農業特区と関連銘柄

農業特区5年 企業の参入 道半ば 2019年6月24日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46342870Q9A620C1ML0000/

  1. 農業特区が始まって5月で5年経過、兵庫県養父市や新潟市では企業が参入したり一部成功も見られるが、参入企業が頭打ちとなっている。
  2. 兵庫県養父市では積極的な取り組みを行ってはいるが、市が土地を買い上げて5年限定で企業に売却する仕組みをとらないと農水省はOKを出さないなど市側も不満
  3. 新潟市でも企業参入を促してはいるが、6社にとどまる。理由を新潟市では、企業の農地取得要件の緩和と農産物をもっと自由に活用できる用途の緩和が必要と分析
  4. 耕作放棄地が問題になる昨今、さらなる規制緩和が重要

国内農業98%家族経営 2019年6月24日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46406120R20C19A6ML0000/

  1. 企業は農地を借りるだけで取得は不可能、戦後政策の耕作地と所有者を分離できない「自作農」主義が邪魔をしている。
  2. 日本全国の農家は138万戸だが、134万戸が家族経営
  3. 耕作放棄地は2015年に42万ヘクタールを超える

記事から考えられること

内閣府のホームページから国家戦略特区の箇所で農林水産業を調べると、現在特区として認められている場所は5か所で、東京都、愛知県、新潟市、仙北市、養父市が挙げられています。

土地の取得に関しては、現在農業委員会が管理しているところを市が変わって行うことを認めて企業に期間限定で使用させています。

特区といってもかなり条件は厳しく、まず、認める要件に、過疎化や耕作放棄地であるなどかなり厳しく追い込まれてないと特区にしない印象です。

これは現在の農家や取り巻く規制が固く、緩和して企業参入を促すと業界としては活性化するものの、農家一つ一つは普通の家庭の産業なので競争力が弱く、淘汰されてしまう恐れ、JAをはじめとする現在の完成した状況があるので変えたくない気持ちが優先されているのだと思われます。

どうしようもなくなっている町が手を挙げて細々とやっている印象の特区ですが、これでは農業輸出で産業振興といっても非常に心細いです。

今後の規制緩和を国に期待するところですが、選挙で票をとれる取れないがある以上なかなか投票率の高い農村を相手に正論で攻める政治家も現れにくいと思います。

ただ、課題はどんどん膨らんできています。耕作放棄地の42万ヘクタールは耕作地の1割で滋賀県に匹敵する広さです。また、高齢化、人手不足が深刻です。農水省のホームページには「農業労働力に関する統計」で平成22年からの推移が載ってますが、平均年齢は平成22年で65.8歳が平成30年で66.6歳とそれほど大きな変化はありませんが、農業従事者の人口が平成22年に260万人なのが平成30年に175万人と85万人、率にして30%以上の減少になり、大幅に人手が不足してきているのが伺えます。

特区を拡大して企業参入を促し、ビジネスとして儲かるようにしないと、農業に従事する若い人がいなくなり、「衣食住」の大切な「食」が日本から消えてしまうのが見えてきてしまっています。

一方で農業の現在の課題を新技術でカバーしようという試みも現れています。

農林水産省の「『スマート農業の実現に向けた研究会』検討結果の中間取りまとめ」(平成 26 年3月公表によると、スマート農業の定義は以下の5項目です。

  1.  超省力・大規模生産; トラクター等の農業機械の自動走行の実現等で規模拡大
  2. 作物の能力を最大限に発揮: 過去のデータを活用した精密農業により、従来にない多収・高品質生産
  3.   きつい作業、危険な作業から解放:重労働をアシストスーツにより軽労化、除草作業を自動化
  4.   誰もが取り組みやすい農業を実現: 農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等経験の浅い人でも取り組める産業に変化させる
  5.   消費者・実需者に安心と信頼を提供: 生産情報の提供等、産地と消費者・実需者を直結し、信頼感を高める

これで大きな産業になりそうな会社が

  1. 自動運転農機
  2. クラウド技術活用でデータベース化、ハウス環境自動制御、センサーによる熟度チェック
  3. アシストスーツ
  4. ドローンの活用で種子、農薬散布、状況チェック

等が考えられます。

スマート農業関連銘柄

該当する会社は以下以外にもあるかと思いますが、調べたところを列挙します。

  1. 自動運転農機 6326クボタ、6310井関農機(ヤンマーは未上場、三菱マヒンドラ農機は三菱重工系列)、7732トプコン(農機の自動制御システム提供)
  2. 3799キーウェアソリューションズ(農業ICTソリューション「OGAL(オーガル)」を提供)センサーから栽培環境の情報を収集するシステム。これを発展させ熟練農家の技能の可視化や継承の支援、地域の支援の仕組み作りにも貢献
  3. 7779CYBERDYNE アシストスーツの代表的な会社です
  4. 3694オプティム、殺虫機能搭載の「アグリドローン」を活用し、夜間での無農薬害虫駆除を目指した実証実験に、世界初での成功

もっとも、課題としては農家が「あ、いいな」と思っても「買えるのか?」が大きな課題です。これに関しては農事法人で皆が取り組むとか、サブスクリプション的なリースや定額課金で貸し出すとか一人一人の負担を軽くする試みが必要です。

また、やはり、企業に対する要件を緩和して、せめて耕作放棄地だけでもすべて取得を認めるなど自由度を高める政策をとる必要があります。

いつまでも農家のお年寄りに我々の主食を頼っていてはいけないと考えます。