2021年2月1日週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りはほぼ膠着状態、目先大きく上昇する可能性は低く、米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債券等が投資対象の中心で変更ありません。

米国債利回りは相変わらず膠着状態です。

米FRBについては1月26、27日にFOMCを開催し、特に大きなサプライズはありませんでした。引き続き「最大限の雇用と物価の安定に向けて一段と顕著な進展があるまで現状を維持する」というメッセージです。現状とは現在米FRBは毎月米国債を800億米ドル+住宅担保ローン証券(MBS)を400億米ドル買い入れて資金をマーケットに追加供給する量的緩和を実施中ですが、これを維持するということです。

現在米FRBの資産は7.4兆米ドルですが、このペースだと年末には9兆米ドル近くになり、米ドルが今から2割増えます。

物価については2%のインフレ目標ですが、2%になるとすぐ引き締めに動くのではなく、「雇用や景気の状況を見て総合的に考える」方針で、多少2%を上回る時期が続いても様子を見る姿勢です。

よって、少なくとも緩和を停止するのは雇用の改善が顕著にみられると予想される2023年末、引き締めに転じるのは2024年以降とかなり時間があるので、米国債利回りは緩やかな上昇予想です。

投資家目線では、格付けの高い社債は軒並み利回りが低いので少しでも利回りが高い債券を常に探している状態です。その中で欧米の大手銀行が発行する証券や、ハイイールド社債の高利回りは好感され続けております。

よって注目投資対象に変更はありません。

為替

極端な円高は想定せず、今後の米国の景気回復、金利上昇が米ドルのサポート要因になると考えております

米ドルは1週間で1円近い円安、ウォッチしている通貨ではメキシコペソ以外が円安に動きました。

米FRBが強力な緩和姿勢を打ち出している中で米ドルを積極的に買い上げる要素は少ないですが、日本やECBも大規模緩和実施中で極端にどこかの通貨を取り上げる理由が少ない為一方的な円高は考えにくいです。

今後も米国景気の改善に伴い緩やかに米国債利回りが上昇するに従い、日米金利差が広がり、米国向け証券投資が活発になることが米ドルのサポート要因になる事が考えられます。

よって再び100円を試す展開になったり、仮に100円割れ等の際は積極的に積み増して良いと考えます。

一方で有望な株式、債券を発掘した場合は為替動向より商品の買付を優先してよいと考えます。

株式

目先は米国株の需給悪化に伴う調整売りの可能性高いが有望銘柄を売却する必要は無いと考えている。2月調整終了後は①ワクチン接種ペースの加速②米国中心に大型財政支出③企業や家計の余剰貯蓄の放出④世界の中央銀行(中国を除く)の緩和姿勢が引き続き株式市場を回復させると見ている。

テーマは5G、半導体、電気自動車、工場自動化等のFA関連等が大きいがワクチン接種の広がりにより、旅行、外食、百貨店、鉄道、航空等の分野に物色が広がると予想。

今週の大きな相場のトピックは①中国人民銀行②ゲームストップ株の乱高下

今週大きな目先の相場のニュースは①26日に中国人民銀行による公開市場操作により、資金780億元(約1.3兆円)を市場から吸収②米国でゲームストップ株(GME)売買を巡りヘッジファンド、個人投資家、証券会社等が混乱し、世界の株式市場に波及したことがあげられます。

まず①ですが、中国人民銀行は国内の資金を一部吸収する事実上の引き締め策を急遽実施しました、不動産市況のバブル状態をけん制する狙いだと言われております。政策転換では無いですが、寝耳に水だったので株式市場が動揺しました。香港ハンセン指数は1月25日は終値30,159でしたが、29日は28,283と6%を超える下落、上海総合指数も25日は3,624が29日は3,483と4%近い下落となりました。ただ、引き続き今年の世界景気をけん引する主要機関車の一つに変わりは無いです。今後も追加情報が出ればお伝えして参ります。

②のゲームストップ(GME)株の乱高下が世界の株式市場に与えた影響ですが、同社の株価は12月31日18.84$1月21日終値43.03$、22日65.01$、25日76.79$、26日147.98$、27日347.51$、28日193.60$、29日325$と特に26日以降日々倍や半分になっています。29日終値ベースで時価総額は約2.3兆円程度なのですが、ここ数日の売買代金は2兆円近くあり、株主が毎日入れ替わっているような激しい売買が行われました。東証1部の売買代金が2兆円から3兆円なので1銘柄で東証一部全銘柄並みの売買が行われたイメージです。

この動きで相当程度損失を被った人やヘッジファンドは多いと見られ、損失カバーの為に他の保有株式を売却して穴埋めする行動が多数出て、株式市場がドミノ倒しの様になることが時々起こりますが。これが今回発生したと見られます。ただ、暫く動揺しても他の企業の成長には影響がない一過性の動きなのでここは慌てないことが重要です。

その他

ゲームストップ株の事件の報道が断片的過ぎるのでもう少し解説します。

同社はゲームやスマホ等を販売する小売店です、米国中心にカナダや欧州にも店舗を持ち、オンラインストアも保有し、従業員は6万人規模の米国では良く知られた会社の様です。

業績は2019年2月決算は赤字、2020年も売り上げは3割程度減少し、経営不振が続いています。

株価は2020年12月31日終値18.84$でした。

業績不振の会社なので空売りが沢山はいっており、浮動株の100%近い大量の空売りが溜まっていたそうです。

1月13日に米ネット通販会社チューイーの共同創業者で物言う株主のライアン・コーエン氏が取締役に就任し、改革期待で株価は31.4$に急上昇しました。

その後も上昇を続け22日には65.01$と急上昇を続けます。

26に、著名ベンチャーキャピタリストのチャマス・パリハピティヤ氏がゲームストップのコールオプション(買う権利)を買ったとツイートし26日は初値88.56$が終値147.98$に急伸、更に26日引け後にテスラの創業者イーロン・マスク氏が米国の個人投資家に良く見られているネット掲示板アプリのレディットのチャットルーム「WallStreetBets」のリンクを自身のツイッターのフォロワー4300万人に配信すると個人投資家がいよいよ大騒ぎして買いに走り、26日終値147$が27日終値が347$となりました。

一方、空売りを専門とする米シトロン・キャピタル率いるアンドリュー・レフト氏やヘッジファンドのメルビン・キャピタル・マネジメント等空売り勢は壊滅的被害を受け、解消のための買戻しを行います。これが株価上昇に拍車をかけました。

個人投資家が主に使用している仲介業者がアプリで証券業務を提供しているロビンフッド社でした。売買手数料無料で個人投資家1300万人が利用しています。

ここで証券会社側にもトラブルが発生します。

米国株の決済は決済機関の米国証券保管振替機関(DTCC)を通じて株式と代金の受け渡しを行います。証券会社は買付側の資金は2日後に決済されるため、仮に入金されなかった場合は証券会社の損失になってしまいます。

これを回避する為に決済までの2日間、買付代金の清算債務を証券会社からDTCCが引き受け、リスクを証券会社から切り離すのですが、保証金を決済までの間、証券会社は差し入れる必要があります。

通常時であれば問題にならないのですが、今回2兆円レベルの買付が毎日発生し、買付代金が急激に膨らんだため保証金も急激に膨らんだようです。これは米国の業界全体の数字ですが、27日時点でゲームストップ株の代金の清算に伴う補償金は260億ドルでしたが28日時点では335億ドルに増加とブルームバーグのニュースにありました。

かなりの部分がロビンフッド負担分と推定されます、ロビンフッド側が保証金を差し入れすぎると資産の増大になるので法令で定められた自己資本比率を満たさない可能性が出たと思われます。

結果、ロビンフッド社は28日にゲームストップ株の新規の買付を停止、同社株の株価は急落しました。

急遽28日中にロビンフッド社は急遽10億ドルの増資を行い、29日には再開でまたゲームストップ株急上昇と混乱は続いております。

この事件から考えられることは

①世間では空売りを行うヘッジファンドに対してのロビンフッドを利用する小口個人投資家の反乱ともてはやされているが、大口投資家がツイートする等煽る側もおり、巨額の利益を手にしたヘッジファンドも存在する可能性が高く、結局は個人投資家は利用されているだけと考えられる。

そもそもゲームストップ社は経営不振企業、空売りの買戻しが終われば業績面での株価の裏付けは無く、長期保有する株式ではない、最終的に大損する個人投資家は続出する可能性が高い。

③結果損失穴埋めの為に他の株式を売却する行動は今後出る可能性が高く、世界株式市場が暫く変動率の高い状況が続くと予想される

④やはり、業績の裏付けのある会社を長期保有が良い、今回の乱高下で一喜一憂せず、場合によっては追加購入も検討してよいのではないか。

以上となります。