リブラ構想で恩恵を受ける銘柄

フェイスブックが6月に公表したリブラ構想ですが、様々なところで論争が繰り返されています。

今回はリブラの簡単な概要の説明と恩恵を受ける銘柄を考えてみました。

まず、リブラとはアメリカのフェイスブックが中心になり、設立するリブラ財団が発行する仮想通貨です。

仮想通貨というとビットコインを思い浮かべる人も多いと思いますが、仕組みで大きな違いが2つあります。

  1. リブラに資産の裏付けがある事
  2. 参加企業が多数で大手企業も多く決済を行う体制が整っている

ビットコインと同様にブロックチェーンの仕組みを活用し、記録を残せる所は同じですが、ビットコインは資産価値そのものはなく、皆が価値があるとみなせば価格は上がりますし、皆が価値がないとみなせば暴落します。2017、18年の暴騰、暴落のような投機の対象になってしまうのが難点です。

対してリブラは各国の通貨を保有するファンドを原資産に置き、この資産価値に連動する仕組みを採用しようとしています。まだ詳細は分かりませんが、世界の通貨の流通や決済はBIS(国際決済銀行)が3年に一度公表しており、2016年公表のデータだと以下のようなグラフになります。

例えば上のグラフのような資産を裏側で保有してリブラの価値とファンドの価値を結びつけておくと、価値は動き辛いです。よって価格が安定すれば決済用の通貨として活用できることになります。

次に参加企業ですが、ビットコインは仕組みのことでビットコイン自体が何か参加企業があるわけではありません、ビットコインを使って決済を行うのを認める会社や個人がいれば活用する程度で、日本でも一部家電量販店が認めたりもしましたが、広がりがイマイチです。対してリブラは以下のような企業が参画を表明しています。

日経新聞からだと

全体を表す絵だと

こんな感じになります。29社が入っています。

お金として流通するにはこれをお金として信用するかと実際に決済に使ってモノやサービスを購入できるかが必要です。これに対してリブラは既存の通貨を裏付けに使い、決済網を既存の大手企業を巻き込み出口を広げる戦略にでており、実現性は高いと思われます。

ビットコインと既存通貨の中間のような存在と言えます。

この構想の目的は、今世界で銀行口座を保有していない成人が17億人おり、米国に至っても840万世帯が保有していないそうです。しかし、そんな人々でも2/3はスマホを保有、利用しており、基本的な金融サービスを提供して貧困の撲滅に一役買おうというのが目的とされています。

銀行に口座を持つためには、日本だと身分証を見せ、住所や生年月日から本人確認を行い、その上で審査を行い口座を保有できるようになります。住所が無かったり、近くに銀行が無かったり、郵便インフラが整って無かったりする事は日本では考えにくいですが、アフリカや、インド、中国などのインフラが整っていない国ではこの一連の作業がかなりハードルが高い地域も多いようです。

もし、スマホ内の操作だけで給与振込や送金、決済ができるようになればものすごく便利になります。

また、外国では海外に出稼ぎも非常に多いです。ただ、母国に送金しようとすると送金手数料がかかります200米ドルを送金しようとすると世界平均で8%程度の送金コストがかかるようです。

これがリブラになると半減以下になると思われます。

もちろん本人確認や住所確認は反社会勢力排除だったりが目的の行為なのでこれがないとアングラマネーがリブラを仲介してしまうリスクがあり、これには各国も神経をとがらせています。

また、各国の中央銀行からすると自分で制御できない通貨が国内にできてしまうので金融政策が難しくなる側面があります。

新興国など信用力が低い国からするとリブラに資産を逃避されてしまうリスクがあり、自国通貨の使用が減るリスクもあります。

また、銀行も自分の牙城を脅かす存在なため基本反対です。今回大手銀行は入ってないようです。

しかし、こういうシステムができるという事がわかった事は大きく、実現までに紆余曲折あると思われますが、近い将来実現できそうに思えます。

では、どこが恩恵を受けるか、もちろん参画企業全てではありますが、どちらかというとリブラを活用できる新しい顧客開拓の面が強いです。

ただ、この構想が実現した場合最も恩恵を受ける会社は以下の三社だと思います。

  1. フェイスブック
  2. マスターカード
  3. ビザカード

まず、リブラを通貨として利用するためにフェイスブックを使う必要があるならフェイスブックの顧客が今の27億人から倍増するかもしれません。

また、マスターカードやビザカードは決済システムの提供でとても旨味があります。既存の銀行の手数料収入を奪ってしまう存在になる可能性があります。

また、もう少し大きな目で見ると、現在の金融はアメリカが支配しています。

この構想が実現すると最もシェアが高い通貨は米ドルなので米ドルに新興国の資金が流れます。また、参画企業は米国企業ばかりです。と、なるとアメリカ金融帝国が更に世界の金融システムを今以上に支配を強めることになると思います。

現状システム的に大丈夫なのか、各国の制度をクリアできるのか等いろいろ問題はありますが実現すると金融の世界に大きな変革をもたらす存在になると思います。