レバレッジ型ファンド分析

レバレッジ投信に食指 2019年8月24日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO48913510T20C19A8EN1000/

記事のポイント

  1. アストマックス投信投資顧問の「ウルトラバランス世界株式」が8月23日に設定された。世界の株式や債券、金に分散投資しながら、先物取引で3倍のレバレッジをかける。全体の半分以上は日米仏の債券先物に振り向ける。
  2. 日興アセットマネジメントが昨年10月に設定した「グローバル3倍3分法ファンド」も同様のコンセプトで、資金流入額は計1100億円超
  3. 今後もこの販売の成功から同様のコンセプトの投信が出るものと思われる。

投信運用自体にレバレッジをかけることは昔からありました、しかしどちらかというとヘッジファンドの得意分野で、一般的に売り出されている公募投信でレバレッジを売りにしている投信は珍しいので調べてみました。

今回は2商品が新聞で紹介されていますが、既に実績のある3倍3分法で見てみます。

グローバル3倍3分法ファンド

https://www.nikkoam.com/products/detail/944432

まずは昨年の10月から運用を開始しているグローバル3倍3分法ファンドです本日時点で基準価格が11963円、純資産総額も1380億円と巨大ファンドに成長しています、この一年未満でこれだけのパフォーマンスをあげているのは素晴らしいと思います。

では、運用方針を確認してみましょう。

ネットで公表されている資料から見ると、投資金額のおよそ3倍程度になるように運用額を先物を活用して行うようです。

ただ、先物は使う資産と使わない資産に分かれます。

これを見ると、「世界の株式やREITに加えて、日本株式及び各国国債への投資には先物取引などを活用」とあります。

では、設定来の運用成績です。

6月末までに1年決算でみると1547円の上昇ですが、要因を分解すると大半が債券先物の運用益で占められています。また、日本のREITも貢献している一方で日本株式先物が足を引っ張っているのがわかります。

この運用資産の対象のパフォーマンスを表している資料もあって以下の通りです。

おや?と思うかもしれません、各種資産の騰落率を単純に足すと+1%です、また、国債が世界債券となっているので、これを各種に比率に基づいて数字を出すと、日本REITが13.4×20/300=0.89、世界債券6.6×200/300=4.4、海外先進国REIT3.4×20/300=0.22、海外新興国株式−4×20/300=−0.26、海外先進国株式−5.9×20/300=−0.39、日本株式−12.5×20/300=−0.83 なのでこれらを足すと4.03になります。

上昇分のうち債券先物だけでは1480円に相当するのがこの表に基づいて計算すると440円分にしかならないのでこの差は開示資料からはわかりません、できればパフォーマンス表と対応させて欲しい所です。でないと、次回下落局面が来た時に想定がしにくいです。

では、手数料面を見てみましょう。

入り口手数料は上限が3.24%なので、これは金融機関によって変わります。信託報酬は0.4752%でその他費用も0.1%なので高くはない印象です。

新しいファンドなだけに抑えているのかもしれません。

その他

コールセンターにこのファンドの疑問点を投げかけました。

  1. 証拠金が不足する事態で追証などのリスクはないか
  2. 各資産の比率が変わった時にリバランスを行うか
  3. 相場の変化に応じて資産構成の見直しや現金比率を調整するか

答えは以下の通りです

  1. 現金比率を高めにとっており、過去のシュミュレーションからみてならないように努めているのでお客様に新たに負担を求めるような事態にはならない。
  2. また、債券先物は先進国中心なので安定している
  3. リバランスは余りに差が大きい時を除いて基本的に考えない
  4. 相場に応じて運用内容を変えることはしない

とのことでした。

3倍3分法に関しての感想

コンセプトとしては面白いと思いました。ただ、まだ設定して1年経ってないので様子を見たいとは思います。

このファンドの弱点としては以下のものが考えられます。

  1. 運用成績の開示と参考指数が合ってない
  2. 債券先物が大幅高した事が運用成績の大半を占めるため、コールセンターでは安定していると話していましたが、昨年10月4日から6月末までの債券の動きの逆が起きると1000円以上下落するリスクもあります。
  3. リバランスや相場観を働かせないため、相場の急変には弱い。

良い点としては、今のような株式に対して懐疑的ながら一方的に株が下落することもなく、債券金利の低下、価格の上昇のような曲面や、金利があまり変化しない中での株価の上昇が起こるような局面では周囲より良い成績を上げられます。

購入時に気をつけるべきこと

やはり、3倍ということはリスクも3倍だというところです、過去のシュミュレーションからは資産がお互い違う動きをしており、打ち消し合うのを狙ってはいるようですが、金利高と株安がセットで来ると結構キツイです。

特に現在は金利が低下し、債券価格が上昇しているので、投信にとっても環境は悪くはないですが、将来金利が上がりそうな局面では注意が必要です。

大体米国のFRBが動く方向に各国引きずられる事が多いのでアメリカの動きを基準に考えるといいと思います。また、投資期間は何年もの長期では考えない事、いざという時は損切りもできる資金、気持ちで臨むのが良いと思われます。

と、いうのが、債券価格が必ず株式資産と逆相関になるかというとそうとも限らない局面も往往にしてあるからです。分散がむしろ足を引っ張ってしまうこともあります。

まだまだ始まったばかりのコンセプトの投信である程度流行ると思いますが、かつてあったオプションを利用した投信の様にならないよう注意してほしいものです。