2021年7月12日週刊相場メモ

全体の要旨

債券・金利

引き続き満期やコール迄の期間を10年未満のハイイールド債、COCO債、米銀優先株式預託証券等が中心商品です。

2日発表の6月の雇用統計発表は強い数字ながらも詳細に分析すると景気に関係のない政府の教育関連の採用数が押し上げていて、民間部門はサービス業が改善する一方で製造業は自動車分野で減少も起こっており、一方的に強い内容では無かったこと、失業者についても失業率が上昇するなどの結果で、早急な引き締め論議は避けられるとの見方が広がったことや、6日発表のISM非製造業景況指数が予想を下回ったこと等により、米国10年債利回りは低下しました。

もちろん、緩和引き締めや利上げはここ数年の大きなテーマに変りはありませんので、将来の金利上昇リスク、インフレリスクに配慮しながら慎重に運用する方針に変化はありません。

為替

米国10年債利回りが一時1.2%台に入った影響を受け、円高気味に推移し、一時109円台に入りました。

FRBが今年中に緩和縮小を実行するかは議論の余地がありますが、検討は開始されました、よって極端に米国債利回りが低下して円高が一方的に進む流れは定着しないと思われます。

東京に4度目の緊急事態宣言を出している日本が米国に比べて緩和策を先に解除できる状態でない事を考えると日米金利差が開く方向に変化はなく、円安方向に再度進んでくる見方に変更はありません。

今回、豪州についても記述いたしました。米国と同じか上回るペースでの緩和縮小、利上げを検討する段階に入っており、円・米ドルの影響は受けるものの、堅調に推移するとみられます。

株式

日本は、東京都議選での自民党の事実上の敗北、緊急事態宣言の4度目の発出と政治的な不安定さを懸念され下落、一方米国は乱高下激しいながら9日にNYダウ、NASDAQが最高値更新です。

日本に関しては9月30日が自民党総裁任期満了、10月21日が衆議院議員任期満了の為、早ければ9月に解散総選挙があるかもしれません、株式は政治の不安定を嫌いますので自民党が安定しない日本は暫く厳しい状況が続きそうです。

米国は5日が休場、6日からスタートです、6日にISM非製造業景況指数が発表され、60.1と分岐点の50を大きく上回る良い数字だったのですが、予想の63.5を下回ったことから、6日のNYダウは一時500ドル近く低下しました。ここ最近、「過去最高」「〇〇年ぶりの高水準」という材料が目立ち、市場が良い数字に慣れ切っているので、良い数字でも株式市場が素直に捉えない事が増えてきました。

今まではパンデミックからの回復が材料で、昨年が悪すぎた反動なのですごい数字が数多く出ました。

今はコロナ後の景気拡大に市場が慣れる為に必要な調整の時間と考えて良いと思います。

引き続きGAFAMをはじめとする代表銘柄は上昇を続けており、強い企業がより上昇し、市場をけん引する状況に変化はなく、決算がよく、成長率の高い企業がけん引役になる姿に変化はありません。

各項目詳細解説

債券・金利

7月2日に1.43%で終了した米国10年債利回りは7月9日1.36%で終了です。

7月2日に発表された6月の米雇用統計非農業部門雇用者数は85万人増加で予想の72万人を大幅に上回ったにも関わらず金利低下でマーケットは反応しました。

増えた数字は凄いのですが、分野に偏りがあり、FRBが本格的引き締めに入る「景気回復への著しい進展」には及ばないと市場は判断した様です。

増えた分野の代表は娯楽・ホスピタリティー分野で34.3万人増加、次に政府部門が18.8万人増加です。

政府部門は州政府・地方政府の教育分野での採用の23万人増加があった事が主要因です。

ここが、予想数字を大きく上回る原因となっており、民間の景況感とは関係のない雇用です。

一方で製造業はわずか1.5万人増加で自動車・同部品が1.2万人の減少に転じています。

失業率も5.9%と前月の5.8%より増えたことはマイナス要因、賃金上昇も0.3%増加と鈍い伸びです。

就業者数全体も新型コロナ前のピーク(20年2月)に比べ676.4万人低い水準と、まだまだFRBの方針を変更させるには至らない内容と言えます。

悲観する必要はありません。

失業率の増加要因は今まで求職活動を見送っていた人々が活動を開始して分母が増えた影響が大きいとみられているので、悪いということではありません。

パートタイムをしている人も含むU6失業率が5月10.2%だったのが6月9.8%に低下しているので経済活動全般は引き続き好調と言えます。

マーケットとしては都合の良い解釈ができる内容であったと言えます。

為替

米国10年債利回りが8日に一時1.2%台を付けたことが引き金になり、8日に109.51円まで円高が進みました。9日には1.3%台を回復したことを受け、110円を回復しております。

円・米ドルに対する見方に変更はありません。

7月6日にRBA(オーストラリア準備銀行)の定例理事会があり、政策金利であるキャッシュレートの誘導目標を0.1%で据え置きました。

今後ですが、豪州は今年の年末辺りから金融緩和縮小(テーパリング)を始めそうです。

というのが、①3年国債利回りの目標の対象を2024年4月償還債から2024年11月償還債に変更するかどうか②9月に終了予定の第2弾の債券買い入れプログラムを延長するかなどを検討していたのですが、

今回、①については、2024年4月償還債で維持②については、9月終了後、11月中旬まで買い入れ額を毎週50億豪ドルから40億豪ドルに減額して継続と決定しました。

その後は経済状況を見ながらテーパリング(量的緩和の段階的縮小)に踏み切ると見られます。

経済環境は良好です、インフレ率が上昇しない居心地の良い失業率が豪州は4.5%~5%程度と見られておりますが、

5月の失業率は5.1%でコロナ禍前(2020年2月)と同水準まで低下しました。

GDPも1-3月期にコロナ禍前(2019年10-12月期)の水準を上回りました。

利上げについては、RBAは2024年まで利上げを行う条件が整わないとの見方を示しておりますが、コロナを克服し、景気拡大期に入ってきたので2024年より前に利上げを前倒しする可能性も出てきました。

円・豪ドルには円・米ドルの状況も影響しますが、豪ドル自体は好調な経済と将来の利上げ期待を背景に力強く推移すると思われます。

株式

6日発表の6月の米供給管理協会(ISM)非製造業景気指数が分岐点の50を大きく上回る60.1だったのですが、予想の63.5を下ったことを受け6日のNYダウは一時2日の終値より428ドル下落するなど週間の株価の流れを悪くしてしまいました。

ただ、8日に一気に買戻しが入り、NYダウ、NASDAQともに高値更新で終了しました。

ISM非製造業指数は、5月が1997年以降の過去最高を記録しており、それに比べると低下ではありますが、調査対象の18業種のうち不動産と農業を除いた16業種で業況の拡大が報告されており、決して悪い数字ではありません。

受注残の水準も過去最高になるなど好調な状況に変化はありません。

懸念材料としては雇用の数字が半年ぶりに50を下回り、人手が足りてないことや仕入れコストにつながる価格が上昇している等の回答が目立つなど、将来のインフレ懸念が消えていないことです。

株式市場は昨年比較で余りにも良い数字が続いたことに慣れてしまい、巡航速度の数字に慣れる必要がある時期だと考えております。

7月半ばからは米国企業の4-6月の決算発表が始まります。

好調な数字が確認されれば株式市場に勢いが戻ると見ており、現在は次の段階に進む踊り場という認識です。

目先の好材料

①バイデン政権の財政支出法案の成立

②好調な企業決算

③堅調推移する景気指標

④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ

懸念材料は

①コロナ感染拡大が再び加速

②米中緊張激化

③米経済対策法案成立遅れ

④短期的過熱感の解消の為の調整売り

⑤民主党の増税政策や金融規制強化

⑥米国長期金利の急騰

これらに変更はありません。

経済イベント(抜粋)

7月6日 米ISM非製造業景況指数 米供給管理協会(ISM)発表 結果:60.1(予想63.5)

7月8日 欧州 ECB 金融政策の今後の戦略発表 インフレ率目標の表現を「2%弱」から「中期的に2%を目指す」という表現に18年ぶりに変更

若干の言い方の変更なので大きくは取り上げられませんでしたが、これは、インフレ率2%を目指すためには金融緩和をもっと続けないといけないというECBの意思表明と言えます。

よってECBは日銀同様、米FRBに比べると緩和縮小はまだまだ先だと言えます。

7月8日 米国 

6月27日~7月3日の新規失業保険申請件数 労働省発表 結果37.3万件(予想35万件)

6月20日~6月26日の失業保険の継続受給者数 労働省発表 結果333.9万人(前週比マイナス14.5万人)

やはり、失業保険の上乗せを打ち切る州が出てきている事の影響が数字に表れているようです。予想より新規失業保険申請件数が多かったのは再度職探しをする人が新たに登録に走った結果で、継続受給者数が減ってきているのは職についた人が増えてきている影響とみられます。良い結果と言えるでしょう。

7月9日 米国     FRB 金融政策報告書議会へ提出 

要旨 現在のインフレは一時的、来年には2%程度に落ち着くと言う従来の見方を再度強調、雇用に関しても「緩みが残る」と従来の見方を踏襲。