つみたてNISAはこの8本から選びなさい/中野晴啓/ダイヤモンド社

 著者紹介

中野晴啓(なかの・はるひろ)さん

1987年株式会社クレディセゾン入社、2006年セゾン投信株式会社を設立。代表取締役。

2019年3月27日発行の本です。

 プロローグ

「つみたてNISA」という制度は投資信託の積み立て投資を前提にした非課税制度のこと。値上がり益には最長20年、税金はかけない。

1年に利用できる額は最高で40万円まで(毎月なら3.3万円×12か月)

定期預金はわずか0.01%の利回り、20年間貯めて元本792万円、利息はわずかに8000円しかつかない。

年利6%ならば20年後には792万円が約1504万円になる計算、これが非課税。

米国では投資信託を活用した資産形成は当たり前で、1934年に設定の「アメリカン・ファンズ・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ」(ICAファンド)というのがあり、85年間の平均複利利回りは7.02%、毎月1万円ずつ投資するだけで現在は6.5億円になっている計算。長期投資こそ王道投資手法。

日本には6000本以上の投資信託があるが、つみたてNISAで金融庁から認められたファンドはわずかに162本、しかも、当初は50本くらいしかなく、基準を緩めてやっとこの数。それだけ日本には資産形成に適した投資信託が少ないともいえる。

第1章 どうしたら「お金に困らない人生」を手に入れられるのか

人生100年時代、平均寿命も女性が87歳、男性81歳、長期投資で資産形成するべき時代。

退職などで老後を迎えた時に運用は継続するべき、しないで取り崩しているとなくなってしまう。

また、公的年金も現在の保障を維持できない可能性が高い、社会的負担も大きくなることが想定される。

日本の財政赤字は世界的に見て高水準、今は国債による資金の調達が順調だが、いずれ限界が来た時に円安となり、輸入物価の上昇を通じてインフレが起こる可能性もある。

投資は長期が良い、なぜならば「世界の人口が増え、経済が成長する限り、長期投資は負けない」から。世界の成長を信じられない人は無理だが。

土台となる人口も増え続けており、2017年は75.5億人、2050年には97億人に増加する予想。人口が増加するということは経済成長が見込めるということ。

大事なことは世界経済の未来をどこまで強く信じられるかという気持ちと長期投資にあった投資信託を選ぶこと。

リターンは2001年から2017年までで全世界の株式に分散した場合平均6.5%。

お金に困らない人生に向けて長期投資に向いた投資信託を少しずつ購入するべき。

コラム 日本人は「短期・集中・一括」投資が多い。

投資信託の平均保有年数は2014年で2.3年、2015年に3.1年まで改善。しかし、2017年には2.4年に逆戻りしている。

銀行や証券会社の手数料稼ぎのマナーの悪い販売も原因だが、投資家側にも長期で積み立てて資産を育てる意識を持ってほしい。

第2章 おトクな制度の中で「つみたてNISA」が最強の理由

非課税枠は毎年40万円

投資可能期間は2037年まで(つみたて期間)

それぞれの非課税期間は20年間

投資の運用期間は20年

NISAは年間120万円のタイプかつみたてかを選ばないといけない

長期投資に向いているつみたてNISAがおすすめ。

つみたてNISAに適した投資信託の要件

①信託契約期限が無期限(または20年以上)

②毎月分配型ではない

③デリバティブ取引による運用を行っていないこと(ヘッジ目的の場合を除く)

◎「つみたてNISA」はなぜ20年物長期運用なのか

答えはリターンのばらつきが長期になればなるほど安定するから。

1985年以降のデータで検証、5年程度だと元本割れも散見されるが20年となると、年利2-6%程度に収まることがほとんどだった。

◎一括投資はタイミングが合えば大きな利益が出るが、タイミングはわからないので積み立てが良い

◎「国際分散投資」で価格変動リスクを軽減したほうが良い

◎つみたてNISAの注意点

①非課税枠が余っても翌年に繰り越しはできない

②非課税枠は消化され、復活はない

③分配金を再投資された場合でも新規の買い付けにカウントされてしまう

④投資対象の商品が限定されている

⑤課税口座との損益通算が認められていない。また、損失の3年間の繰り越しも認められていない。

◎積立額の変更および休止は可能、乗換売買を行ったら非課税枠は消えるので投資信託を変更する場合は残っている投資信託はそのまま残して、新規の投資を行うほうが良い。

コラム こんな投資信託は買ってはいけない!テーマ型ファンド

テーマ型ファンドとは、その時々の話題に上っているテーマをファンドの名前に付け、関連性の強い銘柄を組み入れて組成する投資信託の総称。

金融機関は売り文句があるので販売しやすいため流行になるとどんどん組成する。

しかし、新規設定の時期がそのテーマのピークであることもよくある。

世間の関心が薄れてしまうとファンドの基準価格も下落し戻ってこない可能性もある。

金融庁も個人投資家が安定的な資産形成を行う上で向いてないとしてつみたてNISAから除外されている。

 第3章 つみたてNISAを始める前に知っておきたい「投資信託」の「裏知識」

この章は投資信託の基本的な仕組みの解説です

◎投資信託は販売の「販売金融機関」運用の「投信運用会社」資産管理の「信託銀行」の3社が関わる。

 つみたてNISAを始める際にはまず、「販売金融機関」に口座を開設して商品を選ぶ。

「投信運用会社」のファンドマネジャーは運用の指図を信託銀行に出して信託銀行の担当者が指図通りに注文を執行。

「信託銀行」は受託銀行と言い、運用財産を預かるのが役割。

販売金融機関や投信運用会社が倒産しても資産が毀損しない目的で預かる先を分けています、また、信託銀行の破綻が起こっても「分別管理」と言って顧客の資産と信託銀行の資産を分けて管理することが法的に義務付けられているので資産が残る制度設計になっている。

◎手数料について

①販売金融機関の受け取る「購入時手数料」

②3社で分ける「運用管理費用」

③売却時にかかるコストを売却する顧客に負担してもらう目的の「信託財産留保額」

ノーロード投信だと「購入時手数料」が無い

しかし、「運用管理費用」の中に販売金融機関の受け取る「代行手数料」もあり、これは運用会社と販売金融機関で分けている。

場合によって販売金融機関の受取額が多く設計されている場合も多く、業界の中の力関係を表していると同時に投資家から見ると意味不明な手数料に写る。

「運用管理費用」の高さと運用成績には関連性がない、また、売れ筋と言われている投信も販売会社の「販売力」の高い投信が結果として売れているだけであり、実力とは乖離している場合が多い。

投信を選ぶ場合に「運用管理費用」に注意して選ぶことが重要、長期で見ると大きな運用成績の差につながる。

つみたてNISAの投信はインデックス型投信が多く、販売手数料が無く、運用管理費用も0.2~0.6%程度と日本の投資信託の中では破格に安いので金融機関は販売に力を入れてこなかったので金融機関のアドバイスを聞く必要はない(担当者が知らないケースが多いと思われる)。

◎アクティブ運用なのかインデックス運用なのか

インデックス運用は市場平均に沿って運用成績が連動する投資信託の手法で長期で見てアクティブ運用のほうがコストが高かったり、成績がばらついたりして結果としてインデックス運用のほうが勝ってる場合が多い。

ただ、アクティブ運用もすべてがダメというわけではなく、株式の本源的価値を有する企業の株式を厳選して保有するタイプの投信であれば市場平均を上回る可能性も高い。

◎ファンド・オブ・ファンズのメリットデメリット

投資信託を複数組み合わせてパックにしている形式の投資信託をこのように呼ぶ。

メリットは非常に幅広い銘柄や資産に同時に分散できること。

ただし、経費が高かったり、分けていても同じような分野の商品に分けていたりする粗悪品もあるので注意が必要。

◎つみたてNISAで重要なのは、きちんと「ファンドの入れ替え」をしているか

NISA口座の中で運用商品を一度購入すると細かく動かすことができない、しかし、状況によって株式や債券の比率の調整を投資信託の中で行ってくれるファンドがある(これをリバランスという)のでこの機能を有しているファンドを選ぶとよい。

コラム こんな投資信託は買ってはいけない「毎月分配型ファンド」

一番の欠陥は運用がうまくいかないときには元本を取り崩して分配金の支払いに充てるため、長期の運用に適さないこと。

このことを認識している投資家50%程度しかいないこともアンケートで出ており、販売金融機関の姿勢が問われる。

第4章 誰も教えてくれなかった!本当にいい投資信託を選ぶときに大事なこと

つみたてNISAの投信は162本あるが、全ての金融機関で取り扱う訳ではない

順序はこの投資信託を購入したいから→金融機関を決めること、逆にするとカモになるリスクが大きい

選択基準①国際分散投資である

選択基準②日本株の比率が1/3以下である

選択基準③日本株が入っていること

選択基準④為替ヘッジがないもの

選択基準⑤純資産総額が50億円以上であること

選択基準⑥ターゲットイヤーファンドは外す

これらの基準を満たしたファンドが8つしかなかった

①セゾン投信「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」

②セゾン投信「セゾン・資産形成の達人ファンド」

③三井住友トラスト・アセットマネジメント「世界経済インデックスファンド」

④野村アセットマネジメント「のむらっぷ・ファンド(積極型)」

⑤三菱UFJ国際投信「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」

⑥楽天投信投資顧問「楽天・全世界株式インデックスファンド」

⑦大和投資信託「iFree 8資産バランス」

⑧SBIアセットマネジメント「EXE-i グローバル中小型株式ファンド」

以下はこの投資信託の解説が続いております、これに関しては本書をご確認ください。

コラム こんな投資信託は買ってはいけない 「ブルベアファンド」

ブルベアファンドとは、対象とする株式や指数が1動くのに対して1以上動くように設計されたやや投機的なファンド。

一番の欠陥は長期で見ると目減りするリスクが大きいこと。

例えば対象指数が1日で20%下がって翌日に20%上がった場合、2倍に連動するファンドなら、

100→60にまずなって、翌日に60→84に戻る。

しかし、元の100には戻れず、どんどん減ってしまう。

また、本書では書いてませんが、ブルベア型ファンドは動きを大きくするためにオプションという金融商品を活用している例が多く、そのコストや目減り分も投資信託の基準価格から自動的に引かれます。なので近寄ってはいけない商品だと言えます。

第5章 投資信託、つみたてNISAについて本当に知りたいこと

ここではQ&A形式でいくつか書かれています。

要点を並べると

①昔の投資信託は規制が緩く不祥事も多かったが、現在は法整備がなされており、投資家にとって使い勝手がかなり良くなっており、初心者向きといえる

②いろいろな制度があるが、つみたてNISAが税制メリットも使えて、解約も可能で、長期投資を実現するのでまずこの制度を活用するとよい

③商品選びをまず第一にして、決まってから取り扱いのある金融機関に行き購入するのが手順。金融機関に決まらないで行くと全く意図しない商品を購入する結果にもなりかねない。できればネット金融機関が良い

④余裕資金ができてから投資をと考えている人に余裕資金ができないことが多い、まずは毎月1000円でもよいから始めることが大切

⑤つみたてNISAは新規投資期2037年までの時限立法なので毎年40万円の上限なので、2019年から始めた人は720万円が上限。途中換金は可能、乗り換えもやれるが、途中換金した場合の非課税枠はその時点で消滅、乗り換えをしても同様で解約した時点で非課税枠が消える。もし、やるなら、今まで投資した分はそのままで新規に違う投資信託を購入するほうが良い

⑥投資信託が繰り上げ償還など運用を止めた場合は強制解約になる、償還金は非課税で戻るが、長期の運用計画が狂うことになるので純資産総額が100億円くらいあるのが望ましい

⑦20年も続ける自信がありません。長期投資とはどのくらいの期間をさすのでしょうか。という質問には著者は3年や5年は短期投資で「期限がない」と回答しています。

あとがき

投資信託の指標として騰落率ではなく、それぞれの投資信託に参加している投資家の実際に得られている利益を表す指標の「インベスターリターン」に注目。

基準価格が高いところで買い、安いところで売るとリターンは低下、絶えず資金が流入状態にあると向上する傾向がある。

基準価格が高くても安くても一定資金を積み立て続けていれば安いときには口数を多く買い、高いときには口数少なく買うので長期で見ると安い価格で購入でき、リターンを得やすくなる。

感想

この本で一番の重要なことは

①つみたてNISAに入ること

②バランス型でリバランスを行ってくれるファンドを選ぶこと

③対面型金融機関は避ける

④手数料は必ずチェック

⑤2037年までしっかりつみたてること

だと思いました、8本の投資信託についてはバランス型ではないものも入っており、ここは投資家のリスク許容度や投資に関する考え方でいいと思います。

また、運用管理費用が低くて、好みに合致すれば違う投資信託でもいいと思います。

運用に関しての基準を自分で持つことが一番大切で、この本は考え方を披露してくれてます。

今後もインデックス型についての書籍は読み続けていきますが、著者によって投信の選び方は少しずつ違います。バランスではなくて、世界株一本がいいとかの意見もありました。

しかし、共通しているのは金融機関勤務の私にとってはつらいのですが、対面型の金融機関は「手数料だけ高く」て「売りたいものしか売り込んでこない」から相手にするな。ということです。

「対面型は手数料高いけど〇〇ってところだけはいいアドバイスくれると評判です」なんて記述が一つもないところに日本で投資が育たない最大の理由があると感じたと同時にこれを実現すればブルーオーシャンだななんて思いながら勝手に読んでました。

今後も幅広い方々のご意見を書籍を通じて学んで行きます。