手数料が無くなる日

アメリカでネット証券同士の大合併が起きました。

米ネット証券シュワブ、同業買収 2019年11月26日日本経済新聞夕刊https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52602000W9A121C1EAF000/

  • 米国のインターネット証券チャールズ・シュワブは25日、米同業大手TDアメリトレード・ホールディングを260億ドル(約2兆8千億円)で買収すると発表した
  • 両社の証券口座を単純合算すると2400万に達し、預かり資産総額は5兆ドル以上になる
  • 10月上旬にシュワブが株式やオプション取引料の無料化を発表すると、大手が追随、TDアメリのスティーブ・ボイル最高財務責任者(CFO)は手数料無料化で「純営業収入で約15~16%の減収要因」と明らかにしていた

もはや生き残りのためには売買手数料を無料にしてきました。

きっかけはこの事件です

米証券、売買手数料ゼロへ2019年10月4日日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO50532910T01C19A0EE9000/

  • 大手のTDアメリトレード・ホールディングやEトレード・フィナンシャルが2日までに個別株やオプションの取引を無料にすると発表
  • 1日には最大手シュワブが先行して無料化計画を公表していた
  • 今後の収益源は信用取引の金利収入や投資信託の残高に応じて得られる収入

日本でも同様の流れは来ています。

迫る手数料ゼロ、証券会社に試練2019年11月1日日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51646330R31C19A0EE9000/

  • SBIの北尾吉孝最高経営責任者(CEO)は30日の決算説明会で3年で手数料無料化を目指すと宣言
  • 証券会社の18年度の委託手数料収入は5130億円となり、99年度比で6割強減った
  • マネックスグループの松本大CEOはコンサルティング営業にネット証券も取り組む必要があるという

ただ、ややスピードが遅い気がします、日本は1番早いSBIで3年、アメリカはもう始めています。

また、今後は更に金融商品そのものの手数料も下がると思われます。

「手数料無料」ゼロコスト投資広がる 2019年10月20日日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51122280Y9A011C1EA1000/

  • 米国では2018年にフィデリティ・インベストメンツが運用手数料ゼロの株式投信を投入
  • 今年5月には米独立系運用会社、ソルト・ファイナンシャルが投資家が逆に手数料を受け取れるマイナス手数料のETFを発表
  • 英コンサルティング会社、PwCは2025年に世界の資産運用会社が受け取る投信の手数料は17年と比べて2割減ると予測する
  • 指数(インデックス)に連動するだけのパッシブ運用の平均手数料は年0.12%まで低下すると予想

つまり、預かり財産を拡大すれば単純に勝てるかというとそうでも無く、預かり資産を拡大するために低コストの投信の戦いも同時に行われているわけです。

日米の規模の差

日米の規模感の差ですが今回の米国大手の合併で単純合計だと口座数2400万、預かり資産5兆ドルと日本円で550兆円位になります。

どの位差があるか日本の証券会社と比べると、、、

日本だと上位10社合計でも360兆円程度なので、これでは米国金融機関に太刀打ちは現状では不可能です。

今後の対策は?

資金循環の日米欧比較 2019年8月29日 日本銀行調査統計局https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf

家計の規模と構成ですが、米国が金融資産が約9700兆円、ユーロ圏が約3000兆円、日本が1835兆円です。

ただ、米国が預金比率が12.9%に対して日本は53.3%です。

仮に日本が、米国と同様の投資比率になった場合は運用資産(株式等、投資信託、債務証券)が15.2%から52.8%になるので規模としては1000兆円規模になります。ここまでくると勝てないまでもなんとか張り合えるのでは無いでしょうか?

ではどうあるべきか?

米国で手数料の戦いは終わりました。今後は数年で米国の証券会社は売買手数料を取らなくなります。

次に現在の規模を争う戦いですが、これも激烈な信託報酬をはじめとした経費下げ競争中です。

となると、金融機関は預かり資産をどれだけ増やしても収入が増えません。

最後に切り札となるのは預かり資産を管理、運用して実際に顧客に安心感と資産を安定的に増やすアドバイスへの付加価値に手数料を払うビジネスです。

ただ、現状この預かり資産に応じて手数料を払うビジネスは日本では数社取り組んでいますが米国とは似て非なるモノです。

私が過去接した米国の資産管理ビジネスは、運用の専門家、生命保険、会計士等各分野の専門家を集めてチームを組み、資産家数十人から年間1〜2%の管理報酬を預かり資産から徴収する仕組みでした。

つまり、一つの窓口でお金から申告から法務の相談、相続等全てが完結する仕組みです。

一方で日本は運用面のみのサポートでこれではサービス内容は増えませんので顧客からは何が一体良いのかが見えにくいです。

今後は日本でも生保、損保、証券、銀行、税理士、弁護士等がタッグを組んで全ての資産に対するサービスが一つの窓口で完結する位のチームを組むビジネスに展開しないと成長は厳しいと思います。

ただ、そうならないと将来はないのでここ10年程度で金融の異業種同士の大同団結も起こりうるように思えます。

益々金融界は面白くなってきました。