2021年3月29日週間相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りは主に1.6%台での推移であり、次の材料待ちの状況です。

前号で米国10年国債利回りの上昇要因として

①1.9兆米ドルの経済対策 ②直近のインフレ率の上昇

この2つをあげておりましたが、①については成立、現金配布も進んでいることから材料としては消化しつつあります。

次は①3月31日発表予定の経済対策第2弾に対する反応②インフレ率上昇を示す指標の2つになります。

債券投資については将来のインフレ懸念や利回り上昇予想が強い為、投資をやめてしまうか、保有量を減らした方が良いという意見がマスコミに増えてきました。

米国のヘッジファンドの大御所レイ・ダリオ氏はFRBの早期利上げ予想を出し、債券投資を悪呼ばわりしています。

しかし、米国10年債利回りが大きく上昇した3月18日には米10年国債先物が市場でショート(売り)ポジションが1日で15万枚増加しており、彼も相当程度勝負していると思います。自分で売りをかけておいて後で下がるぞと言うポジショントークの可能性も高く、額面通りには受け取りにくいです。(1枚10万米ドル、15万枚は150億ドル相当)

投資対象としては引き続き満期やコール迄の期間が10年を超えないレベルの米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債券等に変更ありません。

米国債10年利回りは1.6%程度で小動きでした、FOMCも終わり次の材料待ちです。

次は3月31日にバイデン大統領が発表予定の追加経済対策に焦点が移ります。

規模は3.3兆米ドルと言われており、財源として国債を増発する懸念があり、再び金利上昇の材料にされる可能性が残ります。

また、4月2日には米国雇用統計の発表もあり、好調な数字が出るとこれも金利上昇の材料とされる可能性が有ります。

しかし、米国の期待インフレ率は2.3%程度で、2022年以降も2%程度とFRBは予想しており、足下の一過性のインフレ率はともかく、数年にわたってインフレがどんどん進む予想では無いことや、経済回復が進むことでインフレが進むという意見もありますが、FRBの2021年10~12月米国の実質GDP成長率予想6.5%は昨年の落ち込みの反動が出ているからで持続不可能な水準です。2022年は3.3%、2023年が2.2%と予想しており、無理のない経済成長レベルです。

経済が過熱しすぎて一気にインフレが進む環境ではなく、暫くは1.5~2%程度のレンジで推移し、経済の回復に伴って徐々に利回りが上がっていく展開になると見ています。

その他懸念材料として新型コロナの変異種が欧州で広がっていてロックダウンが実施されていることやアストラゼネカ社ワクチンの安全性を巡る話題等経済を減速させ、金利低下につながる懸念材料も控えています。

引き続き米国債金利上昇の懸念に注意を払い、満期やコール迄の期間が10年程度以下の米銀優先株式預託証券、欧銀CoCos債やハイイールド債券が投資の中心であることに変化はありません。

為替

米国債の利回り上昇がサポートで米ドルが強い状況に変化はありません。今後も極端な円高は想定せず、やや円安気味に推移する見方を維持します。

少し前ですが、3月19日にロシア中銀が0.25%の利上げを行い、政策金利を4.5%としました。前号のブラジルと同様でインフレ率が2021年2月に5.67%になり、目標の4%を上回ってきたためです。

ロシアは経済の回復は遅れており、20年7~9月期は-3.4%、10~12月予想もマイナス成長予想です。プラスが聞こえてくるのは21年4~6月期と言われており、発表は8月の為、今年の8月にならないとロシアがプラス成長に復帰するニュースは聞こえてこなさそうです。

これら悪材料にも関わらず利上げを実施した背景にはインフレに対する強い警戒感がある為です。本来ならば景気の回復がインフレ率上昇につながり、結果利上げで景気過熱を抑えるのが理想ですがロシアの場合はインフレが先にきてしまい、景気は後回しで利上げなのでやや今後に懸念を残す悪い利上げになってしまっています。

その他新興国は今年に入り、インフレ率が政策金利を上回る実質マイナス金利の状態の国が多いです、主要国ではブラジル(インフレ率5.2%、政策金利2.75%)、インド(インフレ率5.03%、政策金利4%)、ロシア(インフレ率5.67%、政策金利4.5%)が実質マイナスで今後も利上げを行いインフレ抑制と通貨価値下落を止める必要が出てくる可能性のある国々です。

やはり新興国は利回りが高い事は魅力ながら、インフレ率も考慮し実質マイナスになっていないかをよく確認することが必要です。

株式

米国債利回りが1.6%台で推移し、株価も日米ともに乱高下したものの水準は余り大きな変化はありませんでした。

19日に日銀が株式購入の対象から日経平均型を外し、24日まで1800円超の下落を起こしたものの週末にはかなり持ち直しました。

23日には米国でインテルが200億ドルの半導体工場投資計画を発表、同日には世界の貿易の1割に影響するスエズ運河で船舶が座礁し運河が通行止め、25日にはバイデン大統領が新型コロナのワクチンの接種目標を倍増すると発表と様々なニュースがありました。

米国債の利回りに振り回される展開も3月31日のバイデン大統領の経済対策の発表の後にはこれ以上の大きな材料は当面ないと見られ落ち着きどころを探る展開になると見ています。

また、欧州を中心に新型コロナの影響は根強く残り、アストラゼネカ社のワクチンの安全性懸念もあり、一方的に利回りが上昇する環境では無くなりつつあります。再びグロース株に資金が回帰する可能性が出てきています。

目先の好材料①インフラ整備を柱とする追加景気対策の発表(31日予定)、成立②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ。

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化⑥米国長期金利の急騰です。

米国株ですが、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)といった米国を代表する企業は依然として売上や利益の成長率は高いにも関わらず伸び悩んでおり、割安感がでてきております、また、セールスフォース、ドキュサイン、ZOOM等の成長株も2月以降からみると2割~3割下落した水準で低迷しております。今後もこれらを中心としたNASDAQ連動の銘柄は米国債利回りの上下動に振り回され、乱高下する可能性が残りますが、金利が落ち着きを取り戻し、変化が緩やかになれば改めて成長力に着目した投資が戻ってくる可能性が高いと見ています。

これ以外にも個別で売上が伸び、将来が期待できる銘柄が外部環境によって下落した時はチャンスと言えます。

日本ですが、19日の日銀の株式買い入れ対象を日経平均型からTOPIX型中心に変更する発表を行い、機関投資家などでも投資配分の変更があり4日連続で合計1800円超の日経平均下落につながったと見られます。

30日で実質4月の新年度相場入りになるのでこの影響はそろそろ一巡と見られます。

ここで改めて日経平均に影響度の高い上位10銘柄を見てみると成長力の高い銘柄が並んでいます。

3月18日時点で1位ファーストリテイリング(11.55%)2位ソフトバンクG(7.31%)3位東京エレクトロン(5.15%)4位ファナック(3.28%)5位ダイキン工業(2.78%)6位KDDI(2.52%)7位信越化学(2.24%)8位エムスリー(2.23%)9位アドバンテスト2.22%10位テルモ(1.91%)です。特に5G関連が多く、2位、3位、6位、7位、9位が該当します、また4位のファナックは工場自動化のロボット関連ですし、8位のエムスリーはオンライン診療など医療のIT化に関わります。

個別でこれらの銘柄を検討しても面白いかもしれません。

また、4月は日本は新年度入りで決算発表シーズンの始まりです、将来の決算内容が良い話が多く出ると株式が再び上昇基調に回帰すると見られます。バイデン大統領の景気対策が発表され、4月2日には米国雇用統計が発表となり、米国債利回りの落ち着きを見て徐々に押し目買いを進めても良い時期に入りつつあるのでは無いでしょうか。