ネットとリアルの融合

ビックカメラやイケア、「売らない」店舗続々  2019年7月28日 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47885800X20C19A7EA5000/

  1. 注文は基本は通販サイトで対応し、店舗は商品を「見る」ショールームと位置づける企業がリアル店舗中心の企業で拡大中
  2. 一方で楽天やアマゾンなどネット中心の企業は商品を確認できるための店舗を拡大中

感想と解説

やはりというか、やっとというかですが、リアル店舗中心の会社とネット中心の会社の戦略が一致し始めました。

対照的な企業が紹介されています。米国では最大の小売店ウォルマートとアマゾンの動きですが、

ウォルマートはネットで注文された商品を駐車場で受け取れるサービスを開始、これはリアルで店舗を構えてやってきてもらってその場で購入するサービスからネットで注文してくれた顧客に商品を渡すので店舗が倉庫代わりになります。

アマゾンも「アマゾンGO」を店舗拡大を進め実際に購入に来てくれる店舗を拡大する一方で、ネットで注文してくれた顧客にはライフコーポレーションと組んで配送をしてもらうようにするので店舗が倉庫の代わりとなります。

日本の企業ではビックカメラがショールーム専用の店舗を大阪の八尾市に初めてオープンし、店内はQRコードだらけ、販売員が売り込むわけでもなく、顧客は自由に商品を見て買い物を検討、楽しみ、最後にネットで注文をします。

また、記事ではビックカメラと楽天が提携し、楽天はビックカメラで取得した顧客データーをPB製品の開発の参考にするとなっており、これもリアル店舗企業とネット企業の融合といえます。ネットの情報だけでは人間の本当のニーズをつかみ切れていないのだと思われます

今までネット企業とリアル店舗企業は競争相手として戦ってきました。

ネット側はコストがかからないので安くでき、リアル店舗企業はお店で買い物を楽しむことができ、どちらも利点があるのですが、安さという点ではネット企業に軍配が上がり、お店に来るのだけれども購入は後でネット注文となり、お店の売上をネット企業にとられていました。

ネット企業も安かったり、小さなものについてはネット上のみで完結するのですが、大きな家電製品だったり、高価な商品についてはやはり、目で見てから実際に買いたいニーズが強く、こちらには対応しきれてませんでした。

家具や家電、レジャー用品などは自分で全てを計画して調べることができる人は良いのですが、そうでない場合は、やはりお店のプロの提案というのは価値があり、提案をもとに商品を購入する場合と自分でネットだけで購入する場合だと金額や購入点数に違いが出てきます。素人が自分だけで考えて購入すると後で意外と機能が足りなかったり、もっとこうすればよかったと困るケースも多いです。

この状態は私のいる金融業界にも同様のことが起こっています。

例えばネット企業の証券会社とリアル企業の証券会社では手数料率が全く違うので自分で判断して購入する場合は圧倒的にネットが有利です。

しかし、相続や土地の売却などで数千万円を超える大金を手にした場合、ほとんどの日本人は困ります。今まで扱ったことが無かった金額なのでどうしてよいかわからないのです。

しかし、既存の金融機関だと手数料も高いし、提案内容も頼りないのでどうしようとなってしまいます。

そこでSBIや楽天証券がIFA制度を導入したり、マネープラザを開設したりと提案を行える職員を揃えようとして動き始めています。

まだ、営業職員のレベルがそれほど高くないので実際にどこまで普及するためには改善の余地がありますが、リアルの証券会社もネットを活用に動いているので将来両社の合併なども起こるかもしれません。

色々な業界で今後起こりそうなことは、小売りや金融など直接消費者に触れるところは今後ネット企業が主導する形でリアルの企業との提携を行い、または合併などを通じて企業の淘汰が進むことが予想されます

その中で働く人たちはどうすればいいかというと、やはり、消費者に対して提案を行える人になることが生き残りの道だと思います。

昭和や平成の時代は優秀な営業は押しが強い人であったりすることもままありました。ただ、令和の時代はこれでは難しいです。

「聞いたことに対してきちんと応えられるか」が大切になってきます。

「答える」ではなく「応える」です。

これはマニュアルがすべて頭に入っていてもダメです、マニュアルはAIが進化するので覚えるというより活用できるかになってきます。

きちんと顧客の要望を理解し、対話し、顧客の思いや目的を達成するにはどのような商品が適当で、どう組み合わせるとより良いか、予算と比べてどうか、思いにプラスアルファできる提案がないか、これを考えて提案して購入点数を拡大したり、機能が充実したりした商品を購入まで持っていけるのは人間しかいません。

このように考えると、AIやネットの普及で人の仕事が奪われるという考えがいかに間違っていると思えます。

今まで通りの押し売り営業ばかりやっていたり、マニュアル人間的な行動をしている人は確かにいらなくなります。が、コミュニケーションをきちんとして一つ一つの要望やニーズを汲み取ることができる人は益々ニーズが高まります

コミュニケーション能力を磨き、会話能力を高めることは人間の基本的な能力です。機械は聞いたことに対しては100%返し、人間よりも膨大なデータを保有することができますが、その人の言葉に出ない思いまでは形にすることは不得手です

ネットとリアルの融合が進み、今まで以上に安く、快適に買い物ができてなおかつ相談までできる店舗はとても魅力的だしもっと増えてほしいです。

また、この新型店舗に対応できる人材はまだ少ないとみられるのでこれからのニーズは大きいとみられます。

良く、雑誌とかでこれから不要になる職業に営業職員と書いてありますが、大きな間違いです。営業職員と一口に言ってもコンサルティングができる営業職員の需要が大きくなり、押しが強いだけの営業職員が減る変化が起きるだけで未来は明るいとみています。

また、株式投資で見る場合、ネット企業側がリアル店舗にどのようにアクセスしてくるかをみることが今後の成長ドライバーになるように思えます。

今後も両社の動きに注目したいと思います。