独バイエルとモンサント

バイエルグループについて

( Bayer AG)は、ドイツのノルトライン==ヴェストファーレン州レバークーゼンに本部を置く化学や医薬等の複合企業です。有名な商品としては鎮痛剤のアスピリンやヘロインなどがあります。

このバイエルですが、売上高や利益はバイエルグループのホームページによると以下の通りです。https://www.bayer.jp/ja/media/newslist/2019/20190805.php

大きく四つのカテゴリーに分かれていて、第二四半期決算で売上高が245億ユーロなのでざっと3兆円程度の売上高になります。

ちょっと海外企業なので分かりにくい表示ですが、EBITDAとは、earnings before interest, taxes, depreciation, and amortizationの頭文字をとった指標です。(EBITDA = 税引前利益 + 特別損益 + 支払利息 + 減価償却費(有形、無形償却費の合計)多国籍で活動する企業は各国によって税金が違ったり、償却方法に違いがあったりするのでその処理をする前の数字で比べようということで使われています。営業利益+減価償却費でも同義です。

これで見ると第二四半期までで71億ユーロなので日本円だと約8500億円位でしょうか。

単純に通年で考えると売上6兆円、EBITDA1.7兆円のとても優良な企業です。

ただ、この会社に大掛かりな訴訟問題が発生していて、日経新聞に記事が出ています。

2019年8月9日 バイエル米除草剤訴訟で8500億円支払いか 日本経済新聞https://r.nikkei.com/article/DGXMZO48453580Z00C19A8TJC000?s=0

この記事によると買収を行ったモンサントという企業がかつて販売していた除草剤の訴訟の原告1万8千人を超えて支払いも巨額になりそう、ただ、金額が確定すれば投資家の不安も薄れそうだと書いてあります。

しかし、金額が金額だけに週刊誌とかが大丈夫かと騒ぎそうなネタではあります。ただ、述べてきたようにこの程度の金額では年間のEBITDAが消えるだけで屋台骨が揺らぐことはなさそうです。

また、グループ全体の自己資本の額ですが2018年決算だと約5兆円程度あるようなので手元の資金で十分賄える判断だと思われます。

格付けはムーディーズでBaa1、S&PでBBB、フィッチでA-です。

モンサントとは?

では除草剤訴訟とは何なのでしょうか。

まず、この除草剤を生産販売していた会社はバイエルグループに買収された米モンサントという会社です。2016年には買収する発表がされていましたが、紆余曲折あり、2018年6月に630億ドルと日本円だと7兆円に相当する巨額の金額で買収が成立しています。

なぜ、これだけの金額で買収したかというと、米モンサントは種子と農薬の分野において世界でトップを走っており、バイエルの事業と合計すると2社の農薬・種子事業の17年度売上高を単純合算すると約260億ユーロ(3兆2500億円)となります。ちなみに日本は種苗大手にサカタのタネとかがありますが、売上高は600億円程度で物凄い差があります。

モンサント単独ではヤフーファイナンスで2017年8月決算までは見られるので見てみると売上高146億ドル営業利益32億ドルとなっています。630億ドルでの買収は凄いですね。

モンサントと聞くとピンと来ないかもしれませんが、ベトナム戦争で使用された枯葉剤と聞くと習った人は多いと思います。この会社が製造した商品です。

また、遺伝子組み換え食品では9割近いシェアを持っています。

非常に先進的な企業であり、世界の野菜などのタネの特許を多数保有し、遺伝子組み換えなどができる企業ではあるのですが、何かとお騒がせ企業で、今回の訴訟も過去に当社の農薬を使用していた農家の人々が癌にかかってしまった事例が多数見受けられ、集団訴訟に発展しています。

バイエルはもちろん訴訟自体は知っていたものの、将来性とモンサントの名前が消えるメリットを天秤にかけ、巨額買収に踏み切ったと思われます。

今後のバイエルグループ

巨額訴訟も8500億円程度であれば倒産するとかでは無いことは先ほど書いた通りです。5兆円の自己資本から支払ってもいいし、年間利益から取り崩しても払えます。格付けにもあまり変化はないかもしれません。

では株価は?というと意外と反転する可能性もあります。

インターネットでBAYN:GRと叩くとブルームバーグで価格が表示されます。

これを見ると2018年の買収前は1株100ユーロを超えていたものが現在65ユーロ、配当利回り4.3%です。https://www.bloomberg.co.jp/quote/BAYN:GR

倫理的に受け付けないという方は見送った方がいいですが、マイナス金利が日本より激しいドイツ株の中で4%を超える配当利回りは悪くないです。あとは訴訟問題が完全に和解するか、した時がタイミングだと思います。