リブラが実現した場合の日経新聞による特集

2019年8月10日から12日まで日経新聞においてリブラが実現した場合のシュミュレーションを物語形式で特集されており、非常に興味深かったので取り上げてみました。

もしもリブラが実現したら 送金や資産運用、どう変革

記事にある起こりうるポイント

リブラの強み

  1. 米フェイスブックの27億人の顧客基盤
  2. 銀行口座がない人々は新興国を中心に世界に17億人いるがうち10億人は携帯電話をもち、リブラにすぐアクセスできる

リブラの特徴

  1. リブラの発行主体でもある「リブラ協会」が裏付けとなる通貨の配分を決める、ドル、ユーロ、円等のバスケットを使用する可能性が高い
  2. 「ステーブル・コイン(安定通貨)」を目指す

リブラのメリット

  1. 利用者は海外送金の手数料が激減
  2. 将来的にクレジットなどの与信、投融資への進出も検討しており、実現すれば過去の自身の行動や企業活動をスコア化し、与信を待つ時間がなくすぐに融資を受けれるし、クレジットカード決済も行えるようになる。
  3. 人の行動をスコア化しお店予約でも「高スコア」の顧客を優先的に紹介し、低いスコアの顧客は予約を自動で拒否したりできる

恩恵を受ける企業、逆風を受ける企業

  1. 恩恵は創設メンバー入りしているクレジットカード会社、リブラ利用のクレジットカードを提供し、決済周りを独占できる
  2. 銀行は逆風、打撃を受けるのは決済・送金サービス。グローバルでみた銀行業務の総収入の平均10~15%を占める、これが大幅に縮小すると思われる。創設メンバーに一社も銀行はいない

起こりうるリスク

  1. テロリストにハッキングされるリスク
  2. マネーロンダリングに利用されるリスク
  3. ハッキングされたりした時に資産を守る仕組みが無い

その他の現象

  1. 信用力の弱い国家の法定通貨は自国通貨を売ってリブラに乗り換える「デジタル・キャピタル・フライト(資本流出)」が起こり、お飾り通貨に成り下がる
  2. 各国の中央銀行による金融政策の統制が効きにくくなる

感想

リブラが実現するかどうかはまだ未知数ですが、企業がアメリカのフェイスブックなのでいくらフランスをはじめとする各国が反対しても米国の規制当局と政府の判断で全て決まります。

なんとなくですが、アメリカにとって非常に好都合な仕組みに思えます。なぜならば

  1. 裏付けとなる資産はバスケットで現状米ドルが最大のシェアを持つので米ドルを通じて米国に資金が入る
  2. 主たる参加企業が米国企業なので全て米国の規制で動かせる
  3. リブラが普及すれば世界各国の国々の資産がリブラに集まり、新興国の経済もリブラ次第≒米国政府次第
  4. リブラが普及すれば米国の影響力も高まる

現在米国に対抗する中国やロシア等の国々は猛烈に反対すると考えます。と、いうのが、自国の富裕層が自国の政府を信用していないため、現在でも積極的に資産を海外に逃がそうと必死です。中国のニュースが良くやってきますが、政治的に粛清されて財産を税金の名目で没収されている資産家はよく見ます。彼らがなぜ日本にやってきて土地やビルを買いあさっているか、これは資産分散の一環です。

もし、リブラが実現してしまうと自国から資金の流出が起こって経済が不安定化すると思われるので遮断に必死になるでしょう。その他新興国もかなりの打撃を受けると思われます。

逆に日本やユーロなどの先進国はバスケットに入っていくと思われるので比較的安定して推移するでしょうし、政府に対する信認もあるのでリブラを使用することは海外送金や海外決済などで自国通貨が脅かされるリスクは小さいとみています。

バスケットについては過去のブログでも取り上げましたが、2016年時点での国際決済銀行発表の世界の決済シェアは以下の通りです。

恩恵を受ける企業

これは間違いなくリブラ協会に参画した会社ですが、その中でも決済分野の大手のマスターカードとビザ、主催しているフェイスブックが一番受けます。

既存の銀行の送金手数料、クレジット決済手数料、融資による金利収入等今の銀行を飲み込んでしまう可能性すらあるとみています。

副次的ですが、リブラを裏付けとする証券も発行ができるようになると証券会社も恩恵を受ける可能性が有ります。

最後に

世界のお金の歴史はたった2000年程度で大きく変わっています。かつては貝や大きな石がお金として利用されたことがあるのを歴史で学んだと思いますが、金、銀、銅が取って代わり、紙幣になり、電子マネーが普及してきました。

そして、ついに世界をまたにかけるデジタル通貨ができる時代がやってきました。今回のリブラが実現するかは不透明ですが、米国政府の承認が下りれば実現しますし、普及します。もし、今回ダメでも全く違う会社が同様の通貨を立ち上げるかもしれません。

ただ、米ドルが主なのでいずれにせよ米国政府のバックが必要なので米国企業しかできない試みになると思われます。

今後も大いに注目だと思います。