2021年1月11日 週間相場メモ

債券・金利

新年最初のコメントになります、今年もよろしくお願いします。

さて、新年は予定されていたとはいえ沢山のニュースが飛び出した1週間でした。

まず、5日には米国で上院選挙がジョージア州で行われ、民主党が2議席を制し、これで上院100議席中50議席と拮抗しました。上院は副大統領が投票数同数の場合決定権を持つため事実上民主党の過半数となりました。

事前ではこれで大統領・上院・下院を全て民主党が制するトリプルブルー(民主党のカラーが青色から言われています)となると、民主党提案の大規模な財政出動が議会を通り、支出を賄うために大規模な国債発行が行われ、結果国債利回りが上昇(債券価格は低下)すると予想されていました。

選挙後、国債利回りは上昇し、米国10年債利回りは2020年3月以来の1%超えとなりました。

昨年外資系証券会社が2021年は年末に1.4~1.5%程度の予想とお伝えしましたが、やや上昇ペースは速いです。

ではこのまま米国国債利回りは上昇し続けるのかというとそうとも言えないと思われます。

8日に発表の12月の米国非農業部門雇用者数は-14万人と、事前予想の+5万人を大幅に下回りました。

11月は24.5万人の増加ですので大幅な減速です。

12月21日のメモでは米FRBが目指す完全雇用まで失業者は1000万人程度いて、11月の24.5万人増加ペースで3年はかかると書きました。それが減少となると雇用回復のシナリオが変わってきます。雇用と物価の安定を掲げるFRBはこの状況下で簡単に金融状態を引き締めてしまう金利上昇を容認するとは思えません。

米国の金融機関からは2021年は国債利回り上昇で10年国債利回りは年末1.5%と予想がありますが、全く違う予想を出しているのがスイスの金融機関ピクテです。

米国は日銀と同様のイールドカーブコントロール政策を導入すると予想しています。この政策は中央銀行が国債を大規模に買い入れて国債利回りを強制的に低い水準に押さえつける政策です。この政策は米国の国債利回りが1%を超えだすと発動される可能性が出てきて、1%に利回りを固定する可能性があるとしています。

実体経済の回復がしっかり見通せるまで一本調子の金利上昇は早い様に思えます。

為替

米ドルは一時102円台に突入しましたが、米国債利回りの上昇に伴い、円安になり、結局103円87銭と年末水準より若干の円安で終わりました。

また、豪ドルが80円台を回復しました、鉄鉱石価格の上昇が原因と言われています。

現在中国とオーストラリアは政治的に険悪で豪州産ワインに高関税をかけたり、石炭を輸入停止にしたりしています。ただ、経済を回すために中国国内では公共事業を行っており、建設資材としての鉄鉱石は必要で、オーストラリアからは積極的に買っています。必要なものは買うという事です。

よって2020年前半に1トンが80米ドル後半だった鉄鉱石価格は年末が近づくにつれ上昇し、12月21日には174米ドルまで上昇、2011年以来の高水準になっております。(この年は188米ドルまで上昇、後、2015年1月に70米ドル程度まで下落しています)

鉄鉱石価格の予想ですが豪州政府側は財務省の中期経済財政見通しで21年9月末までに55米ドルまで下落する予想を出しています。中国の需要は長くは続かないという予想です。

一方で豪州大手銀ウエストパック銀行は今後2年間に渡り100米ドルを超える予想です、21年6月で126米ドル、9月でも120米ドルを維持すると見ています。

豪州の経済や為替にとって中国の公共事業の動向、鉄鉱石の価格の推移はとても影響が大きいので今後も推移を見ていく必要があります。

株式

5日のジョージア州での上院選挙は、事前では民主党が制すると公共事業の財源として大規模な増税策が実施される懸念から株価は下落すると言われていたのに反して上昇しました。

後付けの理由のような気もしますが、

上院で例え拮抗し、副大統領含めると議会を制したと言っても1議席でも落とすと主導権を握れないこと、また、上院では討議打ち切りの動議を全体の3/5(60議席)の賛成をもって通しておかないと野党の議事妨害を阻止できず、最終評決にも進めないというルールがあり、つまり、今までとあまり変わらないので増税は厳しく、引き続き株高という反応となっています。

やや良いとこ取り感があるので目先の乱高下には警戒が必要かもしれません。

債券マーケットは大規模な公共事業を見込んで国債が売られて金利が上昇している一方で株式市場は増税が厳しいと見込んで株価が上昇しています。

増税が厳しくて公共事業が簡単ということは無いのでどちらかのマーケットが間違えている可能性も考えないといけないと思います。

ただ、言えることは、経済環境は相変わらずコロナの影響で悪い事、支える為に金融政策がエンジン全開なこと、財政政策は規模が議会との関係もあり不透明ですが追加は出てくる可能性は高いので株式市場にとってはポジティブな状態です。

ただ、株価水準は高いので変動は激しいと思われます。

引き続き資金と気持ちに余裕をもって将来が見込める銘柄を分散投資、長期投資でじっくり取り組むことが良いと思われます。