2021年4月5日相場メモ

債券・金利

米国債10年利回りは1.71%とやや上昇しているものの落ち着いてきました。

前号で取り上げた

①3月31日発表予定の経済対策第2弾に対する反応②インフレ率上昇を示す指標

で3月31日に2兆ドルの景気対策案が発表になりました。そして4月2日には3月の雇用統計が発表され予想を大きく上回る数字でしたが大きな金利変化はありませんでした。

4月に1兆ドル程度の追加景気対策も予定しているようですが、大きな数字に慣れてきており、安定してきました。

引き続きコール迄の期間が10年を超えないレベルの米国ハイイールド社債、米銀優先株式預託証券、欧州銀CoCos債券等が中心に変更ありません。

ただし、アルケゴス問題で揺れるクレディスイスのCoCos債券は損失が確定し、状況が見えるまで購入は見送り、保有継続も担当者とよく相談してください。

米国債10年利回りは比較的安定して推移しました。

3月31日にはバイデン大統領が追加経済対策として2兆米ドルの公共事業を柱とする財政支出策を発表し、一時1.74%まで上昇、その後下落したものの、週末の米国雇用統計は予想が64.7万人に対して91.6万人と前月の37.9万人より大幅に伸び、好感して国債の利回りが再び利回が上昇し1.71%で終了しました。

今後景気対策は今月中に追加で1兆米ドル程度の財政支出が発表される予定です。これも国債で賄うために通常であれば国債利回り上昇要因ですが、既に大きな数字が連発して出ているため急伸するような事は無さそうです。

前号でお話ししたように米国のインフレ率は急に上昇するような状況ではありません、雇用統計は確かに好調でしたが依然として約900万人の失業者がいる事と今後職探しをあきらめてしまって失業者にカウントされていない人々の復帰が始まり、失業率を押し上げる要因が残っているからです。

失業問題が解決のめどが立たなければFRBは金融緩和策をやめられず、2023年までは利上げがしにくい状況は続くからです。

引き続き当面の間1.5%~2%程度での推移を見込んでおります。

その他マーケットでの話題で大きかったのはビル・ファン氏の個人資産を運用するアルケゴスキャピタルがCFD取引で(差金決済取引、5倍のレバレッジをかけています)大損失を出し、追加の証拠金を差し入れられなくなり、信用供与をしていた金融機関は一斉に回収に走りました。

スイスのクレディスイスと日本の野村證券、三菱UFJモルガンスタンレー証券、みずほ証券等が逃げ遅れて損失、特にクレディスイスと野村證券の損失が大きく40億米ドル程度、

20億米ドル程度と報道されています。この程度の損失であれば通期の利益で吸収可能な程度であり、金融機関の屋台骨が揺らぐような事は無いです。

ただし、損失額が確定していない段階の為、この2社の発行商品については新規投資を見送り、保有商品も保有を継続するかどうかは担当者とよく相談してください。

とはいえ引き続き米国債金利上昇の懸念に注意を払い、満期やコール迄の期間が10年程度以下の米銀優先株式預託証券、欧銀CoCos債やハイイールド債券が投資の中心であることに変化はありません。

為替

米国債の利回り上昇がサポートで米ドルが強い状況に変化はありません。今後も極端な円高は想定せず、やや円安気味に推移する見方に変化はありません。

米国の10年国債利回りは1.7%以上に再び上昇し、日米金利差から米国債券への投資が活発になりつつあり、円安要因です。

また、米FRBに対して日銀が先に引き締めを行う可能性も低く、流れは継続すると見られます。

その他豪ドルですが、ドル円が円安気味に推移している以上すぐに円高になると思えません。

しかし、今から積極的に買う材料が乏しいのも事実です。

以前取り上げたようにオーストラリアは中国の最大の鉄鉱石買い付け先で無視できません。

中国が今後急激に買わなくなる事は無いと見られますが、鉄鉱石はここ10年来で最も高い水準にあるため今後価格が下落する事で豪ドル安要因になる可能性があります。

また、オーストラリアの中央銀行RBAは2024年まで利上げを行わないと声明文に記載しており、豪州の金利は当面上がりません。

よって現在は金利が上がらない中で中国依存の鉄鉱石輸出が為替を支えているので政治的な動きがあれば円高になる可能性もあります。

今後も弱気になりすぎる必要は無いですが、全面的に強気と言う訳にも行かない展開になりそうです。

株式

米国債利回りが1.7%台に入ったこと、週末から週初にかけてアルケゴスキャピタルの巨額損失事件があったにも関わらず堅調に推移しました。

3月31日にはバイデン大統領の追加経済対策が発表され好感し、株価上昇要因となりました。

同時に法人税を21%から28%へ増やすことや海外で活動している企業への課税策も発表されていますが、余り材料視されておりません。

米国雇用統計も予想を大きく上回る91万人の増加となり、2日の米株市場は休場でしたが、日経平均先物は30,050円と久しぶりに3万円超が期待できそうです。

目先の好材料①インフラ整備を柱とする追加景気対策の発表→4月予定の追加経済対策に変更②好調な企業決算③堅調推移する景気指標④5G、ワクチン普及、自動車販売回復、工場自動化等の進展等のテーマ。

懸念材料は①コロナ感染拡大が再び加速②米中緊張激化③米経済対策法案成立遅れ④短期的過熱感の解消の為の調整売り⑤民主党の増税政策や金融規制強化⑥米国長期金利の急騰です。

26日から事件として続いているアルケゴスキャピタルの損失問題は相場全体には影響はいまの所でていません、簡単に解説すると、ビル・ファン氏の私的財産を管理するファミリーオフィスのアルケゴスキャピタルが株式投資に際して目論見が外れ大きな損失を抱えました。取引は実際に資金をやりとりしないで差金決済のみで行うCFD取引を活用しており、保有資産が100~200億ドル程度に対して5倍程度の取引を行っていたようです。

信用供与を行っている金融機関は追加の保証金を積むように要求したものの入るめどが立たず、担保差し押さえと強制決済に走りました。

当初は最も大きな額を提供しているクレディスイスが野村、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、ドイツ銀行等に対して共同で管理して処分する事も持ちかけていた様なのですが、話を聞いた26日の時点でゴールドマンサックスが100億ドル規模の売却を他社に先駆けて実施して損失を回避、モルガンスタンレーも大規模な処分を実施したようです。ドイツ銀行は規模が小さいのと動きが早く損失は大きく無いようです。

残されたクレディスイスと野村は翌週に処分を開始したため損失が膨らみ、クレディスイスが約40億米ドル、野村が20億米ドル程度の損失見込みと報道されています。

この程度の損失であれば今期の利益で両社とも吸収可能です。ただ、まだ損失が確定していない状態です。

本来であれば相場下落要因ですが、打ち消したのがバイデン大統領の2兆米ドルのインフラ投資策です。8年間で実施します。主に4つのテーマがあります

①公共交通6200億米ドル(EVの充電施設1740億米ドル、橋1150億米ドル、鉄道800億米ドル等)

②生活向上支援6500億米ドル(飲料水関連1110億米ドル、住居拡充2130億米ドル、高速ブロードバンド1000億米ドル等)

③介護改善支出4000億米ドル

④製造業支援5800億米ドル(製造業支援3000億米ドル、職業訓練1000億米ドル、研究開発支援1800億米ドル等)

更に4月中に追加策を出す予定です。

合わせて法人税を21%から28%に増税するなどしてこの8年間の支出を15年かけて回収するとも発表しています。ただ、こちらは懸念材料とされませんでした。

アルケゴス問題は金融緩和の油断が招いた大きな問題ではあるものの、大半の個人資産を管理するファミリーオフィスは株式を何倍にもして集中的に投資をすることはしておらず、株式、債券、オルタナティブ等の分散投資で同様の動きが大量に出てくるとは考えにくいです。

よって金融機関の損失が確定した段階でこの問題は終わりであり、杞憂に終わりそうです。

課題としては金融機関の融資姿勢に対して規制が入る可能性があるので今まで通り借りたい放題で投資を行う事は下火になり、やや株式市場に回る資金が絞られる事はありそうです。

ただ、金融緩和が続く中、巨大な財政支出が連発するのは景気に対してプラスです。弱気になりすぎる必要は無いと思われます。