2021年4月26日週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りは引き続き落ち着いております。経済指標は相変わらず好調な数字が出ていますが、株式市場の動きもやや止まっており、影響を受ける形で長期金利も止まっています。

4月15日発表の4月NY連銀製造業景気指数は26.3(0が分岐点)と3年ぶりの好調な数字、

同日発表の4月フィラデルフィア連銀製造業景況指数も50.2(0が分岐点)と48年ぶりの好調な数字が出ており、米国の景気先行きに楽観論が広がっています。

4月16日発表の3月の米住宅着工件数は2月寒波の影響で大きく落ち込んだ反動で前月比19.4%増加と15年ぶりの良い数字が出ています。

4月15日に全米ホームビルダー協会(NAHB)発表の4月の住宅市場指数は83と良い数字ですがここ5か月で4回目の指数低下で良い数字に関して住宅は織込み済みで上昇一服感もあります。

しかし依然好調な数字が出ているので活況は続くと見られます。

4月22日発表の4月11日~17日の週の米国新規失業保険申請件数は54.7万件と予想の61万件を下回りました、継続受給者数も367.4万件とその前の週の370.8万件より低下しております。

市場では5月初旬発表の米国の非農業部門雇用者数が3月の91万人増加よりも4月は上回るのではないかと期待する意見もあります。引き続き回復傾向です。

嫌な材料は3月末のアルケゴス問題の様な過剰流動性からくる突発的な事故や、中国の中国華融資産管理の信用不安問題等潜在的なリスクの一部が表に出てきている事です。

FRBや各国政府が対策に乗り出している以上まだ具体的に警戒しないといけないということはなさそうですが注意は必要かと思います。

投資対象はコール迄の期間が10年を超えないレベルの米国ハイ・イールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCo債等が中心で変更ありません。

4月15日発表の4月NY連銀製造業景気指数は26.3(予想20)、フィラデルフィア連銀製造業景況感指数は50.2(予想41.2)と好調です、特にフィラデルフィア連銀製造業景況感指数は1973年4月以来の高水準で、雇用者数も1968年以来の過去最高を記録しています。

住宅に関する指標が好調です、新型コロナを避けるため人々が都市部から近郊の郊外へ移転していることが大きな理由としてあげられております。

マーケットで中国の大手金融会社中国華融資産管理(華融)の債務返済が不安視され、同社発行の2026年満期の社債価格が100超から一時52と一気に半値になる事件が起き、中国発の信用不安が起きるか?と言われた事件が13日にありました。

同社は中国国営4大銀行の一つ中国工商銀行の不良債権受皿会社として1990年代に出発し、現在はノンバンクです。政府系なので政府の暗黙の保証があると考えられ英フィッチがA格を付与していました。

ここが3月末決算を出せなかったため債務返済が不安視されました。

同社の海外債務は約230億ドル(約2.6兆円)、全体でも約500億ドル(約5.5兆円)程度なので世界的に大きくはありませんが、仮に政府系の同社が破綻となれば中国本土企業の米ドル建て債務が世界全体で6000億ドル(約66兆円)あるので中国本土企業発の信用不安を起こす可能性が不安視されました。

ただ、これに関しては中国の政治問題が絡んでいるようで、本土企業全体の問題にすぐ発展することは無いように思えます。

同社元会長の頼小民氏は2021年1月5日に2008年から2018年にかけて17.9億人民元(約285億円)の賄賂を受け取った罪により死刑判決、刑が1月21日に確定し、わずか8日後の1月29日に執行されました。

この頼小民氏はかつて胡錦涛政権で国家副主席を務めた曽慶紅氏と同郷でとても親密と言われておりました。曽慶紅氏は江沢民元主席の側近で習近平主席側からみると政治的に対立する人物です。

中国国内の派閥争いの影響が波及したと言われております。

華融は一番近い償還の2021年4月27日償還の債券の償還を表明しており、政府も4月16日に大手銀行に対して支援を要請したことなど目先大きな問題になることはなさそうです。

ただ、時々中国の債務問題はニュースとして相場をかき回すことは今後も起こりそうで、随時分析してまいります。

投資対象商品に変更ありません。米国ハイ・イールド債券、米銀優先株式預託証券、欧銀CoCo債等を丁寧に購入継続で良いと考えます。

為替

引き続き米国債の利回りが上昇傾向であることがサポート要因です。米ドルが強い状況に変化はありません。今後も極端な円高は想定せず、やや円安気味に推移すると見ております。

先週に引き続き米国10年債利回りの上昇が止まったため円ドルは膠着状態になっております。

しかし、調整の域に過ぎないと考えており、方向感に変化はありません。

4月21日にカナダ中央銀行の政策決定会合があり、政策金利0.25%据置とQE(金融緩和策)の減額措置(テーパリング)が発表されました。

カナダは2023年から利上げを当初見込んでおりましたが、2022年に前倒しされる可能性が出てきました。

新興国に関しては米国金利の上昇から米ドル高を招きやすい環境下で新興国から資金が流出する懸念が常にある環境です。よって暫く厳しい状況が続くとみられます。

カナダが今回実施した金融緩和の縮小策は現在毎週40億カナダドル(86円程度、約3400億円)国債を市場より買い入れておりますが、これを30億カナダドルへ減額します。

また、2021年のインフレ率予想を一時的上昇としながらも1.6%予想を2.3%予想へ修正、2021年のGDP成長率を4%予想を6.5%予想へ修正しました。2022年は反動で4.8%成長予想を3.7%へ下方修正しています。足下の景気の拡大を受けて2023年から利上げを検討するとしていますが、2022年の後半から利上げの可能性が出てきたと言えます。

株式

やや膠着状態です。4月26日からの週はS&P500組み入れ銘柄で180社が決算発表予定です。発表を控えて動きにくいことが考えられます。

4月16日発表の4月ミシガン大学消費者マインド指数速報は86.5と予想の89には届きませんでしたが、好調な数字で、米国は人々の景気に対する楽観論が広がっています。

(この指数は1968年スタートの人々のマインドの変化を指数で表した物で調査対象は速報300人、確報500人とやや数字のブレが大きい指標です)

目先の好材料①4月公表予定の追加経済対策を含むバイデン政権の財政支出法案の成立②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化⑥米国長期金利の急騰

これらに大きな変更はありません。

懸念材料の「①コロナ感染拡大が再び加速」ですが、日本に影響が出てきました。4月20-21日の日経平均は1000円以上の下落、大阪、兵庫、東京で3度目の緊急事態宣言が出ると言われ、経済的な影響への不安から下落しました。

しかし、過去2回の緊急事態宣言は発令日から終了日迄を比べると日経平均は1割近く上昇しております。

今回も変動は大きいでしょうが、弱気になりすぎる必要は無いと思えます。

「⑤民主党の増税政策や金融規制強化」に関するニュースが4月22日に発表され、話題となりました。

所得100万ドル以上の富裕層に対するキャピタルゲイン課税の増税が22日の株式市場の売るネタにされました。

実現すれば大きいですが、完全実現には紆余曲折があり、材料としては持続しないと見られます。

同時にビットコイン取引には80%課税を検討というニュースも出てビットコインの下落を誘いました。

こちらは株式とは別の意図がある様に思えます。格差是正では無く中央銀行やSECの監視が届きにくい資産を制限する動きではないかと考えます。

現在監視が緩い為アングラマネーも大量に流入していると言われており、今後締め付ける目的では無いでしょうか。

価格的にはかなりマイナスで、影響は長引きそうです。

緊急事態宣言は結果として株価にマイナスの影響を与えておりません、むしろ、回復を織り込んで株価も上昇してきました。

日経平均は1回目の2020年4月7日~5月25日で+11.7%、2回目の2021年1月8日~3月21日で+8.4%です。

発表前に動揺しますが、発表してしまったら今度は回復を織り込む動きになっております。

今回は変異型ということで世界でも毎日70万人を超える感染者が増え、マスコミはとても騒ぎますが、弱気になりすぎる必要は無いと考えます。

4月22日に明らかになった米国の増税案ですが、3月成立の1.9兆ドルの「米国救済計画」、3月末発表の8年間で2兆ドルのインフラ投資の「米国雇用計画」に続く

インフラ投資を15年間で回収する財源で、富裕層との格差縮小を目指す「米国家族計画」に沿ったものです。

法人税を21%から28%に、個人所得税を37%から39.6%へ引き上げ、株式売却益にかかる税率を年収100万ドル以上の現行の20%から個人所得税の税率に合わせるとしております。実現すれば大幅増税です。この所得税に加えて州税も含めると州によっては合計で税率がトータルで50%~70%近くに達するケースもあるようです。

ただ、これについてはまだ3末発表の「米国雇用計画」も成立していないのに増税案も成立するのを織り込むのは時期尚早です。

それに、現在でも年収が50万ドル程度以上の人々(独身や夫婦、世帯主等いろいろなケースで変わりますが)の1年未満の株式売却利益に対しては所得税と同様の39.6%が課せられています。

1年以上保有に関してが20%でこちらを引き上げる話が今回の発表です。

また、対象は年収100万ドル以上の人々なので様々な税金対策を行える立場の人々が多いと見られ、最終的な影響は大きくないように思えます。

決算発表が本格化し、米国株も日本株も昨年の晩秋より上昇基調で来たため割高感がある銘柄が多く、決算発表時で一度利益確定売りが出て下落することもあるでしょう。

しかし、PERベースで現在割高と言っても必ず株価が下落する訳では無く、好調な決算が継続する事で割高感が解消されるケースもあります。

多少の乱高下はやり過ごし、好業績な銘柄が下落した際は強気で臨んで良いと考えております。