西武信金問題とフィンテック

「信金の旗手」ゆがむ経営 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46072990T10C19A6EE9000/

  • 西武信金は地域金融に顧客本位の創意工夫を求める森氏が率いた金融庁の方針を体現しているともいわれた。
  • 第三者機関の協力を得て独自の「経済的耐用年数」をつくり、他の金融機関とは違うモノサシで融資を拡大、10年3月末に8916億円だった貸出金残高は、18年3月末に1兆6618億円まで拡大した。
  • しかし、徹底した成果主義が行き過ぎ、審査が甘くなり、今回反社会勢力の融資問題に発展。
  • 金融庁幹部は表情を曇らせてこう語った。「何もしない地域金融機関のトップに『ほら見ろ』といわれるのが何よりも悔しい」

地銀 「越境貸出」31%に増加 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46058420T10C19A6EE9000/

  • 地元の都道府県以外の割合は2003年度の25.2%から17年度には31.8%に増加。
  • 日銀の調査では、17年度の本店所在地の平均金利は1.31%で14年度より0.24%、県外は1.07%で0.21%それぞれ低下した。
  • 日銀は「越境貸出が増加しても、利息収入の増加につながっていない」と指摘。(1)リスクに見合った金利設定による採算性の確保(2)与信管理の強化(3)非金利面での付加価値の充実など取引先との関係構築――の重要性を提起した。

多様化するフィンテック 2019年3月29日 日経産業新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43049470Y9A320C1XY0000/

  • フィンテックを駆使した新しい金融サービス会社が米国で次々に生まれている
  • モバイル銀行、ティーン向けモバイルアプリ、EC割賦、割り勘アプリ、株取引アプリ、ソーシャル投資などを米国企業とともに紹介

3つの記事から受ける感想

金融機関ネタが新聞も最近多いです。今までのビジネスモデルが崩壊する過程にあるだけに話題性が高い業界です。私もそうは言っても金融機関勤務なのでうかうかしてられませんが笑

西武信金といい、スルガ銀行といい、前の金融庁長官の褒めた所はダメだった不正の温床企業ということになり、金融庁も頭が痛いと思います。

規制で育った業界にいきなり考えろといっても中々難しいと思います。

西武信金の既存の耐用年数で融資するのではなく、経済的価値に着目して融資を行う姿勢は評価できますが行きすぎて貸してはいけない相手に貸すのはモラルの崩壊で頂けません。

背景には金利を稼ぐことがビジネスモデルだったのが金利低下政策で本業を失ったことです。

証券業界も同様で、手数料自由化や信託報酬に透明化で本業を失いつつあります。

今までは強固で安全性の高いシステムを構築し、大勢の従業員を抱え、企業融資や証券投資を通じて顧客の情報を収集し拡大してきたモデルがフィンテックにより、安価で同等かそれ以上のシステムを組めるようになり、顧客も利便性から多数が流れてしまい、既存の金融機関は預金が強さの源泉だったのがコストに変わり、低金利下で融資金利も下がり一つの貸し倒れをカバーするためには今までより膨大に課さないといけなくなり、リスクを取れなくなり、優良顧客を求めて越境せざるを得ない構図です。

マイナス金利政策や低金利政策が効かない原因の一つに現場の金融機関が金利が低すぎて返って融資できなくなってしまった状態を作り出してしまったこともあり、これは大きな誤算だったと思われます。

経済学的にはこの現状が金融緩和ではなく政府が資金を使うMMT理論の復活に繋がるのですが今日はこの内容は割愛します。また、後日。

一方で新興勢力は新しく安価なシステムを組めるためコストが安く、手数料にも跳ね返ります。

代表的な米国の会社が記事では紹介されてますが、日本でも

  • 3769GMO PGが消費者向けECに決済システムを提供
  • 3994マネーフォワードが企業向けに会計や請求書データを基に審査して融資を行う
  • 3938 LINEはスマホ決済、LINEペイ、今後は銀行や証券業も検討
  • 4755 楽天 楽天証券、楽天銀行保有、拡大中
  • 8410 セブン銀行 既存ATMを代替
  • 8473SBI HD 証券口座が430万件、野村證券の550万口座を射程に捉える

などなど、これ以上にもありますがたくさんの企業が新しい取り組みを始めています。

一方で四季報で地方銀行のコメントをみると、運用利益、投信や保険販売収益などが業績を左右するようになり、余り新しい取り組みができているとは言いがたく、不振はさもありなんと言った所です。

主要プレイヤーの交代は時代の流れではありますが、どちらも大きく抜け落ちている分野があります。

それは、金融教育と資産管理型証券投資営業です。

これからの時代、お金のことを考えないでいると将来が不安と盛んに言われていますが手軽にお金のことを教えてもらえる場所や媒体は少なく、あっても怪しいか、高額です。

金融機関の教育も販売と結びついている場合が多く、真の意味での教育は少ないのが現状です。

また、銀行も証券会社も資産管理を唄い、富裕層ビジネスを行おうとしていますが、50年、100年後を見据えた資産分散や資金管理の提案を行うというよりかはただ、お金持ちに金融商品を売り込んでいるだけなのが大半です。売り子であった人が独立したり、転職しても発想が変わらない限り進化しません。

業界の抱える問題点で悩ましいのが証券会社や銀行で成績優秀と言われている人が必ずしも顧客から見て優秀とは限らず、得てして手数料を上手に稼いでる人が優秀と言われている現実です。これでは貯蓄から投資の流れは進みにくいと肌で感じています。

今後、フィンテックの普及に伴い、人々の意識が変化するのに伴い、新しい金融サービスの企業が生まれることも考えられます。今までの金融機関の常識では無く、本当に普通の人のお金の問題を解決してくれる専門家が求められる時代になると思います。

今までのやり方では益々既存金融機関は困り、結果としてフィンテック企業と一緒に取り組む銀行も出てくると思います。

いち早く気づき、動いた金融機関のみが生き残り、フィンテック企業も既存金融機関の顧客基盤や情報を取り込んだ所が覇権を握るように思えます。

今後も注視したいです。