が予想され、まだ成立には時間がかかりそうです。

前週はFRBのFOMCの影響で上下が激しく、18日にNYダウが500ドル以上下げ、日経平均も21日にマイナス954円と暗いスタートでしたが、25日の日経平均は29066.18円で18日比プラス102.1円、0.4%上昇、米S&P500は4280.7(プラス114.25、2.7%上昇)、NYダウは34433.84ドル(プラス1143.76ドル、3.4%上昇)、NASDAQは14360.39(プラス330.41、2.4%上昇)と結局何も起こらなかったかの動きです。

今後も緩和縮小や利上げの話は沢山出てきますが、FRBは株価を下げたいわけではありません。

緩和の縮小や利上げの実施は経済回復の証拠でもあり、短期間ではかく乱要因ですが、長期的には過度に心配する必要は無いと思われます。

24日にはマイクロソフトの時価総額がアップルに続いて2社目となる2兆ドルを超えました、今後も強い会社は引き続き強い傾向が続くとみています。

今まで相場けん引役で暫く停滞していた感のある新興企業のオクタ、ドキュサイン、エヌビディア、ショッピファイ、クラウドストライク等のネットやそれらを支える企業の株価の復活の兆しも見られ、引き続き成長企業に資金が巡る動きが続きそうです。

米国は24日に目先の好材料①と懸念材料③⑤に該当する話が出てきました。

好材料①関連では、バイデン大統領と上院の超党派議員団(民主10人、共和11人)が8年間で1兆2090億ドル(約130兆円)のインフラ投資策で合意したことです。

一方で懸念材料⑤では、この財源が、徴税強化、新型コロナウイルス経済対策予算の転用、戦略石油備蓄の一部売却とされており、法人税や富裕層増税は共和党の反対を受け、見送ったことです。

今後も増税の話が出てくる可能性が残ってしまいました。

また、懸念材料③では、本来は2兆ドルを超え、国民への住宅支援、福祉政策予算も目玉だったのですが、これは今法案からは削除、別法案で成立を目指す事になったことです。

このやり方に民主党内で反対する勢力もおり、共和党との妥協を図るための今回の措置自体が民主党内で支持されるか予断を許しません。

また、今回別法案で通そうとする住宅支援、福祉予算は1.8兆ドルの巨額予算になりそうです。次は財源として増税策も必要になるので共和党の反対は必至です。

民主党側は上院が過半数で予算を通過できる(本来は60/100必要)「財政調整措置」を使って次の法案を通すことも検討しているようです。

ただ、余りこういう行動が目立ちすぎると、今回の合意したインフラ投資についても共和党が反発するリスクも残っており、成立が政治闘争によって遅れるリスクが残ります。

24日のマーケットでは大統領と超党派議員団の合意を交換してNYダウが322ドル高となりましたが、成立には紆余曲折ありそうです。

目先の好材料

①バイデン政権の財政支出法案の成立

②好調な企業決算

③堅調推移する景気指標

④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ

懸念材料は

①コロナ感染拡大が再び加速

②米中緊張激化

③米経済対策法案成立遅れ

④短期的過熱感の解消の為の調整売り

⑤民主党の増税政策や金融規制強化

⑥米国長期金利の急騰

ここに変化は無く、今後も繰り返しこれらの材料が出たり消えたりする事を継続しながら最後は企業業績とFRBや政府の政策により株価は堅調に推移すると見ております。

その他

※中国に関して、16日公表の各指標が軒並み事前予想を下回ったため、景気減速懸念が言われていますが分析しました。

結論は、内容は悪く無く、一時的調整と言え、引き続き中国景気は明るいと言えます。

16日の中国国家統計局公表の、小売売上高、鉱工業生産、固定資産投資の5月分のデータは全て事前予想を下回りました。

内容は以下の通りです。

小売売上高-前年同月比プラス12.4%(予想プラス14.0%、前月はプラス17.7%)

鉱工業生産-同プラス8.8%(予想プラス9.2%、前月はプラス9.8%)

固定資産投資、年初来前年比プラス15.4%(予想プラス17.0%、前月プラス19.9%)

米国と対立が激化しているので、日本からだと特にマイナスのバイアスが報道にもかかりがちですが悲観する必要はなく、短期的な調整局面と割り切って良いと考えられます。

というのが、それぞれ各項目を見ていくと理由が見えてきます。

まず、固定資産投資の予想を下回った原因は当局の不動産投機の抑制策の効果と思われます。

不動産投資とインフラ投資が減速しました。

しかし、製造業関連の投資は5月がプラス20.4%と非常に元気です。

鉱工業生産も諸外国の正常化の過程で輸出が多い品目の変化が出はじめており、対応を行う過程で落ち込む産品も出ており、その影響が考えられます(例えばマスクが減る等です)。

また、中国南部の港湾都市で新型コロナの感染が拡大し供給が滞ったこと等も考えられますが、これも短期的な問題とみて良いでしょう。

小売売上高についても、公表されている数字は名目値で前年比較を行っており、スイスピクテ社の調べによると、コロナ前の19年を基準に、インフレの影響を除いた実質ベースで見ると4月から5月にかけてはむしろ改善傾向とのことで、実質は減速していないようです。

よって中国の景気は、諸外国の正常化が落ち着き、不動産投機の抑制策が一巡すれば再び成長軌道に乗るとみて良いと考えております。

経済イベント(抜粋)

6月22日 5月米中古住宅販売件数 全米不動産業者協会(NAR)発表:580万件(前月比マイナス0.9%、予想573万件)

6月23日 5月米新築住宅販売件数 商務省発表:76.9万件(前月比マイナス5.9%季節調整済み、予想は86.5万件)2ヵ月連続減少

米国は住宅の需要は強いのですが、ウッドショック等材料不足からくる住宅建築コストの高騰があり、買い手が引っ込んでしまう状況です。

新築住宅の在庫は5.1か月となり、1年ぶりに引き締まりのラインの5か月を上回りましたが、中古は2.5か月でまだまだ在庫が不足しています。

今後も好調を維持するためには価格の安定が必要です。

6月23日 1~3月期の米経常収支 商務省発表:1957億3900万ドル(約21兆7000億円)赤字(前期比プラス11.8%)

赤字額は2007年1~3月期以来14年ぶりの大きさです。

経常赤字がGDPに占める割合も3.6%で2008年10~12月期以来の高さです。(前期は3.3%)

景気回復に伴う米国内の消費拡大で輸入が増え、海外はまだ回復途上の国が多いため輸出が伸びてない事が主要因です。

モノの貿易赤字が過去最高の2684億5700万ドルに達しています。

他方、直接投資、証券投資などの対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す一時所得は502.84億ドルの黒字(前期比マイナス7.3%)でした。

6月23日 米1~3月GDP確定値 商務省発表:前期比プラス6.4%(速報値と変更なし、予想プラス6.4%)

6月23日 米1~3月個人消費確定値 商務省発表:前期比プラス11.4%(速報値と変更なし、予想プラス11.4%)

6月24日 米新規失業保険申請件数6月13日~19日分 労働省発表:41.1万件(予想38万件、前回分は41.2万件から41.8万件に修正)

6月24日 米失業保険継続受給者数6月13日~19日分 労働省発表:339万件(予想346万件、前回分は351.8万件)

雇用に関する指標の捉え方が各社コメントを見るとマチマチでした、新規失業保険申請件数が予想より悪かった事をドル安要因だとする記事、失業保険継続受給者数が予想以上に減ったことを好感して株が上昇したとする記事等色々です。

週間の動きなので今後も変動は大きいと思いますが、ワクチン接種の広がりで、求職活動を再開して、失業保険を新たに申請してきた人が出て新規失業保険申請件数が増え、

既に職探し中の人は、給付金の上乗せを打ち切る動きが州によって広がってきているので諦めて職に就いたので継続受給者数は減ってきたという解釈かと思います。米経済は着実に回復しているとみてよいと思います。

6月25日 米5月個人消費支出(PCE)物価指数

前年同月比プラス3.9%(2008年8月のプラス4%以来の大幅な伸び、予想プラス3.9%、4月はプラス3.6%)

前月比較ではプラス0.4%(予想プラス0.4%、4月は3月比較でプラス0.6%)

相変わらず高水準の物価上昇ですが、予想通りな為余り材料視されませんでした。

パウエル議長の一時的だという発言の浸透、材料として慣れてきたことが考えられます。